【インタビュー】Curiosity./ネット発サウンドを自分たちの音楽へ昇華する……次世代ポップロックに垣間見える互いへの信頼

奈良を拠点として現在関西を中心に活動しているCuriosity.(キュリオシティ)。2019年末から現在の4人での活動となって以来、初となる新曲 “ ハル ” が10月31日にリリースとなった。今回ミュージックラビッツではバンド初となるメディア取材をリモートにて敢行。彼らにバンドについての様々な秘話や、新曲 “ ハル ” の制作エピソードを語ってもらった。
バンドの結成、メンバーの関係性とは?Curiosity.の歴史を紐解く

――本日はどうぞよろしくお願い致します!まずは基本的なところになるんですが、バンドの結成経緯などうかがえればと。皆さんの中で、バンドの初期メンバーになるのは……syoさんだけなんですよね?
syo (Gt.):そうですね。このバンドの最初の母体は前任のドラムと僕の2人だけです。
――その方とショウさんの接点は何だったんですか?
syo:高校が同じでした。そもそも全然話したこともなかったんですけど……その子がBUMP OF CHICKENが好きって聞いて。んで、僕もバンプ好きで、一度ライブに行ったときメンバーと握手をしたんですよ。それをネタに話しかけたのをきっかけに仲良くなって、一緒にバンドやろうよ、って。
――なるほど。その後、コトさんが加入された形なんですね。
コト(Vo./Gt.):はい。元々僕はsyoと地元が一緒で、家もめちゃくちゃ近いんですけど。
syo:幼馴染ですね。
コト:ですね。で、当時のドラムを彼に紹介してもらって、Curiosity.っていうバンドやってるんですけど入りませんか、って誘ってもらって、やります、って。
――そしてその翌年、2018年におたなさんが加入された、と。おたなさんとお2人の繋がりはそもそもどんな形だったんです?
おたな(Ba.):全くの赤の他人です(笑)。僕は何かバンドやりたいな~と思ってた中でCuriosity.のベース募集をネットで見つけて。貼ってた音源を聴いて、自分の好きな感じの音楽だったんで「やってみよう!」と思って連絡しました。
――そうなんですね!なるほどです。で、そのあと前任のドラムの方が脱退されて。まっしーさんが加入した形だと思うんですけど……。
コト:まっしーは……ある日syoが「山ん中で穴掘ってたら出てきた」って連れてきました(笑)。
おたな:こいつドラム出来そうな見た目してる!よし、叩かそ!って(笑)。
syo:え、違う違う。コトが禁忌の人体錬成に手ぇ出して生み出した生物(笑)。
まっしー(Dr.):そうそう、だから顔こんなんなってんねん(笑)。
コト:そうやったっけ?そしたらそれでええわ(笑)。
まっしー:なげやりやな(笑)。
――謎が多いですね……(笑)。
バンド曲に初音ミクを用いる理由とは?メンバーの音楽ルーツにも迫る

――そのような形で今のメンバーが集まったというわけですね。そうすると、今楽曲をメインで作っているのは……。
コト:僕ですね。僕が家でデモ作って、ベースとドラムはそれぞれアレンジしてね、って2人に投げてます。歌詞も僕が書いてます。
――なるほど。あと今Curiosity.って1曲につきバンド歌唱版とVOCALOIDの初音ミク歌唱版、2つの動画をUPしていますよね。このやり方ってバンドだとなかなか見ない形だと思うんですが、これはどういった意図があってのものなんでしょうか。
コト:大元でいくと、デモの仮歌を入れるために僕が初音ミクを買ったんですけど。実際ミクに歌わせた音源を聴いたとき、syoとこれもUPしていいかも、っていう話になったんですよね。そういうのを聴く人たちにも聴いてもらう、っていう狙いもあって。
syo:せっかく曲作ったなら大勢に聴いてもらわんとな、と思ってて。上げてみても損はないなって思ってUPしてたのを、今も続けてる感じです。
――元々はデモ用のものを、今はボカロを聴く人へのアプローチにも使っている、ということですね。ということは以前からsyoさんやコトさんはボカロがお好きだったんです?
コト:そうですね。Neruさんとか……『ロストワンの号哭』とかよく聴いてましたよ。
syo:僕も好きでしたね。ハチさんとか古川本舗さんとか…それこそボカロはずっと聴いてきたので。supercellさんが活躍してた頃とかから。
――もう本当に初期から、という感じですね。じゃあそれがバンドの音楽性にも影響のある形ですよね。
コト:そうですね……邦ロックとかよりはボカロの方が影響を受けてると思うんですよ、僕は。
syo:へー。初めて聞いた(笑)。
コト:(笑)。wowakaさんの曲とか凄く好きなので、影響は大きいと思います。

