1. HOME
  2. ブログ
  3. 【連載】パーティ日和/第20回

【連載】パーティ日和/第20回

<毎週土曜日連載>




400万円の使い道

ソーシャル・ネットワーク・ゲームというのをご存知だろうか。そう、「ソシャゲ」というやつ。
ぼくはこれにどっぷりハマって大量のお金を注ぎ込んだことがある。今日はその話をしたいと思う。

小さい頃からゲームは好きだった。特に小中学生の頃はシューティングゲームに傾倒していて、自転車で30分以上かかる市内のゲームセンターへ行き大学生達のプレイを後ろから見て技を盗んだりとそれはもう大変なハマりようであった。
地元の本屋に置いてあった筐体のハイスコアランキングを自分のもので埋めたい、全面クリアしてみたい。資金も乏しくコンティニューなんてできないから必死だった。
中学生ももう終わりに近づいた頃、「対戦格闘ゲーム」の大ブームがやってきた。ゲームセンターには新規客が大挙して押し寄せ、その中にはあまり得意ではないタイプのクラスメイトも居たりして、なんだか落ち着かない場所になってしまった。別にゲームが嫌いになったわけではないのだけれど、なんとなく僕はゲームセンターに寄り付かなくなっていったのだった。

時はめちゃくちゃ流れ2011年。僕は東京に居た。
それまで生活の大部分を犠牲にしてまでやっていたバンドが解散し暮らしにポッカリ穴が空いた時期があった。バンド無し、彼女無し、夢無し。それまでの僕は夢と日々紡ぐ音楽が生き甲斐だった。貧乏しても、寝る時間を削っても全然辛くなかった。だけどそれらをひとたび失ってしまえば、僕の元に残ったのは時間と少しのお金の余裕。皮肉なものである。

お金の使い方と言えば音楽と酒くらいしか思いつかない当時の僕は非常に不安定だった。職場が神田神保町だったこともあって秋葉原へよく行くようになった。アニメを視聴する本数が増え、そっち方面の情報がにわかに流入するようになった。そして出会ったのである、悪魔運命のゲームと。
「アイドルマスターシンデレラガールズ」。Cygamesが開発・運営するMobage上のソーシャル・ネットワーク・ゲームである。
誤解を恐れず言ってしまうと、ゲーム性などほとんど無い、ポチポチボタンをタップしていくだけのゲームだ。カードゲームっぽいシステムになっているんだけどそれも浅く戦術のようなものはほとんど存在しない。ゲームのシステムを理解してしまえばあとはお金と時間を費やすだけの簡単な仕事であった。

有名な「ガチャ」と呼ばれる集金システムもしっかり実装されており、一時「景品表示法に抵触する可能性がある」と規制対象にまでなった「コンプリートガチャ騒動」はこのゲームも例外ではなかった。

当時ソーシャルゲームも黎明期を過ぎたあたりで社会にも認知されその問題点も議論され始めていた頃だったと思う。僕自身も「ただのデータにお金をつぎ込むなんて……」「お金を捨てているような物」「もっと自分にプラスになることにお金を使ったほうがいいのでは?」といろんな人から言われた。高円寺のパチンコ屋に朝一から並んで有り金スっては「金貸してくれぇ……」と言ってくるような奴にまで「お前お金の使い方考えたほうが良いぞ」と言われる始末。

こんな言われようの中どうして僕はこのゲームを辞めなかったのか。それは簡単だ、楽しかったからである。

攻略、という程のものでも無いがポイント最高効率を叩き出すプレイ方法の考察やそれを割り出す為のデータベースなどを作成したり、単純に自分の担当するアイドルの人気投票の為同担(おなじアイドルを担当する人々)と協力して他のユーザーに一票をお願いしに行ったりと案外楽しみは尽きなかった。やがてこのゲームとも言えないコンテンツの中で僕はある程度の友人とステータスを持つようになっていった。

そうやってゲームにのめり込みもう随分経った頃、チーム対抗戦においてランカーの方々のチームで一緒に戦う機会を頂いた。ランカー中でも最高峰、400万人中1-2桁順位常連の方々である。僕は気合を入れてアイテムを用意し、効率よくポイントを稼げるよう編成を見直したりパワーアップを図ったりと準備万端で臨んだ。
そのチーム対抗戦、「プロダクションマッチフェスティバル」は本当に楽しかった。
普通に買うと一本100円のアイテムが秒間2.5個くらいの速度で減っていく。高ランク帯の獲得ポイント効率は平地の比ではなく、あっという間に合計ポイントの桁が天井を突破してはみ出した。
チャットで連絡を取りながら、全員が全弾撃ち尽くすような豪気なバトルは続き、やがて僕も約7000個のアイテムを使いきり、イベントは幕を閉じた。

当時のスクリーンショットが残っていた。この後チーム「アサヒビール工場」は全プロダクション1位になる。

優勝に沸くチャット欄

対抗戦の成績は見事1位、優勝を祝して後日オフ会というか打ち上げが開催される、とのことだったので僕も参加した。会ってみたかったのだ、友人にあれこれ言われ白い目で見られる「ソーシャルゲーム」のトップランカー達と。
会場である御茶ノ水のビアホールへ行き、「FITT(ぼくのハンドルネーム)です」と言いながら見渡すとそこには驚くほど普通の、善良な人たちがにこやかに集まっていた。僕は夢から覚めたような、救われたような気持ちになり、大層気持ちよくビールを飲んだ。なんだ、これで良かったんだ、と同士を眺め語らい讃えあって別れた。

もちろん僕だってこのゲームに対して疑問がなかったわけではない。「一体僕は何にお金を払っているんだろう」と常に思っていた。毎月毎月ウン万円がゲーム内通貨に変わり消費されていく。だかしかしそれは狂気でも盲目でもなく、暖かくて鮮やかなコミュニケーションだった。好きなものを好きと言える場所。音楽を通じて僕が求めていたものが、こんなところにも有った。

久しぶりにログインした

いつしかこのゲームとも疎遠になってしまったがサービスはまだ続いている。このままゆるやかにサービスが続くのかやがて終了を迎えるのかわからないが、最後の瞬間は復帰して彼らと別れの挨拶もして行こう、そんな気持ちでコンテンツの行く末を見守っている。

ライブハウス『松山サロンキティ』店長/武花 正太

プロフィール

武花 正太

愛媛県松山市のライブハウス

松山サロンキティ』店長

Twitter:@take87syouta

音楽、アニメ、旅、鉄道、廃墟、階段など、引っ掛かりを覚えた物を節操なく取り込んだボーダーレスなライフスタイルは国内外を問わず広く呆れられている。

自身のバンド「MILDS」では作詞作曲、歌、ギター、ピアノを雰囲気でこなし、さまざまな現場でベースを弾く。

DJとしても活動しており、主な得物はなんとアニソンである。

過去の連載記事




関連記事