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【インタビュー・後編】稲元 達哉/表現者として生きていく

京都を拠点に活動するシンガーソングライター、稲元 達哉

シンガーソングライターとしてひとりで活動する中、さまざまな経験をしてきた彼のルーツや音楽への考え方、今後のことについてインタビューした。

ロングインタビューのため、前後編に分けてお届けする、今回はその後編。




今いる場所が夢の舞台

ーー稲元さんの夢の舞台ってありますか?

稲元:夢の舞台、っていうのであれば、今現状で夢の舞台ではあると思うんですよね。

ーー今の状態が?

稲元:そう、ありがたいことに、ギャラをもらってステージに立たせてもらうこともちょくちょく出てきて。お客さんも入ってくれてたりとか。その状況が。そりゃ「大阪城ホール1万2~3千人埋めました!」ってそれは夢やと思うんですけど、それだけがって言うと違うんですよね。こうやってステージに立って歌わせてもらっている現状って、夢に近いことしているなって思ってて。僕は今、音楽っていう形でさせてもらってますけど、表現者であれば、あまり形はこだわらないというか。例えば、僕がNSCに入ってたら普通にお笑いやってたりとか。本当に、形態は何でもいいんですよ。

ーーとにかく自分を表現したいと?

稲元:そうですね。その舞台があれば、そこがたぶん僕にとって夢の舞台なんで。

ーーそうなってくると、目指すべき姿みたいなところっていうのはあまり具体的には無い感じですか?

稲元:そうですね、だから僕にとって夢っていうものってあまり無くて。全部現実世界の中で起こるものだと思ってるんで。

ーーなるほど。安直に「メジャーデビューしたい」とか、「何万枚売りたい」とか、「武道館でやりたい」とかじゃなくて。

稲元:うーん。もちろん、そういう気持ちはあるけれど。目標ではなくて通過点みたいな?だからそこをあえて目指してはないって感じですかね。そこをゴールにしていると、なんか終わっちゃいそうで(笑)。

ーーあくまで表現者として生きていく、その姿を突き詰めるみたいな。

稲元:そうですそうです。それが最終的にどこに到達してるのかっていうのは、自分でもまだ分かってない。だから今は音楽をしっかりやって、一旦ゴールしてから次を考えるっていう考え方ですね。以前は音楽しか見てなかったんですけど、活動休止期間に一度音楽から離れてみて、本当に吸収する部分がめちゃくちゃ多くて。それがあったから、エンターテイメントっていうものを広く見えるようになりました。人が楽しむ方法はいっぱいある。そう思ったときに、勝手に自分で縛っちゃうのは良くないなと。

ーー確かに、「音楽で売れるぞー!」ってなったら、そればっかりになっちゃうわけですよね。

稲元:もちろん、突き詰めていくこと自体はむちゃくちゃ良いことだと思うんですけど、ただ盲目になることはまた別で。それって音楽に取り入れることも絶対できるはずなので。

の「鮮度」を大切にしたい

ーーそうした目的とか行動理念みたいなものとかって、歌詞や曲に反映されてるんですか?

稲元:僕は基本的にフィクションを書くのが苦手なんで、思ったことしか書けない。だから、そのときは曲の鮮度みたいなのが大事ですね。もう僕が持ってない感情、むちゃくちゃ前に書いた曲とかがあると、途端に歌えなくなったり。

ーー気が乗らないってことですね。気持ちが入らない。

稲元:そうですね。歌い手としては結構痛いんですけど(笑)。

ーーでは、ずっとこの曲やってるみたいなのじゃないんですね。

稲元:そうですね、自分の最高点をそこに置いてるみたいで嫌じゃないですか(笑)。更新できないというか、超えられないというか。僕の好きな10-FEETってバンドもベストアルバムを出してるんですけど、本人たちはベストアルバム出したくなかったって言ってるんですね。たぶん理由は同じなんですよ。誰かが決めたベストではあるかもしれない。だけど、自分らであえてテッペン決めちゃうと、そっから上には行けないみたいで。

https://youtu.be/JgMuiN54_Gk

ーーじゃあずっと稲元さんを追ってるファンからすると、全然聴かなくなった曲がいっぱいあるってことですよね。

稲元:いっぱいありますね。何年前のライブで聴いたあの曲が好きとか言われても(笑)。歌のスキルとか、演奏スキルみたいなのは今の方がはるかに良かったりするんですけど。

ーーそれが曲の持ってる本質的な「鮮度」ってところなんですかね。

稲元:そうですね。だから今作ってる曲が、今僕が一番聴いて欲しい曲になるんです。だからって過去の曲がダメとか言うつもりは無いんですよ。そのときは自分の最高を出してるし。ただ、僕はそれをどんどん更新していきたいんです。それに僕の書いてる歌詞とか曲って、多分上手いだけの人が歌わないほうがいいって曲が多いんですよ。僕の曲は気持ちが乗らないと、さしてメロディーが激しく動くとか、気持ちいいメロディーがいっぱいあるわけでもないので。合唱みたいに「ドレミファソラシドを正確に歌いましょう」っていう曲というよりかは、本当に人が人間臭く見えるように歌うとか、僕が影響されてきたのがルーツになってこそってところがあって。

ーーボカロじゃ成立しない感じですね。

稲元:ですね。人が人に見えるように歌わないと。機械が歌っても、たぶん良くはならないっていう曲が、僕は多いです。

ーーそうした曲は、どのようにして作っていくのでしょうか?

