【連載】オ客ハ読ムナ。/第10回

<毎週土曜日連載>
ワガママなProfileのお話
さてさて。朝専用缶コーヒーを参考にキャッチコピーの話を書いてみた前回の続きです。
キャッチコピーの話とは別ですが、バンドのプロフィール文章のことで思い出したことを書いてみたいと思います。
▼実はバンドもやってます。
このミュージックラビッツさんのコラムは
ライブハウスの裏方モードで書いているので忘れがちですが
実は僕、The denkibran(@The_denkibran)というバンドもやってます。
そうです。
実はバンドマンなんです(いまさら)。
今日は自分のバンドの経験談を書いてみます。
▼2012年頃のThe denkibranの話
長くダラダラとてっているバンドです。
良い時期もあれば
悪い時期もありました。
思いかえすと2012年頃のThe denkibranは、それなりに動員があったように記憶しています。
良い時期です。
KANA-BOON(@_kanaboon)とよく一緒にライブをやったり、仲良くしてた頃だったので
ぶっちゃけ動員に関しては、KANA-BOONをはじめ当時の周りの若いバンドのオコボレをもらっていただけなんですが(笑)
それなりに集客もありました。
その頃に気づいたお話です。
▼当時のプロフィール文章
その頃は、僕もまだバンドもそれなりにマジメにやっていた頃なので(笑)
ホームページのProfileの文章もかなりマジメに書いてました。
正確な内容は忘れてしまいましたが
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ビートルズやTH WHOなどの60年代バンド
90年代 OASISなどのイギリスのバンド
Mr.childrenやスピッツなどの邦ロックなど
洋邦年代問わず影響を色濃く受け
ビートルズライクなコード進行と職人的アレンジ
切ない日本語歌詞がのるクオリティの高い楽曲
それを叩きこ壊すかのようなエネルギッシュなライブパフォーマンスが魅力のバンド
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もうちょっと、ちゃんとまとめてはいましたが
だいだいこんな感じのProfile文章だったと思います。
今、読み返すと完全に情報過多ですね(笑)
はじめたてのバンドさんって、こんな感じのProfileが多い気がします。
内容が雑多すぎるというか
「で、けっきょくどういうバンドなの?」
とツッコまれそうな悪いProfile文章のお手本みたいなProfileです(笑)。
なんで、こんなことになってるのか!?というとね
思うに「全部、誤解せずにお客さんにわかって欲しい!!」
と当時の僕は必死すぎたんです。
2012年頃、4つ打ち邦ロック的なものがトレンドになっていた時期で
極端に洋楽を聴いてない世代のバンドとの共演の機会がすごく増えました。
日本のロックだけを聴いてバンドをしているような世代のバンド。
それに対してのアンチというか。
同じような日本語でポップなロックバンドをやっているけど、
オレはおまえ達とは違うぜ!
ルーツにはちゃんと洋楽あるんだぜ!
でもマニアックなならないような大衆性をきっちあるんだぜ!
曲もシンプル聞こえるかもけど、コード進行も実は細かく転調してたり凝ったことしてるんだぜ!
…みたいなことを音楽以外で伝えようと必死だったわけです。
「俺たちは周りのバンドとは違うんだ!」
みたいな。
これってね、前回も書いた話と通じるのですが
完全に「無駄なミュージシャンのプライド」なんですよ。
決めつけられたら否定したくなる。
「シンプルなコード進行ですよね?」とお客さんに言われたら
「いやいや、シンプルに聴こえるように作ってるけど、けっこう複雑なことやってるんですよ?」
と、どうしても答えたくなるわけです。
本当に無駄な小さなプライド。
でもこれって本質的なところで、聴いてくれてる、応援してくれてる人からしたら、本当にどうでも良い話なんですよね。
本質的に大事なのはそこじゃない。
2012年の頃
なんで今、お客さんがThe denkibranのライブ見に来てくれたり
応援してくれてるんだろうな?と、フと考えたんです。
要は「お客さんにとっての自分達の魅力って何なんだろう?」という話なんですが。
けっきょく、その頃によく来てくれてたお客さんって
「30歳ぐらいのライブハウスで働いてるおっさんが
若い子に負けないように
若い子の背中を押してあげるように
一生懸命にライブをしている」
これに魅力を感じてライブに来てくれてる人が多かったように思うんですね。
振り返ると、あの時のThe denkibranの本質的な魅力って、それのみだったと思うんです。
ビートルズもOASISも、
複雑な転調コードも、
THE WHOばりのエネルギッシュなライブパフォーマンスも
自分達が大事にしていた要素って、ほぼお客さんにとっては関係なかったんです。
これに気づいた時はけっこう目から鱗でした。
自分がバンドをやるうえで大事にしていた要素って、お客さんにとっては別にどうでもよかったんだ!みたいな。
自分が一番大事にしていたことだったので、それを誤解なく伝えたいという思いが強すぎて
完全にエゴイスティックになっていた気がします。
そう、オレの全部を誤解せずにわかってくれ!というワガママな文章。
ミュージシャンのエゴが完全に空回りしたProfile文章。
もし、お客さんにとっても本質的な魅力を考えてProfile文章を考えるとしたら
「大人が若い子に負けないように暑苦しく一生懸命ライブやってるバンドです」
この一言で、極論、たぶん良かったんですよね。
はい。
遠回りして、当時そんなように結論にたどり着きました。
僕にだって試行錯誤の若い頃があったんです。
どうせ伝わり切らないのに、それでも全部わかってくれ!というのはエゴなんだよな~という思いで話でした。
本当に伝えたいことを一つだけ選んで、それを大事にする方がお客さんには伝わりやすいという当たり前のお話でした。
ちなみになのですが
ビートルズを好きな人が僕の作った曲を聴いたら、「ああ、ちょっとビートルズっぽいね」とやっぱり伝わるし
THE WHOを好きな人が僕らのライブを見たら「あ、THE WHO…ピートタウンゼント好きですよね(笑)?」とやっぱり伝わるし
言葉にして無理やり伝えようとしなくても、わかる人にはわかってもらえるんだな…というのも、この時期に実感しました。
そうか。自分の持っているある種のマニアックな要素っていうのは
わかる人にだけわかってもらえたら良いのか。
あ、じゃそれで良いか!というある種のあきらめでもあるのですが。
説明過多になって、本質を見失いたくないもんですね。
今週は特にとっちらかってる気もしますが許せ。
書籍化の機会があったら、今週の記事は加筆修正したいと思います(笑)
ではまた来週。
The denkibran(Vo./Gt.)&南堀江kanve(ブッカー)/倉坂直樹
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