1. HOME
  2. ブログ
  3. 【連載】チセツナガラ小唄ぺこのどないせえと?/第8回

【連載】チセツナガラ小唄ぺこのどないせえと?/第8回

<毎週水曜日連載>




みみ

ちゃんと卒業してないけど大学生活はかなり充実していたと思い出す。

所謂、「意識高い系(笑)」の男が集まる学科。
当時の僕は話のつまらない人間が大嫌いで、一緒にご飯を食べようと誘われようが1人で行動することが多かった。

そこを軽音楽部の先輩に捕まってそのままなし崩しに入部した。

いつものメンバーは男5人。

金無し女無し。

なぜか演奏力ではなくトーク力が評価されるこの部活で僕達はかなり好き放題できたと思う。

僕は音楽学部で、他の4人は説明が少ししにくい、「頭は良くないけどとりあえず大学行っとくか」って人が選ぶ学科。

学科が違うと授業も違う。

空きコマにみんなに会うのが楽しみだった。

毎日のように下宿民の友人の家に溜まり、冬にはよく鍋を囲んだ。

「みんないくら持ってる?」

「500円」

「300円」

1人200円ずつ出し合って豚肉1パック、白菜半玉、うどん15玉を買う。

それは鍋じゃなくうどんやったけど僕達は頑なにそれを鍋と呼んだ。

青春について考える時、あの日々について考えない事は無い。

2年生の頃、食堂で遅めの昼食をとりながらいつものメンバーを待っていると例の学科の女の子に喋りかけられた。

90円のライスに100円の唐揚げを乗せ、共用の調味料をこれでもかとかけた唐揚げ丼。

「(学科名)飯」と忌み名で呼ばれる僕達の昼食。

「一緒に食べていい?」

食堂のメニューの中で1番高額のランチと美女。

なんで断らなかったのかは覚えてないけど、今でも断らんのかな?

「変な人だから喋ってみたかったの」

食堂の入り口すぐにあるテーブルに、僕ら以外の生徒はあまり座ろうとしない。

学内に悪名の轟く軽音学部がそこを巣としているから。

彼女は1つ下の学年、例の学科に通う同い年らしい。

身長が高く、おっぱいの大きいギャル。

笑顔が可愛くて自分のことを、「ミミ」と呼ぶが喋り方には品性を感じられた。

可愛かったと僕は思う。

歯は出てなかった。

大盛り上がりすることも無く、それでも何故か楽しかった会話は彼女の聞き上手にあった。

連絡先を聞くのが難しく(過去記事を参照)、Twitterを教え合った。

ミミちゃんは僕が1人になるタイミングでいつも喋りかけに来てくれる。

良いイメージのない軽音楽部を嫌っていたのか、自分の噂を気にしていたのかはわからない。

ミミちゃんと喋っていると後輩や友人は話しかけに来なかった。

友人は多分、「邪魔すんのもな」って気持ちやったんかな。

ミミちゃんと喋っているのを見た後輩がその後、「知り合いなんすか?」って聞いた。

ミミちゃんは友達が居なくて基本的に1人で行動しているらしい。

実は高校生で起業してお金が余って暇だから大学に来たとか
北新地のキャバクラ嬢で客が学費を払っているとか
なんか有名な夜の女だとか、根も歯もない噂を聞かされた。

「ミミも昔曲出したことある」って言って見せてくれた曲名は、「夜の蝶々」やったことを考えると、夜職がどうとかは概ね合っていたと思う。

特にそんなことは気にならないし、それまでもそれからもそんな質問はしなかった。はず

学科の授業の関係で他のキャンパスに通うことも会ってなかなか会えず、久しぶりにミミちゃんに会った時、「寂しかったんやけど!」ってカレーを奢ってくれた。

ミミちゃんは関西弁と標準語を混ぜて話す。

例の唐揚げ丼を食べる僕に、「それ美味しい?こんど食べてみようかな」って聞くミミちゃんを必死で止めた事を色濃く覚えている。

そんな小さな思い出しかないけどミミちゃんの事を多分好きだったし、ミミちゃんもあの時僕の事を好きだった。

としたら良いな、と思う。

そうではなかった気がするけど。

退学届を出した日ミミちゃんは食堂に来なかった。

ついに連絡先は聞けなかった。

そこから僕も夜の世界に足を踏み入れたがその世界なんて広すぎる。

あれ以来一度会う事はなかった。

更新のとても遅かったTwitterは気がつくと、「とっても幸せなんだ」ってアカウント名になってツイートが消えてた。

どこかのタイミングでアカウントも消えた。

現実の恋の終わりはそんなもん。

ミミちゃんの本名は、「美美」

名が体を表してたな。

ミミとは読まんけどね。

チセツナガラ/小唄ぺこ(Vo./Gt.)

こちらもオススメ!

過去の連載記事

チセツナガラ/今日の1曲

https://youtu.be/Qp0OvKz5N4A

アーティスト情報




関連記事