【連載】パーティ日和/第32回

<毎週土曜日連載>
チャンクエラー
いつも歩いている風景。建物が隙間なく立ち並び人々が行き交う街。整然とした佇まいの通りに突然穴が開くことがある。
ビルの解体によって出現する空き地に、僕は密かに想いを寄せている。
散歩が好き、という話は以前書いたと思う。いろんなものを眺め、匂いを嗅ぎ、情緒を感じる小さな旅が大好きだ。
僕にとって街にはいろんな興味スポットがある。階段、路地、看板、室外機、ビルの隙間。人が日々を暮らす日常の中にありながら、どこか退廃的な雰囲気のあるものが好きだ。その中でも特に好きな、ビル解体による突然の空き地をぼくは「チャンクエラー」と呼ぶ。
「チャンクエラー」とはマインクラフトというゲームの用語でフィールド読み込み時に不具合が起こることで16×16マス(1チャンク)だけすっぽりと穴が開いたりするエラーのことであるが、これはまさにそんな様相を呈する。

これは会心の一枚。凄まじい違和感にしばらく動けないでいると便意が襲ってきて板挟みの苦しみを味わった。
このように、チャンクエラーはすごい違和感を街に作り出すのである。
もう一現場見ていただこう。


いかがだろうか。これはビルの間の隙間を縫ったのであろうアクロバティックな室外機までの排水パイプや曲がりくねった茶色の配管(画像2)や、今までは隠れていた奥のビルの居住空間があらわになってしまっているあたりが最高(画像3)。居住者しか知り得なかった外向きではない空間が急に通りに露出する、そんな、どこか目のやり場に困るような感覚が最高だ。

これはチャンクエラーがそういうものとして受け入れられた例。整えられのっぺりとした外壁が妙に艶かしい。奥のビル窓達のよそよそしい雰囲気も高得点。

ハッキリと跡が残っている。廃墟なども良いがこういった形でかつての姿が垣間見えるというのも想像以上に生々しい。
いかがだろうか。チャンクエラー、凄まじい魅力を放ってはいないだろうか。僕たちの暮らす街はいつも動いている。古いものは取り壊され、新しい建物が現れ、新しい物の中に古いものが混在し、それが突如現れたり姿を消したりする。生きているのだ。
都市が垣間見せるそんな味わい深い表情を見逃さないようにしたいものだ。

ライブハウス『松山サロンキティ』店長/武花 正太
プロフィール

音楽、アニメ、旅、鉄道、廃墟、階段など、引っ掛かりを覚えた物を節操なく取り込んだボーダーレスなライフスタイルは国内外を問わず広く呆れられている。
自身のバンド「MILDS」では作詞作曲、歌、ギター、ピアノを雰囲気でこなし、さまざまな現場でベースを弾く。
DJとしても活動しており、主な得物はなんとアニソンである。