【ライブレポ】パレットパレッツ/急遽無観客配信に変更された信念の2021年初ライブ

2021年1月31日(日)に大阪のライブハウス 心斎橋soma(@soma74053816)にて開催された、配信限定ライブ「勝女 -カツジョ- 」。ともに心情を叫ぶ女性ボーカルバンド、パレットパレッツとYAMORI(BAND)(@1027_yamorin)による初のツーマンライブから、今回はパレットパレッツのライブレポートをお届けする。
有観客を急遽中止し、配信限定へと舵をきったライブ

このライブは、当初有観客のみで企画されていた。しかし会場となる心斎橋somaは大阪府にあり、直前に発令された緊急事態宣言の影響も鑑みて、苦悩の末に日程を変更して配信限定という形で届けられることとなる。
予定していた1月29日(金)に無観客ライブを収録し、31日(日)に配信するという緊急措置が取られた。
当人たちのTwitterからもその迷いや苦悩を感じることができる。
決してネガティブになることなく、あくまでも楽しく明るく話す彼女たち。配信であったとしても、ライブハウスを含む多くの人の助けもあってライブができる喜びを感じることができるコメントとなっている。
では、パレットパレッツとして2021年一発目となる、記念すべきライブのレポートをお届けしよう。
YAMORI×パレットパレッツによるコラボ曲で幕を開ける
暗転の中、YAMORIのギターが響き渡り、ドラムカウントからこのイベントのテーマソングとなるコラボ曲 “ 勝女 ” へと流れ込む。
Tanaka Emiカによる「あけましておめでとうございます!YAMORI(BAND)とパレットパレッツによるツーマンライブ「勝女 -カツジョ- 」始まりました!全力で楽しんでいきましょう!お願いします!」という煽りから、全メンバーが一気にヒートアップ。
ステージに並ぶ6人の姿はまさに圧巻で、Tanakaと相性抜群のYAMORIとのツインボーカルも、初のコラボと思えない親和性を感じた。
ギターも2本になったことで厚みが増し、個性がぶつかり合いながら上昇気流のような渦を巻き起こす。
画面越しにもイベントに対する熱量や思いの深さがひしひしと伝わり、ツーマンライブ「勝女 -カツジョ- 」のオープニングに相応しいステージとなった。
“ネガティブを肯定する”を体現し、感謝に溢れた30分

暗転したステージの中、ドラムのハイハットがビートを刻み、1曲目 “ 劣等缶チューハイ ” からパレットパレッツのステージがスタート。
ジャジーなドラムにうねるウォーキングベース、心地よく刻まれるギター、華を添えるキーボードが絡み合い、ただのガールズロックバンドではないという片鱗を魅せてくれる一曲だ。
曲が終わると間髪入れずにドラムカウントが鳴り響き、Vo.Tanakaの
「無観客配信ライブ「勝女 -カツジョ- 」、トップバッターのパレットパレッツです!本日はよろしくお願いします!無観客やからって全力のライブができひんわけじゃない!全力でライブ届けます!!」
という言葉から2曲目 “ ヘイトライアー ” へと続く。
サビで繰り返される「Yeah Yeah Oh Yeah!」というフレーズは、会場にいれば間違いなく拳を突き上げるであろうアッパーチューン。スラップが冴えるベースソロやショルダーの持ち味を生かしたキーボードソロによって緩急がついた絶妙な楽曲展開で、聴くものを魅了する。

「私たちの叫びを、嘆きを聴いてくれ!」
3曲目 “ 叫嘆謳 ” は捲し立てるように言葉の弾丸を浴びせ続けるサビが印象的で、ドラムソロも挟みつつ攻撃的なパレットパレッツを全面に押し出した一曲となっている。

次の曲に入る前、バンドが演奏に合わせてVo.Tanakaが語り出す。
「改めまして、あけましておめでとうございます。そして、おはようございます。こんにちは。こんばんは。パレットパレッツです!」
深々とお辞儀し、
「今日は無観客なもんでね、ワーとかウェーイとか言ってくれる温かい人たちが目の前にいない中なんですけど、画面越しで見てくれてる人たちが言ってくれてることを信じて喋らせてもらいます。」
無観客という異空間を楽しむかのようにMCは進む。
「実は新年一発目のライブなんですよ私たち。そしてバリバリ久しぶりのライブ、プラス、このメンバーになってから初めてのライブ、そして大尊敬してるYAMORIとのツーマンライブということで、めちゃくちゃ楽しみにしてきました!」

