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【連載】パーティ日和/第30回

<毎週土曜日連載>




バンドマンちゃんと生きろ

別にライブハウスの店長としての自覚に急激に目覚めた、という訳でもないし「みんなが僕の意見を聞いてくれる!」と勘違いした訳でもないが、ここのところ真面目なお話ばかり書いているせいで自分の顔つきが変わってきた。言葉の力は偉大である。

僕はアホだがアホなりに今思うところがあって書いている。そのうちただのアホに戻るのでもう少しお付き合いいただきたい。

僕はバンドを18の頃からずっとやってきた。高校3年生〜35歳くらいまではほぼノンストップ、ピーク時は年間80本くらいのライブをこなしハイエースに乗って全国を駆け巡った。
正直うまくいかないことの方が多かったし嫉妬や焦りにまみれていたし情けないことに色々な事件も起こした。ずっと金はなかったしバンドとバイト以外のことは全部我慢した。それでも楽しかったし沢山の仲間もできた。僕は音楽に夢中だった。今振り返ってもかけがえのない経験、という感じだ。

むかし昔の僕のバンドの写真が出てきた

だけどそれはバンドブーム、インディーズ全盛期。ライブハウスは観客とバンドマンで溢れ、インディー情報誌やフリーマガジンがいくつも発行され、バンドのwebサイトBBSではライブ後のお客さんが感想を語り合い、対バンすれば各バンドのファン同士が仲良くなってお互いの推しバンドを見に遊びに行く…自分がどのバンドを応援している、という事がアイデンティティみたいな時代。アンダーグラウンドに生まれ、時代を経てついに華開いたライブハウス/インディーズバンドカルチャー。
短かったけど楽しかった、そんな泡のような時代だったからだ。

今を生きる若きバンドマン達にそんな大昔の価値観押し付けてもどうにもならんし語ったところで興味もないだろう。現在の日本で、同じ事やるのは相当キツい上に孤独なのではないか。だけど。だからといって時代にあった効果的な活動方法を真剣に考えている人はどれくらいいるのだろうか。

僕は自分の偏った価値観を押し付けたくないのであまりバンドさんとじっくり話合わないようにしているのだけど、なかでも彼らと話している時にこちらから会話を切り上げるタイミングにする、潮時と判断するキーワードというのがある。

  1. 「時間がない」
  2. 「金がない」
  3. 「友達いない」

この三つだ。

この言葉が出た時点で何を話しても無駄だ。時間、資金、仲間。何をするにも絶対に必要なそれらを誰かが用意してくれると思っている奴に人を楽しませる面白い事なんてできるはずがない。

逆にいうとこの三つを無理なく用意できればバンド活動はもっとイージーに、効果的にできるという事だ。

僕はこれを用意するために「定職につかず、いつでも休めるアルバイトを空いた時間全部シフト入る」という方法でやってきた。若かったからできた。今やったら1ヶ月で死ぬ。そしてこれが僕だけでなく当時のバンドマンの基本的な暮らしだったと思う。
それには抵抗があるんだろう。そんな事できないしやりたくないよ、と。
致し方ないと思う。時代は移り変わり手軽な娯楽が溢れすぎてしまった。バンドマンもバンド好きなお客さんも、ライブハウスに来ないと退屈な人は減った。みんなのアイデンティティは様々な娯楽に補完された。
だから「金がない」は例えば「(タバコはやめられないしパチンコもたまにしか勝てないしソシャゲに課金もするからバンドに回す)金が(少)ない」だし、「時間がない」は例えば「(YouTube見たりツイッター眺めたりしてたら1日終わっちゃってバンドの事やる)時間がない」だ。そして「(そうやってあちこちに少しずつ時間もお金も零した結果人付き合いが希薄になり)友達(と呼べる人があまり身近に)居ない」みたいな状況に陥ってる人をここ数年で沢山見てきた。どんだけ音楽に、バンドに熱い素振りを見せても、才能があっても、良い奴でも、そいつには何を言っても無駄だしお客さんもそんな半端なバンドには魅力を感じない可能性が高い。

本当に長く、しっかりと地に足をつけてバンド活動を充実してやっていきたいのであれば、まず仕事をしっかりやるべきだと思う。下っ端ではダメだ。ある程度責任を持つことができて、スケジュール管理ができるポストに着き、職場のケアもちゃんとやる。信頼を勝ち取る、という事だ。そうすればライブやレコーディングに使う時間を自分である程度確保でき、お金もしっかり貰えて、積み上げた信頼が仲間も沢山連れて来てくれる。

どうだろうか。良い事だらけではないだろうか。
結局平たく言うと自堕落な暮らしを辞めてしっかり生きなさい、というだけの話になってしまうのだけどやっぱり人間それが一番大切、という事なのである。
そして散々無秩序な暮らしをして来たぼくがこれを今書いているという事が一番むず痒く気持ち悪い。やはりあまり真面目な話はするものではないな、と思う暖かい昼過ぎであった。

ライブハウス『松山サロンキティ』店長/武花 正太

プロフィール

武花 正太

愛媛県松山市のライブハウス

松山サロンキティ』店長

Twitter:@take87syouta

音楽、アニメ、旅、鉄道、廃墟、階段など、引っ掛かりを覚えた物を節操なく取り込んだボーダーレスなライフスタイルは国内外を問わず広く呆れられている。

自身のバンド「MILDS」では作詞作曲、歌、ギター、ピアノを雰囲気でこなし、さまざまな現場でベースを弾く。

DJとしても活動しており、主な得物はなんとアニソンである。

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