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松田知大(WRENCH / té)ロングインタビュー!

2019年、12年ぶりのニューアルバム『weak』を発表して話題を呼んだ『WRENCH』

国内オルタナティヴロックシーンの黎明期から活動を続ける『WRENCH』は、一大ムーブメントを巻き起こした『AIR JAM』に出演しながら、「東洋のテクノゴッド」ことケン・イシイ『電気グルーヴ』の石野卓球俳優の浅野忠信といった、さまざまなアーティストと共演する異色のロックバンドである。

今回インタビューしたのは、そんな『WRENCH』のベーシストである松田知大(まつだともひろ)氏

国内外のポストロックシーンで高い評価を受ける『té』のベーシストでもあり、人気バンドのアートワークを数多く手掛けるグラフィックデザイナーとしても活躍する松田氏に、気になるバンドやご自身の活動について話を聞いた。

 





松田知大氏を唸らせるバンドとは?

--今日はよろしくお願いします。早速ですが、最近気になるバンドについて教えてください。

松田:GROUNDCOVER.』。『WRENCH』とダブルレコ発をやったバンド。

--ライブハウス『東高円寺二万電圧』で開催した2回目のレコ発のときですね。

松田:そう。曲調は違うけど、ニオイが近いっていうか。

ライブハウス:東高円寺二万電圧

--『GROUNDCOVER.』は『WRENCH』のメンバーよりも歳下ですか?

松田:結構下なんじゃないかな。30代後半とか。10歳ぐらい違うと思う。昨年、同じくらいの時期にアルバムを出したから、ダブルレコ発をやって。あと、別に若手じゃないけど下の世代のバンドだと、『skillkills』とか、ずーっとカッコいいなと思ってる。対バンも何度かやってるからアルバムも持ってるし、Apple Musicとかにも入ってるから音源も聴いてる。

--そうなんですね。国内のバンドでオススメの作品があれば、聴いてみたいです。最近よく聴くアルバムとかありますか?

松田:なんかね、日々聴いてるのは海外の方が多いんだよね。海外だったら、いろいろ出でくると思う。近年だとインダストリアルとポストパンクと……ゴスが入ってて、ノイズが入ってるみたいな。中間みたいなところが好きだから、その辺のばっかり聴いてる。

--なんかその辺の感じで日本で似たような、感覚が近いバンドっているのでしょうか?

松田:それを日本って言われるとね……あんまり出てこない(苦笑)。でも、『Crypt City』とかはちょっとそういうニオイがするかな。対バンも1、2回してて、音源も聴いてるし。

 

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松田:あと、『YOLZ IN THE SKY』も好みに近いところがある。『Less Than TV』(※)のバンド。年齢的には一回りぐらい下なのかな。でも、全然キャリアはある。

※Less Than TV:FUCKERこと谷ぐち順氏が主宰するインディーズレーベル。

--やっぱり、若手の感じでイメージしても30代ぐらいのバンドとの関わりが多いんですね。

松田:そうだね。20代のバンドってあんまり知らなくて。あ、でも『GEZAN』とかはさ、いいバンドだと思う。彼等は30代?20代なのかなぁ?

--『WRENCH』ではなく、『té』で対バンするような人達だとどうでしょう?

松田:どうなんだろうね。そんなに若いバンドとやってるって感じではないかな。まぁでも、ポストロック界隈だから、その中にいいバンドはいたけど……解散しちゃったり。あ、でも『』は『残響』というレーベルも主催していて、そのレーベルイベントでよくやってた『ハイスイノナサ』が好きだった。もう解散してしまったけど。

松田:その『ハイスイノナサ』でギターを弾いていた照井順政君は『sora tob sakana』というアイドルユニットをプロデュースしていて、そこで作ってる曲もとても良かった。

--アイドルの仕事をやってるバンドマンって結構いますよね。

松田:BACK DROP BOMB』の、JINとかもそうだよね。

--『COALTAR OF THE DEEPERS』のNARASAKIさんもそうですよね。『ももいろクローバーZ』が歌っている『ちびまる子ちゃん』の曲なんかもやってます。この前 『ちびまる子ちゃん』を観たら、『編曲 NARASAKI』ってクレジットされていて。