昨年ベースが脱退したことで、新たにサポートとしてころた。(@KoRoTa002)が加入して初めてのライブがこの日だった。
「ホンマはこの場にめっちゃ人がいて、配信になる予定じゃなかったけど、配信になったことが悪いことじゃなくて、2週間アーカイブも残るし、しかもアプリとかで家でゆっくり観れたりするわけじゃないですか。いいこともあると思うんですよ。」
逆境をも楽しもうとする彼女らしい思いが溢れる。
「最近この世の中、なにかやってみようと思ってもどうしても社会の流れでうまいこといかへんなってなることもあれば、これ絶対あかんやんって思ってたことがハネたりってのをいっぱい体感してるんですよ。その中で、やっぱりやりたいことはやる、やりたくないことはやらへん、それでどうなるかわからへん。そんな賭けみたいなことがいっぱいあるなって、そんなんを体感した中で作った新曲を聴いてください。“ gambler ”」
曲振りから始まった4曲目 “ gambler ” は、印象的な音色で跳ねるリズムを刻むキーボードが牽引する、ムーディーな雰囲気漂うナンバーだ。楽曲のイメージにピッタリの深い音色のギターソロでしっとりと会場を包み込む。

曲が終わり、暗転の中でベースが怪しげなメロディを響かせる中、Tanakaから
「最近ってね自分の人生設計が、考えてもなかったことで、あれ?こんなはずじゃなかったのにってめっちゃしんどい思いしてる人がいっぱいいると思うんです。当たり前にライブハウスに行けんくなった、当たり前に練習できひん、会いたい人に会えへんとかになって、みんなフラストレーションめっちゃ溜まってると思うんですよね。そんな中で人間って自分に余裕なくなったらめっちゃイライラするというか、人にあたっちゃうととこもあって、ネットとかで誹謗中傷が多くなっとるなって気がするんですよ。逆に誹謗中傷もしてへんのに、なんか発言しただけでみんなイライラしてるから噛みつかれるというか、自分の意見を言えない社会になりつつあるなって痛感してて。」
昨今、コロナの影響もあってSNSが吹き溜まりのようになり、誹謗中傷や身勝手な正義感を振りかざす人が増えていることを嘆く。
「でも、言われてる相手ってなんも思ってないわけないじゃないですか。聞き流すことや目を瞑ることはできても、無感情なわけなくて。で、そういうのを溜め込んで爆発しちゃう人がめっちゃおるなって思うんですよ。でもたまには爆発させてあげへんかったら、その人の恨みつらみはどこに行くんですか?って思うわけですよ。だから今日は爆発させてもええんちゃうかなって思って、バリバリ爆発させる曲、“ disrespect ” って曲を持ってきたんで、皆さんもね、胸の奥にあるイライラ、全部忘れましょう!」

熱い思いが溢れ出す曲振りからスタートした5曲目 “ disrespect ” 。ワウの効いたギターの音色によって不穏な雰囲気を作り出し全体を引っ張りながら流れ込むサビでは、それまで溜め込んださまざまな思いを爆発させる。繰り返させれる「Yeah Yeah!」というフレーズが観客のボルテージを画面越しにでも上げてしまう勢いを感じさせてくれた。
特に印象的なのは、楽曲中盤で入る語りの部分だ。
「別に自分たちがかっこいいとも思ってない、別に自分たちがいい人やなとも思ってない、別に聴いてくださいってお願いしてるわけでも否定も肯定もしてないのに、それやのに、あなたたちの人生の貴重な時間を私たちみたいなクソガキをDisる時間に使ってくださり、誠にありがとうございます。別にあなたたちに聴いてもらうために音楽をしているわけじゃないし、別にあなたたちに認めてもらうためにバンドやってるんじゃない。ここは私たちが叫ぶ場所やし、それをいいなって言ってくれる人たちだけのために歌ってる。肯定も期待もして要らんから、まあとりあえず見ててくださいよ」
わざわざ「嫌いだ」と伝えてくる人の意見には流されず、あえて謝辞を述べてリスペクトしつつも放たれる次の一言に並々ならぬ信念を感じさせてくれる。
「手のひら返す瞬間絶対見届けたるから」
これは音源でも同様の文言が収められており、筆者が初めて聴いたときは心を撃ち抜かれたのも記憶に新しい。
曲が終わり、「心の絶望に光を!!」という叫びから続く6曲目 “ Re:take action ” 。赤い照明をバックにステージ狭しと暴れ回るメンバーを見て、叫ばずにいられる人はいるのだろうか?ヘドバンも推奨のこの楽曲を会場で体感したら、パレットパレッツを忘れられなくなることは間違いない。
「ツーマンライブ企画して呼んでくれたYAMORI(BAND)の皆さん、そしてこうやって配信という形にはなったけど、ツーマンライブを開催する場を設けてくださった心斎橋somaの皆さん、本当にありがとうございます、そしてこのライブを見てくださってる方々、ほんとにありがとうございます。」
素直な感謝の気持ちが溢れ出す。
「さっきも言ったんですけど、めっちゃ久しぶりのライブで、去年はベースが突然脱退したり、コロナ禍ってのもあってうまいこと活動ができてなかったんですけど、だからこそYAMORIが企画してくれたツーマンライブは楽しみにしてたんです。でも緊急事態宣言ってのが出てしまって私たちもお客さんも全力でできるライブってなんなんやろうって考えたときに、延期にした方がいいんじゃないかなってよぎったこともありました。今の状況ってこれ(コロナ)がなかったらいつも通り有観客で、自分たちの思い通りのライブができてたと思うんです。けど、配信限定になったのって、めちゃくちゃピンチになってどうしようってなって突然変異して生まれた企画だし、だからこそ出会えた人たちだと思うんですね。」

