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【連載】パーティ日和/第22回

<毎週土曜日連載>




ニジゲンフリークス

僕が主催するイベントの中に「ニジゲンフリークス」というのがある。
読んで字の通り、2次元コンテンツのフリーク達の為のイベントだが、今日はこれを立ち上げた頃のことについて少し話したいと思う。

「出演者公募型アニソン中心遊び場イベント」と謳うこのイベントは2015年1月に始まった。サロンキティのブッカーとして空いている日程を自主企画で埋める、ということに孤軍奮闘していた頃だった。
そもそも東京からの出戻り、かつ全然有名でもないくせにいきなり名門サロンキティのブッカーとなった僕への風当たりはキツかった。元来の軽い性格も仇となり人として信用してもらえなかったし、今思えばだいぶキツめの陰口を叩かれたり言葉狩りにあったりしてやることなすこと全て裏目に出てばかりの日々が続き僕は心身ともに疲労困憊し、口数は減り笑うことも無くなっていた。

そもそもバンドの数も減りバンドのブッキングだけでスケジュールを埋めるなど不可能な状況であった上にそのバンド様がたにも嫌われ、すっかり自信も希望も失った僕はこれ以上名門サロンキティの名前を汚すのも嫌だし逃げるみたいで嫌ではあったがもう辞めよう、と本気で思い始めていた。最後に何か型破りなこと、自分が楽しいと思えることを思いっきりやってみてそれでダメなら気持ちを切り替えてこの街から消えてしまおう、どうせこんな嫌われ者のことなどすぐに忘れるさ……

そこで僕は考えた。

アニソンだ。

いいじゃないか、サロンキティで贅沢にアニメソングのカラオケイベント。コピーバンドも良いしダンスやDJなんでもやりたいことやったらいい。コスプレする人が来てくれたら華やかだろうな、司会進行が必要だ、フライヤーは可愛いイラストにしよう、だれか上手なイラストレーターを探そう……とにかく僕自身が面白いと思うことを思うまま描いていくとイベントの骨組みはすぐに完成した。

イメージは出来た。次は協力者探しだということで僕はまず当時地元で唯一開催していたアニソン系クラブイベント「ヲタスコ」の主催soni君に挨拶に行った。これまでの経験から難癖つけられやめとけとかいらんことするなとか言われるかもしれないなあ……と少し重たい気持ちを抱えてイベントに潜り込み突撃したのだけれど、soni君はびっくりするほど僕の話を聞いてくれた。内容は省略するがすごく前向きに協力すると約束してくれて、なおかつ力になってくれそうな人を紹介してくれて、そこからイベント製作はトントン拍子で進んだ。あの夜、何かが動き出した実感が確かにあった。soni君はエヴァンゲリオンの綾波レイのコスプレをしていた。すごいおじさんだと思った。

フライヤーとTwitterアカウントと応募窓口を作り公募開始するとすごい勢いで出演者が集まった。何が何だかわからないうちに出演枠はいっぱいになり、Twitterのタイムラインには #ニジフリ のハッシュタグが溢れた。僕も負けじと盛り上げるためにフライヤーを配り歩いたりタイムラインで出演者と絡んだりした。その頃になるといろんなところのサロンキティ関係者様から「お前なんでもやって良いんやないんぞ」とか「他にやらないかんことあるやろが」など激励の言葉を遠まきにいただいたがもう耳に入らなかった。

第一回のフライヤー

(もうこれで最後だし許しておくれ……)と思いながらイベント当日。

慣れない大所帯のステージ進行にバタバタしながらなんとかリハーサルを終え、受付周りの準備をしていると外に信じられないくらいの人だかりが出来ていた。慌てて整理に飛び出し、前倒しで入場開始してイベントはスタートした。

結論から言うと、すごく感動した。これは出演者全員素人である。バンドも別に上手くないし場数も踏んでないのでぎこちない人が多い。だけど衣装に着替え、ステージ袖でひざを震わせながら司会者の言葉を待って、思い切ってステージに飛び出し5分や10分のステージを全力でやって帰ってくるときの笑顔はなんとも言えない美しさがあった。出演者も来場者もみんなが楽しんでいる。やがて大盛り上がりのうちに全てのステージが終了し、片付けなどに駆け回っていると出演者やお客様たちから口々に「こんな楽しいイベント作ってくれてありがとう」「ニジフリ最高!」「次はいつ開催ですか?絶対次も出ます!」と嬉しい言葉をいただき、僕はうっかり泣きそうになってしまった。この仕事をやっていて感謝されることなんてそれまでほとんど無かったからだ。

こんな景色を早くまた見たい

そして僕はサロンキティを辞めるキッカケを失い、今まで続けている。面白い物なんてインターネットにいくらでも転がっているこのご時世、わざわざリアルで大勢集まって遊ぶこの楽しさが余計に貴重なものになっているのではないだろうか。
いくつかの共通する属性、キーワードで繋がった人々が自分をさらけ出せる会場作りを僕はこれからも模索し続けていきたい。

こうやって僕の看板イベント「ニジゲンフリークス」は始まった。色々あって2020年はほとんど開催できなかったが、火を絶やさぬよう小さく小さく努力は重ねてきた。そしてこの1月、小型版ではあるけれど久しぶりの開催を目前にしている。第32回、正直こんなに続くとは思ってもいなかったが人も入れ替わりながら続いてきたこのコミュニティ、これからも大事に大事に育てていきたいと思っている。

最新第32回のフライヤー

ライブハウス『松山サロンキティ』店長/武花 正太

プロフィール

武花 正太

愛媛県松山市のライブハウス

松山サロンキティ』店長

Twitter:@take87syouta

音楽、アニメ、旅、鉄道、廃墟、階段など、引っ掛かりを覚えた物を節操なく取り込んだボーダーレスなライフスタイルは国内外を問わず広く呆れられている。

自身のバンド「MILDS」では作詞作曲、歌、ギター、ピアノを雰囲気でこなし、さまざまな現場でベースを弾く。

DJとしても活動しており、主な得物はなんとアニソンである。

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