松田:ほんと!?凄いね(笑)。

--『COALTAR OF THE DEEPERS』は、『ZK Records(※)』のとき、ご一緒でしたよね。

※ZK Records:『痛郎(ita-roh)』の井手宣裕氏が主宰するインディーズレーベル。

松田:うん。90年代初頭は、『COALTAR OF THE DEEPERS』とも対バンとかやってたからね。

松田:他には、この前、東高円寺二万電圧で観た『黒電話666』が凄くカッコよかった。1人でノイズやってる。

松田:あと前から音源を聴いて良いと思っているのが『空間現代』。すごい好きな感じ。ちょっと数学的なバンドで。普通に音源カッコよくて。

松田:あとは、『killie』とかも好きだね。

--『killie』って『envy』でギターを弾いてるyOshiさんが在籍してるバンドですよね。

松田:そうそう。最初に観たとき、めちゃめちゃカッコいいなぁと思った。それからライブも何度か観てるし、対バンもやったことがある。

--『envy』のようにバリバリやってる同世代のバンドもたくさんいますよね。そのくらいの年代の人達が新しく組んだバンドで「これは!」というバンドはいますか? 例えば『BB』とか。メンバーはそれぞれキャリアがあるけど、バンドとしてはまだ1stアルバムを出したばかりという意味で。

松田:そうだよね。『BB』の界隈って凄く活発じゃない。シーンみたいなものがあるっていうか。

--『BB』とスプリット盤を出してる『REDSHEER』は『ATOMIC FIREBALL』の元メンバーがやってるバンドですよね?

松田:そう。『REDSHEER』は『ATOMIC FIREBALL』の延長な感じはする。それでいてちゃんと進化していてカッコいい。

松田:あ、『老人の仕事』とかも、そういう感じ。メンバーに『killie』のメンバーもいて。

--いろいろなバンドが繋がってるんですね。他にはどうでしょうか?

松田:ライブは観たことないけど、音を聴いて好きだなぁと思ったのは『八十八ヶ所巡礼』。

松田:あと、あれ好きだな、『CHAI』。若い女の子のバンドで、ポップだけどニューウェーブ加減が凄くいい。海外とかも行ってて、ライブも1回観たことある。相当人気あって、リキッドルームでワンマンみたいな感じのライブをやってるんじゃないかなぁ。普通にファミマとかで流れてたりするから。

--なるほど。ちなみに自分が出演するイベント以外にも、ライブハウスに行くことはありますか?

松田:極力自分の以外のも行ってるね。でも結局さぁ、知り合いのばっかり(笑)。

--まぁ、そうなりますよね(笑)。

松田: 少し前に『マイセルフ,ユアセルフ』の企画をしている宮川君に誘われて『SuiseiNoboAz』を観に行ったけど良かった。演奏もタイトでカッコよかったし。

--それは予備知識なしで観たんですか?

松田:1曲YouTubeで観てカッコよかったから、観たかった。メンバーもひとり知ってたし。『SuiseiNoboAz』には『LAGITAGIDA』のベースの河野君が在籍してて、俺が『LAGITAGIDA』のジャケットデザインを手がけたりしてたから。『LAGITAGIDA』も、若いプログレのバンドでカッコいいよ。なんか活動を止めてたけど、最近またやってんのかな?

松田:その辺だったら『GREEN MILK FROM THE PLANET ORANGE』とかも、若いのにプログレでカッコいい。

--若いプログレバンドで、松田さんのアンテナに引っかかるバンドは沢山いるんですか?

松田:いっぱいいるわけじゃないけど、さっき紹介したふたつはどっちも「若いのにこんな渋いプログレやるんだ!」 みたいなバンドだよね。しかも、演奏もものすごく上手いし曲もカッコよくて。『GREEN MILK FROM THE PLANET ORANGE』は1回活動停止してたけど、メンバーが変わって、またやってるね。結構前に、2回ぐらい対バンしてる。まぁ、俺もこれだけ長くあちこちでやってるから、思い返していけば多分いっぱい出てくると思う(笑)。




松田知大氏の音楽の原点

--『WRENCH』って対バンするジャンルが広いですよね。

松田:そうだね。まぁ、『WRENCH』は広いね。やたら(笑)。『WRENCH』じゃないけど、2、3年前に『』で『人間椅子』と対バンして。すげえ良かった。『人間椅子』、元々好きだったからね。対バンの話を聞いて「絶対にやる!」ってなった(笑)。普通に嬉しかった。

--以前、恵比寿のイベントで対バンした『DOOM』や、スラッシュメタル系のバンドもよく 聴いていたのですか?

