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【連載】ファイアーループ足立のライブハウスなんかやめてやる!!/第47回

<毎週日曜日連載>




便利は我々を幸せにするのか その1

僕はすごく面倒くさがりです。何をやるのも面倒くさい。毎日同じことをするのがとっても面倒くさいです。だから、できればスイッチひとつでぜんぶ立ち上がってほしいし、パソコンが立ち上がったらすぐに配信できるようになっていて欲しいし、できるだけ手を動かしたくないんです。これだけ言うと「息をするのもめんどくさい」ハート様みたいになってしまいそうですが決してそういうわけではなく、前向きな面倒くさがり、と受け取ってほしい。僕は文字を打つのが面倒くさいのでタイピングの練習したりするし、MCのたびに配信の音量を上げるのが面倒臭いので自動でMCが上がる仕組みを作ったりします。調整しなくてもハウらないシステムを作ります。これが「前向きな面倒くさがり」ってやつですよ!見習ってくださいね!!

さて、人間ひとりひとりの「やれることのキャパシティ」いわゆるリソース、これ本当に少ないと思います。いつもリソース100%で仕事をしているとフイに何かエラーがあった時、例えばギターアンプが壊れたとかゴキブリが出たとか。明日(金曜日)がコラムの締め切りなのに明日はPAで(忘れてた)、書く時間がないので慌てて今(木曜日)コラムを書く羽目になっているとか、そんな時にすごくテンパる。やはり何事も余裕を持って取り組まなきゃならない。日常はヒマくらいで丁度いいです。ついでに言うと私、一児の父でもありますから子供の相手もしたいし、しなくちゃだし、最近本当に余裕が無くてぜんぜん遊べていないから、毎日仕事に出る時に文句を言われて「うるせえー!仕事いってくる!」息子「ギャーン!」が続いています。頑張れ子供。リソースがぜんぜん足りない!余裕を持ちたいです。

この余裕を持つためにどうしたら良いかといいますと、そこで「効率の良い仕事をする」というのが一つ。毎日ボタン20個も押さなきゃならんところを1個押しただけで済むなら毎日20秒くらい得しますし、その得た20秒の積み重ねが余裕を生むのだと思っておりますゆえ、何にしても効率のよいことばっかり優先してしまうのです。僕は大阪のライブハウスで1番最初にライブハウスにデジタルミキサーを導入した男だと自負しておりますが、なんでみんなが大反対する中で頑なにデジミキを選んだかというと、理由はこの「効率が良い」でしかなかった。

今となってはたくさんのライブハウスがデジタルミキサーを採用しておりますが、当時、2000年~2001年頃には「ライブハウスで使えるデジタルミキサー」っていうのが本当に少なかったです。YAMAHAのO2Rを無理矢理使ったり、他に何個か選択肢はあったのですが、「ライブ特化型」のデジタルミキサーなんて数えるほどしか開発されていませんでした。まともに使えそうなのは、これまたYAMAHAのPM1Dというやつで、たしか1000万くらいしたと思う。買えるか!あと、デケエ!!

そんな僕が選んだのはRolandのVM-7200というやつで、フルセットで70万するわりにちょっとオモチャみたいな見た目でしたが音はすごくよかったし、なにより効率が良かった。光るテンキーが付いていて、それのひとつひとつがシーンボタンになってるんです。これは何かと言いますと、リハーサルが終わったらその設定を「完全に」記録することができる(中途半端にしか記録できない機種が当時は多かった)。それを10個まで。一日に10バンド以上出てしかもぜんぶリハーサル有り、なんてイベントなかなか無いですから、これが本当に使い勝手良かったです。デリートボタンを押しながらテンキーの「5」を押すとそのボタンのランプが消えてデータのない状態、そこでまた「5」を押すとその時の状態が記録される。で、光っているボタンを押すとその状態に戻る。今でもなかなかないですよ、こんな効率のいいシステム!

