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【連載】ファイアーループ足立のライブハウスなんかやめてやる!!/第48回

<毎週日曜日連載>




便利は我々を幸せにするのか その2

先週は自分語りで終わってしまった感があるので、もうちょっとワイドなお話をしようかな。

便利は我々を幸せにするのか、その2。テーマは音楽です。音楽の「便利」ってイケてるんでしょうか?

皆様ご存じのとおり、近年の音楽はスマホでとにかくお手軽、簡単に“消費”されています。先週のコラムでもちょろっと触れましたが、音楽のひとつ前の定番はCDでしたね。CDをケースから「落とさないように慎重に出して」コンポのイジェクトボタンを押してトレイを開けて、CDを載せて、もう一回イジェクトボタンを押してトレイを閉めて、ちょっと待って(ローディング)、再生ボタンを押してやっと音楽が聴けた時代。ウワァーめんどくせえええ!!でも、とっても楽しい時代でした。その楽しさに取りつかれた人達がCDをたくさん買って、だからCDがたくさん売れて、億万長者になったミュージシャンが当時はたくさんいました。懐古主義と言われても仕方ないですが、今回そういう話ではありません。でも面白いのでちょっと寄り道して、時代をさかのぼってみましょう。

CDのひとつ前の時代はLP、EPレコードでした。CDはそれらレコードの不便を(今見ると)ちょっとだけ便利にしたもの。その前はSPレコードといって、しょっちゅう使い捨ての針を交換しなくちゃいけないさらに面倒くさい代物で、その前が有名な発明家であるエジソンの蓄音機です。これが「録音物」の大まかな、たった150年くらいの歴史。その横から食い込んでくるのが「好きな音楽を自分で録音できるやつ」。僕の青春時代は、自分で手軽に音楽を録音できるワクワクマシーン、カセットテープでした。カセットテープに好きなレコードとかラジオとかテレビの音とかを録音して「好きな時に好きな音楽を楽しむ」これだけでもレコード世代の人達からは「良い時代になったもんじゃのお」と言われてたんですよね。

カセットテープって独特の優しい、エモい音で僕は大好きだったんですが、今考えるととんでもなく面倒な代物でした。最初から聴くためにはテープを巻き戻さなきゃならない。30分巻き戻すために3分くらいは平気でかかります。で、2曲目から聴きたいとするじゃないですか、じゃあ1曲飛ばすのに早送り。ちょっといいデッキやウォークマンなら頭出し機能(無音検出)というのがあって勝手に止まってくれるんだけど、けっこう後半に出てきた技術じゃなかったかな、だいたいここらへんかァ!って止めて、2曲目のイントロちょっと飛んじゃったりする。これでは音楽はだいなしです。だから早送りなんて滅多にしなかったし、そういう意味でもアルバムなんて通しで聴くのが普通でした。アルバムの、曲間の無音の時間も今より重要だったと思います。

で、それが便利になったのがMDです。デジタル録音だからほぼCDと同じ音質だし、曲の頭出し巻き戻しやり放題、曲順さえも入れ替えることができるし、何度使い回ししてもテープみたいに伸びない。好きな曲だけ延々ループで聴けちゃう!?こんな便利なもの!!夢じゃん!!って高校1年生の時に狂喜して手に入れて以来、僕の「音楽リスニング」に対する情熱が少しずつ少しずつ冷めていったのをよく覚えています。これは一体どういうことでしょうか。

今はサブスク聴き放題で、アルバムも通して聴くことなんてかなり減ったと聞いています。楽曲制作側からするとサブスクでどんどん選別されていくのが常だから(仕方なく)頭にサビが来る曲がめちゃめちゃ増えているとも聞きます。どうなのそれ。しゃーない?うん、まず聴いてもらいたいもんね。売れる売れない以前に聴いてもらいたいもんね。いまサブスクでラブファントムが新曲として出てきたらきっと「いつ始まるねん、、、もうええわ!」って飛ばされちゃいますよ。

https://youtu.be/ON4NXPUx-E8

これは由々しき問題です。もっと色んな音楽を本当の意味で自由に作ってほしいし、どの曲も等しくチャンスを持っていて欲しいと僕は思っているのです。本来は。

音楽ビジネスが音楽をダメにした、なんて言うつもりはないです。時代が音楽に影響を与えているのはまぎれもない事実。上で挙げたラブファントムだって、大ヒットドラマのタイアップでみんなサビは知ってるだろうから「CD買った人をこれでもかっていうくらい焦らして焦らして、、、キタァーーーー!!」みたいな楽曲演出だったように思います。このように今も昔も現状を見極めて楽曲制作に取り組むことには変わりないんですが、さすがに今は行き過ぎだとも思っています。世の中が限界突破して便利すぎるんです。便利すぎる世の中は人生を豊かにはしてくれません。まだ懐古主義者みたいに聞こえますね?続けましょう。

