【連載】音楽と僕らの共存論/第2回

<隔週木曜日連載>
音楽は思い出を“美化”するのでしょうか?
何かに打ち込みましたか?
何かを成し遂げましたか?
恋をしましたか?
昔よく聴いていた曲が流れると、思い出すことがあります。
部室でかき鳴らしたバンドサウンド。
一生懸命励んだ勉強の日々。
好きな人との何気ない会話。
今思えば、学校というのは特殊な空間で、
同じ年代の人が何十人も集まり、時を過ごしていました。
ほうきはギターになり、
携帯でくだらないムービーを撮影する。
酒を飲まずにロックスターになれました。
自転車での登下校では、Walkmanから心地よい音楽が流れます。
田んぼが一面に広がる道で、私を包み込むギターロック。
テスト前には、音楽が眠気覚ましにもなったような気がしています。
音楽とともに過ごした学校生活。
同じような生活を送っていた人も多くいるのではないでしょうか?
ただ、私は、
今頭の中で思い浮かべている情景が、
本当のことだったのかは定かではありません。
もちろん、勉強・部活・登下校も毎日してきたはずです。
しかし、その一つひとつの出来事が本当に輝いたものだったのか、
自信を持ってYESとは言えないのです。
音楽は私の思い出を美化しているのでしょうか?
私は、こう思います。
音楽自体が思い出を美化しているのではなくて、
思い出を美化したくてしたくてたまらない私を、音楽が後押ししてくれている気がしています。
私の心の中には都合よく切り取った記憶の断片があって、
それらを綺麗につなげたい衝動に駆られている気がしています。
音楽がその衝動を増強させることで、昔をより“美しい”ものだと思える気がするのです。
本当の過去が楽しくなかったからごまかしている、
というわけではなく、
楽しかった過去をより楽しむために、
ノンフィクションのようなフィクションを作り上げています。
主人公は自分自身。
けんかしたはずの友達も、
部活で悔しい思いをしたことも、
ふられてしまったあの日のことも
すべてが綺麗なシナリオに書きかわっていく。
私は綺麗な夕日を見た記憶はないのですが、綺麗な夕日を想像できます。
きっとこれは今まで見てきた夕日のいいところだけをかき集めて一つの写真のように合成するマジックなのかもしれません。
私は“美化”が好きです。
“美化”にはロマンがあり、“美化”にはある種の儚さを感じ取れるのです。
Endless宵道/永江 晴夫(Ba.)
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アーティスト情報
【紹介】Endless宵道/サイケデリックでエモーショナルな前衛的ロックバンド
https://musicloveits.com/archives/4440