今時のデジミキには完全なシーンリコールなんて当たり前にあるんですが、だいたいが「リコールボタン押して、データ選んで、呼び出し」です。いや、ボタン1回押すだけでリコールしたいよね、本番はすごく時間に追われているから、「リコールボタン押して、データ選んで」さえも本当はしたくないんです。

そもそも2001年当時、ライブハウスのミキサーはふつうアナログです。アナログのPAシステムはどうやってリコール(リハの状態に戻す)するかっていうと、リハが終わったら紙に書くんです。ぜんぶ。EQのツマミとか、モニターの返しとか、コンプの設定とか、ぜんぶ紙に書くんです。で、本番はその紙を見て戻すんです。どうですヤバいでしょう。そのせいでタイムテーブルは押しまくりだし、ステージセッティングする係(だいたいタダ働き)とリコールする係(偉い人)でPA二人体制のライブハウスが多かった。僕はPA始めた瞬間から「いや面倒くせえだろ!!」「タダ働きはよくねえだろ!!」と世の悪習を颯爽と払いのけたというわけですね。過去の俺えらい。褒めてほしい。

僕は元来マメな性格でもないので、こんなに面倒くさかったらすぐ手を抜いてしまいます。「あ、いけてるからコレでいいや」って僕は間違いなくなってたでしょうから、デジタルミキサーを選んで本当に良かったと今でも思ってるんですよ!「音が悪い」「音が冷たい」「音が遅い」とかさんざん悪口言われましたが気にしません。いや、俺にはわかんねえ、それよりバンドと喋る時間に充てた方が良い音出るんじゃない?って。今考えるとなかなかパンクスでしたね!

2010年くらいまでの世の中にはこんな「面倒くさい」って思うことがたくさんあって、それをゴリゴリとつぶしてきたのがここ10年という印象。音楽を聴くときに「コンポの電源を入れて、CDをケースから出して、CDのイジェクトボタンを押して、トレイにCD乗せて、イジェクトボタンまた押して再生ボタンを押してやっと音楽を聴く」なんて今時だれがやってるんだってくらい面倒くさいです。ただしそれを便利にしまくった結果が今の「惨状」で、昨今の音楽事情があの頃より豊かだったと言えないのは周知のとおり。だんだんわからなくなってきましたね!

何度も言うように僕は面倒くさいのはキライだし、便利なのがすごく好きなんです。ただ、その「便利である」という状態にいつでもワクワクしているから問題ないと自分では思っています。だから、ひとつ便利にするために丸一日割くという、周囲から見たらすごく馬鹿げていることも平気でやってしまいます。振り返るとなにやってたんだ俺、ってなることもしばしばですが、とにかく便利になると楽しいのでやってしまいます。これは「日々の生活を便利にする」っていう単なる趣味です。だからぜんぜん良い。問題なのは「便利だから楽チンである」ということに気付きもしない状態で、これでは便利も泣いています。折角だから、身の回りにある「便利」に常に驚いたり面白がってみてはいかがでしょうか。それに対する感謝であったり、もっと言えばそれを作った人達への敬意、それがなかった時代の「不便ではあるが豊かだったかもしれない時代」に想いを馳せていれば、自ずと今が生きてくるんではないかと思います。

便利を求めるのは怠惰を求めるのとは全く違うんです。便利になれば楽しくて、面倒くさかったらそれも楽しい。こいうのを知ることが良くも悪くも「ロマン」ってやつなんですね。もうちょっと大事な話をしたくなったので来週に続きます。ではまた!

ライブハウス『Fireloop』店長/足立 浩志

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プロフィール

足立 浩志

大阪府大阪市のライブハウス

寺田町Fireloop』店長

Twitter:@adatinc

大阪にある、寺田町Fireloopという面白ライブハウスのオーナーで店長です。大喜利が大得意ですが、気の利いた答えを出すまでに1日かかります。

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