松田:高校生の頃、聴いてたよ。俺は元々ハードコアが好きでさ。『DOOM』とか『SHELLSHOCK』になるとハードコア寄りなメタルだから、全然聴いた。

--『GASTUNK』も聴いてましたか?

松田:GASTUNK』はもう、聴いてたなんてもんじゃないよ(笑)。最初の音源から全部持ってたもん。俺は17歳とかでジャパコアのバンドをやっていて、『消毒(消毒GIG)』にも出てるから(笑)。当時、そのバンドで池袋のスタジオに毎週入っていて。で、隣に『GASTUNK』と『キャ→』が入ってた。毎週、隣に『GASTUNK』が入ってるんだから。そりゃアガるでしょ。

--たまりませんね。それにしても、17歳で『消毒GIG(※)』に出てるって凄い!

松田:17歳だったのは、俺だけ。あとは大学生と、27歳か28歳のボーカル。ボーカルがその界隈で有名だったから出られたんだと思う。

※消毒GIG:日本が誇るハードコアバンド『GAUZE』の自主企画『消毒GIG』は、1981年11月から現在まで続くハードコア界の最重要イベント。




新型コロナウイルス感染拡大による影響

--今、松田さんがやってるバンドは『WRENCH』と『té』だけですか?

松田:うん。もう、ふたつあったらいっぱいいっぱい。『milkcow』のヘルプも一時期やってたけど、一度もスタジオに入ってないからね(笑)。本番やるだけ。初ライブですら、1回もスタジオに入ってないから恐ろしいよ(笑)。音源をもらって「適当にやっといて」みたいな。「やる曲だけ覚えといて」って(笑)。

--恐ろしい(笑)。新型コロナウイルスの拡大以降、『té』の活動はどんな感じですか?

松田:アルバムを作ろうとしてるから、曲作りでスタジオには入ってる。

--スタジオに入るのは久しぶりだったのでは?

松田:4月、5月はスタジオも閉まってたから入ってなくて、6月に入って再開したって感じ。だから2ヶ月間は全く入ってなかった。

--『té』は今年に入ってからライブはできましたか?

松田:2月か3月に1回やったけど、それ以降は全部キャンセル。

--『WRENCH』は何度かやってますよね?

松田:何本かやってる。3月までは普通にやってたからね。

--これほどライブをやらなかった期間はこれまでに無いのでは?

松田:無い無い無い。でも、とにかく時間があるから、家でベースを弾いていて。多分、人生でこんなにベースを弾いてるのも初めてぐらい(笑)。

--いいですね。全てをネガティブに考えても仕方ないですもんね。

松田:「(バンド活動が)何も無くなったから何もしない」っていうのは、ちょっと違うなって思ったから。

--ですよね。でも、5月29日に予定されていた『WRENCH』のワンマンが無くなったのは残念でしたね。

松田:しょうがない。こうなっちゃったらどうにもならないよ。

--7月24日に『WRENCH』の配信ライブが予定されていますが、無観客ライブに対してはどんなイメージですか?

松田:正直、俺はあんまり関係ない感じがする。SHIGE(WRENCHのボーカル)は「嫌だなぁ……」って言ってたけど(笑)。SHIGEはお客さんの反応を受け止めてアゲたりするけど、俺は普段からお客さんを見てないからね(笑)。だから、そんなに気にならない。

--「お客さんを見てない」というのは、どういう状態で演奏されてるのでしょうか?

松田:俺は自分の内面に入って、それを外に出す感じ。だから、観客がいてもいなくてもあんまり気にしてない(笑)。俺にとってライブは、シャーマニックなものなんだよね。自分の中に降ろしてくるっていうか。これまで好きだったものがいっぱいあるわけだけど、それは音楽だけじゃなくて、アート全般とか映画とか、いろんなものを観て身体が震えるような感動を自分で受け取ってるからさ。その周波数を頭と身体が覚えてるし、自分の中に蓄えられてるってことを信じてる。それを、自分がステージに立ったときに再現する感じかな。今まで自分が散々その周波数で感動を受けてきてるから、そこでスイッチを入れれば、それが出てくる。ステージって、そういうのを放出する場なんだよね。これだけずっとやってるから、そこでスイッチを入れられて、今まで受けてきたアートの全てをそこで出せる。それが誰かに伝わったらいいなぁぐらいな感覚でやってるから。