「私たちは “ ネガティブを肯定するバンド ” ってよくMCで言わせてもらうんですけど、めっちゃ嫌なことがあったとか、過去にやらかしてしまって自分のことが嫌いとか、世間ではメンヘラって言われるような。そんな、人より心が傷つきやすい人のことをネガティブに捉えるんじゃなくて、だからこそ人の痛みがわかったりとか、そういうことがあったから学んだこと、得たものってあったと思うんですね。そういうことを、今回無観客でやろうって言ってくれたYAMORIがいてくれたから気づかせてもらえたのもすごくあって。」
当メディアの連載(https://musicloveits.com/rensai_palepale_root)でも綴られているが、人の痛みに誰よりも敏感なTanakaだからこそ言える内容が続く。
「それに今の状況と自分たちの伝えたいことが合ってるなって思って、これからネガティブなことがあったとしても、自分を嫌いな人がおったとしても、生きてるのは自分やし、その自分の人生の中で嫌なことがあったりしても、そこからなにかを得てやろう、なにかを生み出してやろうっていう気持ちでいてほしいし、私たちのバンドを愛してくれる人たちはそうやって強く生きてほしいので、いい人生を送って欲しいなって思って、長々しゃべらせてもらいました。」
激しいロックナンバーが魅力のパレットパレッツではあるが、その内容は痛みを共有できたり寄り添ってくれたりするものが多い。そうした楽曲にある背景を垣間見ることができるMCである。
「めっちゃ楽しみにしてたライブやけど、私たちは残り2曲です。次のYAMORI(BAND)に全力でバトンパスって言えるように暴れて帰るんで、聴いてください。ホンマ、今日はありがとうございました!」
しんみりしたMCの流れをぶち破る7曲目は “ 他不適合者 ” 。
激しいシャッフルビートで暴れる一曲。
不敵合上等てめえが何を言おうが言わまいが
他不適合者/パレットパレッツ
やることはひとつ ここで叫ぶだけ
てめえの人生 他人は引っ込んでろ
自分にひとつ ある信念だけ信じて進むだけ
このサビの歌詞からも感じ取れるように、周りの心ない言葉が世の中を覆う今にあって、自分たちのことを信じてやりたいことを突き通す強い信念を持ったバンドであることを、MCだけでなく曲でもしっかり表現しているところがパレットパレッツの強みと言える。
そして最後の曲 “ 自責HISTORY ” へと続く。
「過去に囚われてしまってるあなた、自分のことが嫌いなあなた、何事もうまくいかないあなた、そんな自分を好きになって解放してあげてください!私たちの気持ちが届きますように!」
イントロで叫んだTanakaの思いを引き継ぐように、バンドがひとつになって感情を爆発させる。激しさで押し込むのでなく、ちゃんと寄り添い届けるように歌い、演奏する姿は、歌詞のメッセージも合わさって多くの人の心の届くのではないだろうか。
バラード以外でこのような感情になることはとても珍しいと思わせてくれるこの楽曲は、彼女たちの表現力の高さを感じさせてくれる。
「パレットパレッツでした!ありがとうございました!」

こうしてツーマンライブのトップを飾った、パレットパレッツのステージは幕をおろす。
さまざまなことに翻弄されながらも信念を貫き、タッグを組んだYAMORI(BAND)との絆を感じさせてくれる素晴らしいライブだったと思う。
今後もパレットパレッツの活動から目を離せない。
SET LIST
<2021年1月31日/勝女 -カツジョ->
- 劣等缶チューハイ(MV:https://youtu.be/g4hKk6fPeO8)
- ヘイトライアー
- 叫嘆謳
- gambler
- disrespect
- Re:take action(MV:https://youtu.be/noq3Xd8Q3-k)
- 他不適合者(MV:https://youtu.be/f3GljipUCtA)
- 自責HISTORY(MV:https://youtu.be/ZLROIC6VGQw)
アーティスト情報
(Photo by パレットパレッツ / Text by 倉田航仁郎)