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【連載】徒然なるままにソラはNeruQooNeluです。/第19回

<毎週水曜日連載>




ギターを背負う

ギターをケースに入れて、よろめきながら背負った。あちこち玄関で身体をぶつけながら、靴をどうにか履いて一息つき、不自由なギターの重みを感じる。社会に吹き飛ばされそうだった私の軽さは、3kgほどの楽器にすがっていた。いつもより、地に足が付いた自分に安心して、家をでる。

高校1年生のとき、はじめて自分のギターを買ってもらった。真っ赤なストラトで、今も実家のリビングに置いてある。中学生になった従弟がたまに弾いていると、母が話してくれた。彼は春から高校生になる。

私が実家を出たとき、小学6年生だった彼も、あっという間に大人になっていく。ギターを背負うだけで、憧れたバンドマンに近づいた気がしたあの頃を、彼は今からめいっぱい過ごしていくのだ。

高校生の私は、ちっともギターが弾けなかった。それでもギターを背負うと、いつもより自信のある一歩を踏みしめる。背中の重さにうんざりすることもなく、ぴんと誇らしく背筋をのばして。

あの頃を思いだし浮かぶ記憶は、履きならしたローファーや、靴下の暗い色ではなく、風をうけて揺れるスカートの感触と、空が高く果てしなかったことだ。

ギターが重く感じるようになったのは、いつからだろう。

ギターで2倍の身幅になると、人をかきわけて進むのも必死だ。都会は本当に、たくさんの人が行きかっている。流されるままに早足になって、空を見上げることも減り、いつしか背中も丸まってしまった。

仕事がら、猫背と運動不足は加速していき、ラジオ体操でさえ息が上がる。眠たい目をこすって取り組む簡単な体操だったと、小学生の夏休みを思いだして始めたはずなのに、どんどん顔はゆがんでいった。軽快な音楽に合わせて、腕を耳の上にあげるだけでもなかなかにつらく、笑いが止まらない。

かつて、ギターを背負ったまま上を向いて歩き、身体を支えた腹筋や背筋は跡形もない。少しでも後ろに重心を置くと、全く抵抗もできないまま倒れていく自分が想像できる。

ギターを背負い、下を向いて歩くのが当たり前になった。一歩一歩に重みがあって、現実を噛みしめながら駅まで歩く。空の高さよりも、生きることに圧倒される日々だ。果てしなく、終わりが見えず、選ぶことに疲れるほど、大人はなんでもできてしまう。

大人の身体は、あまりにも軽く自由で吹き飛んでいきそうだ。いつも身体に力を入れて、押さえていないと不安で仕方がない。ギターの不自由な重みはむしろ、安心をくれるものとなった。

NeruQooNelu/ソラ

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