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【連載】ファイアーループ足立のライブハウスなんかやめてやる!!/第50回

<毎週日曜日連載>




名古屋のクアトロでPAやってきた!

おはようございます。モグリPA・足立です。師匠もいなければ専門学校にも行ってない、独学かつインターネットと現場だけが俺の修行場だぜ!って息まいてPAを20年くらいやってきました故、ちゃんと学校や会社で勉強してきた方々からアホだと思われても仕方のないヘンテコPAではありますが、ブラックジャックみたいでかっこいいと最近は自負しております。老害化してない?大丈夫?

そんな僕が、先日とあるバンドに誘われてでっかいライブハウス、名古屋クラブクアトロでPAやってきました!とは言え、勝手知ったるモニターPAさんもいたので僕は客席の音を出すだけ、のなんともラク?でオイシイ?お仕事です。楽ちん!ただただ楽しかったです。でも「楽しかった」だけではあんまりなので、今回のコラムはその思い出とかやり口を。僕が勝手にこういう裏話みたいなの書いてバンド的に嬉しいかイヤかわからないので、今回は音響の話だけに絞って書いていこうと思います。PAに関しては特に秘密にしていることも無いので、おっぴろげにぶっちゃけで書いていこうと思います。現役でPAやってる人への参考になったら嬉しいです。

クアトロに着いて、色んな人に挨拶して、歓迎していただいて、さあ遊ぶぞ!なテンションで会場入りからすぐ始まりました。ステージも客席も、ファイアーループのだいたい4倍くらいの大きさ。ウチが「キャパ200」とか言ってるの無茶だね。朝の満員電車レベルで詰めて200人だからね、クアトロはとにかくデカい。天井もウチよりぜんぜん高いし、音響も何もかもぜーんぶ違うんちゃうか!僕なんて大きいハコでPAやったの数えるくらいしかないですからね、もうこれはバンドが無謀な賭けに出たとしか思えないのですが、まずはマトモに音が出れば良し!

というわけで、まずは音響さん定番の「トークバックでへーはー言って、音をグラフィックイコライザーで調整する」というターンです。僕その日ほぼ手ぶらで行ったので、マイクまで貸していただきました。今時エチケットとして持っていくべきでした。反省しています。のっけからザコ丸出しです。次から気を付けます。で、スイマセンできればコーラスマイクもぜんぶbeta58お借りしていいですか?えっいけます!?ありがとうございますありがとうございます、まじでこの日はありがとうございますとすいませんしか言ってない。

余談ですが僕はbeta58aが大好きです。巷ではまだまだsm58現役ですけど、やっぱbetaは圧倒的にイイです。あんまり特定のマイクをベタ褒めしすぎるとキモチワルイ話になるんですが、とりあえず確実に言えるのは「sm58は1966年発売、beta58は1989年発売、現行のbeta58a(aが付くだけでぜんぜん音が違う)に至っては2000年発売」ってことですね!sm58から34年もかけて、SHUREの超有能な開発者がsm58よりダメなモノ作るはずないじゃない。はっきり言っておきます。beta58aの方が音が良いです。ここだけの話、音響業界で「ボーカルマイクは絶対ハイパス!!絶対に!!マスト!!」ってなってるのは古くからのsm58信仰の弊害だと思っています。sm58は今時のマイクに比べて(色んな意味で)低音の性能がすごく悪いんです。下手に低音を出すと周りの音まで悪くしてしまう。そんな泥臭さが今もなお多くのファンを勝ち取っているのだとは思いますが、近代的なマイクならハイパスマストではありません。ポップノイズも別に気にならない。

さてさてsm下げbeta上げのセンシティブな話はこれくらいにしてクアトロに戻りましょう。最初の「へーはー」で「あれ、コレもう何もしなくていいじゃないですかあ!」そう、何もすることないくらいちゃんと「へーはー」だったんですね。これは素敵!もちろんファイアーループの「へーはー」とはぜんぜん、全く違いますよ?でもちゃんと「へーはー」。こりゃいいですね!!ってキャッキャ言ってたら、その日にお世話してくれた音響チーフの方も笑顔で「でしょ~!」。そう、名古屋クアトロはここで30年以上やってるんです。グラフィックイコライザーでゴリゴリ調整しないとどうにもならん、みたいな音環境をそのまま放置してるはずがないんです。これはさっきのマイクの技術者の話にも似てますね。そこにあるものと、そこで努力している技術者をまずは信用しましょう。

つまり、僕の基本PA理念である「その会場の音を知る」「その会場の音を出す」に通じます。クアトロでファイアーループの音を出そうとしても絶対にショボい、メチャメチャな音にになります。てゆうか無理なんです。似てる音になるかもしれないけど、そんな捻じ曲げた音を出そうとしたらスピーカーやハコがかわいそう。その会場ならではの音を楽しむことがPAもバンドも肝心なんです。というわけで、その日のクアトロはご機嫌に音を出してくれました。仲良くなったって感じですね!

折角だから、上で書いた「無理」の技術的な根拠もここで軽く説明しておきましょう。現在のテクノロジーでは、各帯域の「個別の音量」をいじることはできても各帯域の「個別の立ち上がり・立ち下がり」はほぼ調整できません。特に立ち下がりを短くするのは不可能なんです。リバーブを消すの、無理でしょ?

「立ち上がり」はアタック感、「立ち下がり」はサスティーン(会場リバーブ)、と読み替えてくれてもいいです。例えばとある会場は50ヘルツが大きく(ピークといいます)、63ヘルツが小さい(ディップといいます)という特性があるとします。イコライザーでそのピークとディップはある程度補正することができます。が、同時に「63ヘルツは立ち上がりが遅く、サスティーンが長い」という特性の空間だと「音量の小さい帯域だから持ち上げたけど、タイトじゃない帯域でもあるからボワンボワン」というあからさまな、しかも不自然なエラーを誘発してしまうんです。しかもこれは特殊な例ではないです。だから僕が「いらんことするよりPAブースで踊ってた方が良い音がする」とか言っちゃうのです。

こうやって自論を唱えすぎると各方面に喧嘩売ってるみたいになりますから、今日のところはこれくらいにしときましょう。名古屋のクアトロというライブハウスからは(良い意味で)僕と同じ感性を感じましたゆえ、たいへん楽しくやらせていただきました。なにひとつ困りませんでした!ってお礼を言って「何よりです!」って言っていただいて、終了!また機会があればぜひ行きたいですね。

大して技術的な話にはなりませんでしたが、詳しい話はまたやるかもしれません。たった1日でたくさん持って帰りました。めちゃめちゃ久しぶりにPAっぽい話をしましたね!ではまた来週!

ライブハウス『Fireloop』店長/足立 浩志

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プロフィール

足立 浩志

大阪府大阪市のライブハウス

寺田町Fireloop』店長

Twitter:@adatinc

大阪にある、寺田町Fireloopという面白ライブハウスのオーナーで店長です。大喜利が大得意ですが、気の利いた答えを出すまでに1日かかります。

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