稲元:書きたいテーマみたいなのはずっと頭の中にあって、それに対して曲っていうのが付いてきたときに書く感じです。例えば「今こういう世の中で悔しいな」って思いがあったら、その「悔しい」っていう気持ちだけをずっと置いておいて、それに合ったメロディーがパッと浮かんだときに書くみたいな。

ーーメロディはギター弾いてるときだけじゃなくて、お風呂に浸かってるときみたいな日常の中でも出てくるんでしょうか?

稲元:そうです。それこそ会社員してたときとかは、そんなのがむちゃくちゃ多かったですね。朝、スーパーで八百屋さんをしてて、冷蔵庫から商品出そうと入ったときに思いついたから、冷蔵庫で携帯ひっぱりだして録っておくみたいな。

ーーなるほど。作ろうと思って作るわけじゃなくて、自分の中に断片をとどめておく。それを大事にしてるみたいな。あくまでも、自然発生的な感じ。

稲元:はい。ちゃんと時間を取って、ちゃんと自分なりに考えて作るようにしています。同じ京都でシンガーソングライターしてるhideyuki HIRAO@hideyuki_0924)ってやつがいまして。彼にも曲を書いて渡したんです。GATTACAのブッキングの方が彼に、「違う人が書いた曲を歌ってみてもいいんじゃない?」って言ったらしいんですよ。それで、僕に言ってきた。そのとき2人で飲んでたんですけど、それも30分くらいでメロディー思いついたんで、こんな感じでどう? って伝えてからちゃんと練って、作って渡しました。

https://youtu.be/uEt38rlcia0

セルフマネジメントの可能性

ーー今はフリーで活動されてますが、インディーズレーベルに所属する計画などはあるのでしょうか?

稲元:そうですねー。インディーズレーベル自体ができることって、たぶんですけど、僕が頑張って誰かの力を借りればできることが多いんですよね。メジャーレーベルの何がでかいって、タイアップとかがちゃんと優先的に下りてくるところだと思うんです。インディーズってそうそう下りてこないんですよ(笑)。タイアップとか広告とかね。そういうところを持ってくれるからこそ、メジャーアーティストでも、月収10万円も満たない人たちでも続けていけるんですよね。ちゃんとサポートしてくれるんで。インディーズレーベルって、活動サポートはあるんですけど、ただやっぱりもっと上のステップに行くための動きというか。資金力も正直違うので。だったら、今は属さなくてもいいのかなって。僕のやりたいこととかを踏まえた上で、「それをやりたいね」って言ってくれたら入るのかもしれないけど。僕、自分で動いてしまっている分がすごい多いんで、逆にそれが制約になりそうな気がするんです。

ーーそうしてセルフマネジメントみたいに動くのって、やっぱり楽しいですか?

稲元:楽しいですね。すごいキツイ言い方すれば、インディーズレーベルって同列の繋がりなんですよ。だからもう1個階段を上がるっていうことが難しい。上に対してアプローチできる場所が大事なのかなって思ってます。だから自主レーベルとかの方が、アポ取るのとかも自由が効くんですよ。

ーーインディーズレーベルに所属するメリットを感じていないということですね。

稲元:「全国流通をしてハクが欲しい」っていうんやったら全然いいと思うんですよ。それを自分でやるのすごい大変なんで。そういう目的で所属するのはメリット大きいと思いますけど、その「全国流通」が僕にとってあまり意味が無いことなんで。今だってこれだけサブスクがあって、インストアライブとかできたりもするし。これだけフリーな状態で聴ける音楽がある中で、CDを手にする人って自分のライブに来るお客さんくらいだと思ってるから。

ーーなるほど。ライブに来られない遠方の人にも発送してしまえばいいんですもんね。連絡くれたら送るよって。

稲元:そうです、郵送できちゃうんで。通販も自分で簡単にできちゃうし。もし「ライブ見たいよー」って言ってもらえたら、Spotifyの機能を活用して求められてるところに出向いてライブするってこともできるんですよね。

ーーSpotifyでそんなことわかるんですね!

稲元:そうなんです。Spotifyにはアーティスト用のアプリがあって、自分のアップした曲がどの地域でどのくらい聴かれてるかって分かるんですよ。勝手にマーケット調査してくれるからどの地域で聴かれてて、その人が男性なのか女性なのかとかまでわかっちゃう。例えば、京都で全然集客できないって思ったときにそのアプリ見て、「あれ、なんかよくわからんけど福岡でめちゃめちゃ聴かれてるやん!」ってなったら、福岡に行ってライブしたらその人たちに届けられるわけじゃないですか。そんなことができる時代なんです。

ーーそうなってくると、確かに全国流通のメリットがハク以外に見えなくなるのは理解できますね。後で付いてくると思えば、あえて初めから全国流通を目指さなくても。

稲元:そうですね。それくらいできるようになってれば、「うちで全国流通しませんか?」っていう人はたぶん出てくるだろうし。

ーーでは今後は、サブスクとかも力を入れていく感じですね!

稲元:そうですね。今サブスクで “ Twilight ” って曲を出してて、MVもYouTubeで公開されました。

稲元:これからもこうしてひとつずつ、皆さんの協力を得ながら好きな音楽を自由に広めていきたいなと思っています。

ーー今後が楽しみですね!本日はありがとうございました!

インタビュー前編はこちら

アーティスト情報

(Photo & Interview by 倉田航仁郎 / Text by ユザワ屋




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