便利になったものをわざわざ「不便」にしていくのは無理があるのは僕も重々承知です。YouTubeって、ちょっと前までスマホのバックグラウンド再生ができてましたよね。スマホいじりながら好きなバンドの曲をYouTubeで、って楽しみ方をしていた人は沢山いたと思うし、僕もそのくちでした。今、それはビジネス的にイケてないと判断されてバックグラウンド再生自体が有料になってしまいましたが、この例のように無理矢理「不便」に戻されたものに僕らが納得するはずがない。無料だったにもかかわらず、みんな不平不満ブーブーで横暴だ!って。つまり、いちど便利になったものを意図的に、わざわざ「不便」に戻すのはまず不可能、あるいは巨大な組織が批判を恐れず力技で「オラっ」ってやるしかないんです。

いま、音楽はサブスクで超便利に聴けるようになっています。インターネットも速くなったから、いつでもどこでも好きなやつを聴けるようになっています。音楽を家や電車や車で楽しむことについて、これ以上便利になることは有り得るでしょうか?僕は無いと思います。さんざん偉そうなこと言っておいてなんですが、もう全く思いつきません。得意な大喜利脳で考えてもぜんぜん思いつきません。つまりメディア音楽は冷蔵庫とか炊飯器みたいな白物家電と同じで、これにて遂に進化完了したということなんです。それに対して、とっくの昔に、何千年も昔に出来上がってるものがあります。何だかわかるでしょうか?それがライブハウスをはじめとする「エンターテイメント会場」だという話。

「家で音楽を聴くこと」「家で音楽を選ぶこと」がどんどん便利に、自由になって限界まで達してしまったのと真逆にいると言えるのがライブハウス、およびクラブ、そして全てのエンターテイメント会場です。会場の音楽や演目はお客さんには選べません。次に何の曲が流れるか、どんな出し物があるか、来場したお客さんには選べないんです。嫌だったら退場するしかないです。超どんくさいですね!しかし、これはニッチだと思いますか?前時代的だと思いますか?いや、これは進化が既に完了している類のエンターテイメントなんですね。これは本当に素晴らしいことで、対峙する形として「進化が最近になってやっと完了した、パーソナルな音楽」として件のサブスクがある。

僕はライブハウスの音楽をたくさんの人に楽しんでもらいたいと思っているけれど、「便利に」しようとは全く考えていないです。なぜなら不可能だからです。ライブ配信に関しても全く共通するものを感じています。巻き戻しや早送りなんかできないリアルタイムであるという面でです。その時、その時の「音楽」に間に合ったか、間に合わなかったか、こんなかけがえの無さはライブ会場でも配信でも変わりません。

しかしながら、YouTubeはライブ配信でも巻き戻しできるようになっていますね。まったくロクなことを考えない。違うそうじゃない。生配信さえもひとつ便利にしたのはすごいことだけど、そういうことじゃない。「ビデオデッキの無いテレビの時代」のワクワクと緊張感がせっかく戻ってきたんだよ。また同じ過ちを犯してどうする。でも大丈夫、これ以上は絶対に無いです。だってどんなにAIがオラついたところで、早送りだけは絶対できないんです。ここがマジでアツい。いま僕がライブ配信に夢中になっているのは、このように「将来的にどんな技術革新があっても、絶対に奪われない聖域」が成立しているからです。配信チケットを買ってくださる皆様は、きっとこの美学を理解しておられるのだと思います。

そしてアーカイブ(録画)ですね。これも僕はいま楽しんで取り組んでいます。ライブアーカイブは例えるならば上で書いた「カセットテープ」や「CD」の楽しさです。やろうと思えば巻き戻しも早送りもできるけど、いちど見始めたら「あ、この曲キライだから聴きたくない!!」レベルじゃなかったら早送りしないです。MC長くても早送りしないです。なんかグダグダのMCかと思わせといてグッとくるドラマがあるかもしれないじゃないですか。しびれを切らしてMCを早送りして、なんか行き過ぎちゃって客席がウオーっってなってたら、せっかくの「グっ」ひとつ失うじゃないですか。そんな勿体ないこと音楽を愛してる人ならきっとやりません。つまりこれは「初めてCDのケースを開けて、イジェクトボタン押して、トレイにCDを置いて、もう一回イジェクト押してトレイを閉じて、再生した」時代の再来であるわけです。

ワクワクして買って初めてデッキに載せたCD、早送りなんて誰もしないですよね。あのかけがえのない楽しさ、喜びがもう一回戻ってきました。「君らどうせ便利なのが好きなんでショ」「ホレホレ消費しろ、金を払え」みたいな悪い連中に略奪されることのない、強靭な魔法に守られた形でです。

この一見どんくさい「ライブ」「ライブ配信」「ライブアーカイブ」この3つに僕はロマンと、音楽産業の復興を見ています。「面倒くさい」はすぐ便利屋とテクノロジーの標的になりますが、絶対に邪魔されないものがライブハウスにはたくさん詰まっているんです。人生を賭けて取り組みたいと考えています。音楽はまだまだ死にません。むしろ楽勝です。あれ、なんかメインタイトルと真逆のこと言ってますね?まあいいや!ではまた来週!

ライブハウス『Fireloop』店長/足立 浩志

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プロフィール

足立 浩志

大阪府大阪市のライブハウス

寺田町Fireloop』店長

Twitter:@adatinc

大阪にある、寺田町Fireloopという面白ライブハウスのオーナーで店長です。大喜利が大得意ですが、気の利いた答えを出すまでに1日かかります。

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