--それを10代からやってるんですもんね。

松田:そうそう(笑)。でも、20代で『WRENCH』を始めて、今51歳でさ。ここまでやってることを想像したかっていったらさ(笑)。

--してませんよね(笑)。

松田:してない(笑)。だってさ、さすがに30歳は想像できたけど、40、50歳はねぇ、バンドをやってるって想像できてなかった。当時ってまだロック自体が若い文化だったから、そういう人達がいなかったし……でも、想像しないからこそ、突っ走ったと思う。もし当時から明確に想像できてたとしたら、もっと速度が違ってたんじゃないかな。

--そうですよね。

松田:20代は早かったけど、歳を重ねるとその時間が感覚的に伸びていくんだよね。アルバムが12年ぶりとかになっても、あんまり自分達が止まってる感覚もないみたいな。ライブは、継続的にやってたから。だってさ、これだけ長い期間ライブをやらなかったのは今回が初めてだから(笑)。

--ずっとライブをやってましたもんね。

松田:そう。俺は、ライブができていれば満足なんだよね。『WRENCH』のメンバーは4人全員いろんなところで人脈があるから、ありがたいことに多方面からオファーが来る。だから、ライブが途切れないんだよね。誘ってもらえて、オファーが途切れないって、凄く幸せなことだと思う。

--それぞれに声がかかるのは理解できます。皆さん、アクが強いから(笑)。

松田:4人が4人ともね(笑)。バンドってひとりじゃできないからさ。誰かが「もういいや」ってなったら終わっちゃうわけだし。そうならずに、まだ続いてるってことだけでも凄く幸せなことだと思う。今回のコロナでやめちゃうバンドもいるじゃない。だから今回みたいなことになっても、「配信でいいからやろう」ってなるだけでも幸せなことだよ。まぁ、特に『WRENCH』は、笑っちゃうけどみんな仲いいからね。コロナ禍でもZOOM飲みしてるし(笑)。

 


 

松田知大氏オススメの音源6選

  1. 空間現代空間現代2
  2. skillkillsTHE BEST
  3. LAGITAGIDACaterpiRhythm
  4. ハイスイノナサ動物の身体
  5. CHAIPINK
  6. 老人の仕事老人の仕事

 


 

『WRENCH』待望のライブが決定!

昨年12年ぶりのフルアルバム『weak』をリリースしてから、一時休業していたドラムのMUROCHINが完全復帰!
その復活ライブを、2020年7月24日(金)、新宿LOFTから無観客配信ライブとして開催!
weak』の楽曲をリリース後、初めて4人でフル再現する!

<MUROCHIN IS BACK! WRENCH LIVE STREAM!>

2020年7月24日(金)
会場:新宿LOFT
スタート : 20:00
チケット : 1,000円

Streaming URL : https://loft-prj.zaiko.io/_item/327819

アーカイブ視聴:2020年7月27日(月)23:59まで
アーカイブ購入:2020年7月27日(月)21:00まで

 


 

アフタートーク

(左から、PAZZ氏、松田氏)

取材場所としてご協力いただいたのは『千駄ヶ谷GOTEN』。
アンダーグラウンドシーンの重鎮『DOOM』のドラマーであり、長きにわたり『GASTUNK』のドラマーとしてバンドの屋台骨を支えてきた、PAZZ氏が経営するラーメン店である。

インタビュー終了後、『GASTUNK』のライブに通っていたことをPAZZ氏に話していた松田氏。
その表情は、完全にキッズに戻っていた。

多くのバンドマンやロックファンに愛されるラーメン店『GOTEN』。
濃厚スープの豚骨ラーメンはもちろん、ちゃんぽんやつけ麺、トムヤムスープと豚骨スープが絶妙にブレンドされたタイ式ラーメンも絶品だが、ビールや焼酎に合うサイドメニューも豊富で、ラーメンに辿り着けないこともしばしば。
大勢で是非訪れてみて欲しい。

千駄ヶ谷GOTEN
東京都渋谷区千駄ヶ谷5-15-8
03-3350-4818
https://www.facebook.com/ramengoten/

DOOM/Still Can’t The Dead

 


 

アーティスト情報

WRENCH

WRENCH official website
http://wrench.jp/

WRENCH『weak』 special site
https://weak.wrench.jp/

WRENCH/KIRAWAREMONO

té official website
https://tesound.amebaownd.com/

té/音の中の『痙攣的』な美は、観念を超え肉体に訪れる野生の戦慄。

 

(Interview, Text & Photo by 五辺宏明)