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【連載】パーティ日和/第34回

<毎週土曜日連載>




戒厳令下のミュージックパーティ

4月10日土曜日。私が暮らす愛媛県松山市は3月末に一部の飲食店の無茶苦茶な営業により引き起こされた「繁華街クラスター」(この名前も違和感の塊ではあるが)により新型コロナウイルス感染症陽性確認者が多数確認され、過去最大の危機を迎えていた。
県では4月8日より警戒レベルを最も高い「感染対策期」に移行し、「特別警戒期間」と題して市内の飲食店などに時短営業を求め、補助金を配布し、市民には再び「不要不急の外出を自粛」してほしいと呼びかけた。街には家に帰れと喚き散らす市や県の車が走り回り、幹線道路上の交通情報版には「松山市に行くな」「外出するな」と書かれ再び自粛警察が暗躍し始め、街は再び暗闇に包まれた。

そんな中、僕は自身の看板イベント「Enough!![#イナフ04]」(https://e-nough.jp/)を強行した。

Enough!![#イナフ04]
Enough!![#イナフ04]

そもそもこのイベントは去年2020年の4月25日土曜日に開催予定だったものだ。当時は全く開催できる状況ではなかったので無観客配信どころか各DJ自宅から参加という超リモートリレー配信をやった。パーティを楽しみにしてくれていたお客さんや友人、スタッフ、関係者200人以上が配信に集まりインターネット上で盛り上がり、再会を約束してなんと丸一年待った。

その間僕たちは前回書いたような自分で言うのもおこがましいが正に死に物狂いで感染症に関する知識をかき集めインプットし、感染症対策を徹底しながらの営業ノウハウを構築し、ライブハウスがコロナ禍で営業を再開することに前向きな空気を作るためのアピールを続けてきた。その間我が店でクラスターを引き起こしたことは一度も無い。120人という人数を集めた日でもお客様、スタッフ、アーティストが一丸となったイベントは安全に、熱く、暖かく開催された。
努力は実ったと思った。
この日のために積み上げてきた。仲間と再開するために。みんなで音楽を浴びるために。祝杯をあげるために。
それが開催2日前に、たった一言でぶち壊されたのである。

ところがこの特別警戒期間による時短営業要請地区にサロンキティは入ってなかった。よって中止したところで協力金も出ず、開催したところでお客さんは来ない。しかしゲストの航空券も宿も取ってしまっているし誰かがその赤字を埋めてくれるわけでは無い。泣き寝入りしろ、と言われているようなものだった。

僕は開催を決めた。来る事ができないほとんどのお客さん向けに同時配信もやりながら、来られなくなった出演DJやVJ、スタッフの穴埋めをしながら、現地に来れる人たちとゲストのやしきんさんで最高のパーティを作ろうと心に決めた。

配信画面。暖かいコメントが嬉しい

どんな状況でも笑顔で、来てくれた人たち全てに感謝を。そう誓い合って戒厳令下のナイスパーティは始まった。
入場開始時に僕のツイートを見て知り合いが「こんな時にやる事やなかろが」と店の前まで言いに来た、巨大なお世話だ。
外出すら許されない真っ暗な街の外れで開催される深夜のパーティ。明るく、安全な、イージーなパーティを謳ってきた僕の看板イベント「Enough!![#イナフ04]」は、奇しくもこの日違法パーティのような雰囲気で始まったのだった。

結果から言うと、47名、スタッフと出演者含め現地には約60人が、配信には291人が集まった。思い思いに、懐かしい面々が笑いながら、語り合いながら朝まで6時間の暖かいパーティは続いた。普段からすると1/3くらいの人出だけど、どこに出しても恥ずかしくない最高のミュージックパーティが、愛に満ちたフロアが、そこにはあった。

現地。みんな感染症対策に協力してくれた。笑顔にあふれていた。
現地。みんな感染症対策に協力してくれた。笑顔にあふれていた。

本音を言うと、愛する仲間を危険にさらしてよかったのかと言う気持ちもある。まだあれから5日ほど、あの日クラスターが起こってない保証はまだ無い。だけどあの場にあった暖かい関係を知らない人にはわからないだろう。たった60人のパーティが、その60人そして配信を見守ってくれた291人にとってどれだけ救いだったかを。

後悔はしていない。これからも僕はこんなパーティを愛し、作っていくだろう。
不要不急などではない、これは必要な遊びなのだ。大人が真剣に遊ぶ、大切な場所をずっと守っていきたい。

ライブハウス『松山サロンキティ』店長/武花 正太

プロフィール

武花 正太

愛媛県松山市のライブハウス

松山サロンキティ』店長

Twitter:@take87syouta

音楽、アニメ、旅、鉄道、廃墟、階段など、引っ掛かりを覚えた物を節操なく取り込んだボーダーレスなライフスタイルは国内外を問わず広く呆れられている。

自身のバンド「MILDS」では作詞作曲、歌、ギター、ピアノを雰囲気でこなし、さまざまな現場でベースを弾く。

DJとしても活動しており、主な得物はなんとアニソンである。

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