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【連載】ファイアーループ足立のライブハウスなんかやめてやる!!/第28回

<毎週日曜日連載>




クオリティは需要に直結するのかという話

おはようございます。ファイアーループの足立です。

最近またクオリティの事ばっかり考えています。でも「クオリティが高い」ことを闇雲に目指して頑張ってるのかというと少し違います。クオリティが高いことって、本当にみんなにとって嬉しいんでしょうか??嬉しいにきまってんじゃん、ですか?そう、確かになんでもクオリティが高いに越したことないですよね。分かります。分かりますがちょっと待ってください。クオリティの高いもの、そんなにみんな求めてるのかなあ?

例えば、こういう話をする時に僕が必ず挙げる「映像の話」です。VHSのビデオテープって今となっては知らない若い人もいると思うんですけど(実際、うちの野中は「ああ、、あの箱みたいなやつ」くらいの認識でした)、あそこからDVDに移行した時ってそりゃもうみんな大喜びでした。「映像めちゃめちゃキレイ!」「でもコンパクト!」「しかも、巻き戻しとかいらないんだ!?」「5.1chサラウンドって何!?」「マルチアングルって何!?」みんなワクワク!そのクオリティにみんな夢中になったもんです。そこに来て、PlayStation 2さえあればDVD見れちゃうなんて言われたらみんなもうVHSからDVDに移行してまいますよね。あれはまさに「革命」と言って良いと思います。「自宅で楽しむ映像」に革命が起きるのを自分の目で見ることができて本当に良かった。

そこから、ハイビジョンになって、Blu-rayというやつが登場して、画質はさらに上がっていきました。今は4Kとか8Kとかありますよね。デカいテレビが安く売られるようになって、それに合わせてどんどん解像度は上がっていきます。実はこれ、僕から言わせるとぜんぜん革命じゃない。だからやっぱりみんな、そんなにアツくない。

参考として、この遷移を「解像度」という数字で確認してみましょう。

  • VHS(ビデオテープってみんなが呼ぶやつ) 240 × 480ドット
  • S-VHS(画質が綺麗なのがウリのビデオテープ) 400 × 480ドット
  • DVD 720 × 480ドット
  • Blu-ray 1920 × 1080ドット(フルハイビジョン)
  • 4K 3840 × 2160ドット
  • 8K 7680×4320ドット

もう面倒くさいので4K以降の解像度なんて覚えてません。調べました。フルハイビジョンの縦横2倍ですね。ちなみに「K」というのは「キロ」で、4Kはだいたい横4000ドットくらいの解像度やで、という意味です。8Kは横8000ドットくらいやで、という意味。ここ20年くらいで、こんなに画面の解像度って上がってるんです。驚きですね。VHSは横240ドットですよ!?8Kと比べたら32倍!縦横でいくと、なんと288倍のドット数。しかもVHSはなんやかんやの理由で実際の縦の解像度は半分の240ドットですから、つまり

「8KはVHSの576倍、映像が綺麗である」

ということができるんです。ええーーー!!576倍綺麗!?!?

んーなわけないじゃないですか。せいぜい並べて置いたらびっくりする程度です。人間の感覚なんてそんなもんなのです。80年代のドリフとか今ハイビジョンテレビで見てもぜんぜん面白いのです。画質荒いなぁとか最初の10秒くらいしか気になりません。めちゃめちゃ頑張ってる技術者の方々ごめんなさい。

こういった「技術」の名誉のため付け加えておくと、4Kテレビ、8Kテレビは本当に綺麗です。まるででっかい写真が動いてるみたいです。「自分が子供のころ(今より視力がよく、色鮮やかだったに違いない)見ていた景色ってこんなんだったよなあ!」って思い出して、感動するレベルです。が、どれくらい僕はそれに夢中になるでしょうか。このハイクオリティの映像にもっともっと病み付きになって、借金してまで凄いテレビを買うでしょうか。僕は残念ながらならない。

コロナで色々おかしくなって、僕らライブハウスの取り組みもずいぶん変わりました。でも、変わらない物もたくさんあります。なんでライブハウスは面白かったのか、今と比べてぜんぜん音の悪い時代もライブハウスは「おもしろいところ」「行きたいところ」だったんです。別に歌詞とか歌とかちゃんと聞こえなくても、楽しいものは楽しいのです。ハイクオリティは喜びに比例しない。そこをちゃんと分かっていないと何をどう頑張ってもお金をかけてもスベるばっかりだと思っています。

いまスタジオ番なので、色々仕事をしているうちに何の話をしようと思っていたかすっかり忘れてしまいました。クオリティの話でしたね。もちろん僕も技術屋のはしくれですからみんなが驚くくらいクオリティの高い物を提供したいと思って日夜努力しています。でも、例えば今の10倍の値段のスピーカーに全部変えて、パワーアンプもマイクも高級なやつに変えて、照明もぐるぐる回る高級なやつを買っても恐らく事態は何も変わりません。

と言いながら、もしかしたら「今は映像で言うところの、VHSなのかもしれないぞ」という不安と期待があるから、やっぱりハイクオリティを目指してしまう。クオリティなんかどうでもええねんって言い切ったらそれはそれで問題です。音楽の世界にもDVDみたく「革命の時代」が来るんでしょうか。その時はあちら側にいたいですね。ライブ音楽はもっともっと良くなる気がします。誰が見ても分かるくらいの革命が起きそうな気もします。革命を起こすのか、革命が起きた時に備えるか。バランスよく生きていきたいです。僕はそういう性格なんです。ではまた来週!

ライブハウス『Fireloop』店長/足立 浩志

プロフィール

足立 浩志

大阪府大阪市のライブハウス

寺田町Fireloop』店長

Twitter:@adatinc

大阪にある、寺田町Fireloopという面白ライブハウスのオーナーで店長です。大喜利が大得意ですが、気の利いた答えを出すまでに1日かかります。

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