――ありがとうございます。syoさん、コトさんのバックグラウンドはボカロが大きいということなんですが……おたなさんやまっしーさんのルーツはどういったものなんでしょう?
おたな:僕は中学生の頃から9mm Parabellum Bulletを狂ったようにずっと聴いてて(笑)。なので、このバンドの曲作りにもたまに関わるんですけど、そのときはリフとかコード、あと音作りとかすごい9mmを意識して作ってますね。
まっしー:僕は親の影響もあって、5~6歳の頃からSlipknotとか、一番影響受けたのはSystem of a Down。あとLinkin Parkとかも聴いてて、そこから大きくなってからはかなりいろいろ聴いてきましたね。でも根っこにあるのはその辺りかな。
――へー!Curiosity.の感じからすると意外なラインナップです。
まっしー:まあでも爽やか系な音楽も結構好きなんで(笑)。flumpoolとかRADWIMPSとか。あとはバンプとか、最近だとKANA-BOONとかも聴きますよ。
syo:マジで?(笑)。
まっしー:おい誰や今何か言うたん(笑)。最近メンバーにも「お前の口からそんなん出るとは思わんかったわ」って言われましたけど(笑)。
――メンバーからも驚きの声が出ていると(笑)。
まっしー:爽やかな音楽、聴きますし好きですよ(笑)。もちろん好き嫌いはありますけど……まあその中でもぶっちゃけうちのメンバーが作る曲が好き、っていう話かな。うちのボーカルの歌声、めっちゃええので(笑)。
コト:(笑)。
PVも初の自主製作!新曲 “ ハル ” の制作秘話とは
――それではここからは、10月31日にリリースした新曲 “ ハル ” についてうかがえればと思うんですが。元々この曲の制作はいつ頃から行っていたんですか?
syo:そもそものデモ版(初音ミク版)は……去年の残暑終わったぐらいにはあったかな。
コト:そやね。ただ当時は前任のドラムが抜けて、まだまっしーも入ってなくて。で、そのあと4人になってからバンドでの演奏にも着手して、本来は6月くらいにはあげるつもりだったんですが。コロナで出鼻くじかれちゃって、結局今になった、という感じですね。
――なるほど。今回楽曲のPVもかなり気合いが入ったものになってますよね。
コト:そうですね。今までは何度かsyoの描いた絵を使ったり、外の絵師さんに依頼してました。もちろん実写PVもあるけど、実写PVの自主製作をしたのは今回が初めてです。
syo:バンドの超初期の頃は元々僕がPVを作ったりもしてたんですよ。それもあって映像制作の心得は多少あったので、今回実写PVの映像ディレクションも挑戦したいと思って。知り合いのカメラマンに撮影をしてもらって、僕が編集した、って感じですね。

――あと、この楽曲についてなんですが……曲を作るにあたってのテーマやメッセージは、どのような内容から来ているんでしょうか。
コト:そうですね、この曲実は元々タイトルが “ ハル ” じゃなくて “ 晴れ ” っていう曲で。過去のわだかまりが溶けて晴れやかな気持ちになる、っていうテーマだったんですよ。けどデモをメンバーに渡したときに、おたなが季節の春を感じるって言ってくれて。で、季節の春と「晴る」のダブルミーニングで “ ハル ” にしよう、っていう提案があって、それお洒落で格好ええな、と思って “ ハル ” になりました。
――なるほど。そこのテーマを持ってきた理由はどういったところからなんです?
コト:この曲を作った当時、僕の働いてる職場クソみたいな上司やな、と思った人がいたんですよね(笑)。でも後々僕が仕事できるようになってきた中で「あ、だから僕に厳しかったんや」っていうふうに、その上司の言葉の意味が分かってきたことが結構あったんです。
――あとになって本当のことに気づく、というやつですね。
コト:ですね。あと僕映画の『ホーム・アローン』シリーズとか好きなんですけど。あの作品ってよく「近所で噂のヤバいおじさん・おばさん」みたいなの出るじゃないですか。でもピンチになったら助けてくれる、っていう存在のキャラクター。そういうシーンも思い浮かべて作りましたね。
――そんなテーマの曲なんですね。そんな “ ハル ” ですが、視聴したリスナーさんや周りの方からの反応はいかがですか?
おたな:今自主で出してる前の音源と比べて聴きごたえが増した、っていう声をよく貰いますね。僕自身もこの曲から新しくバッカスのジャズべを使うようになったんですが。こっちの方が硬派でまとまりのある音になったんで、そういった部分も出てるかなあと思います。
まっしー:僕は……自分こういうタイプのドラムも叩けるんや、っていう新しい発見がありましたね。以前までは激しいジャンルが多かったので、正直加入したときは自分のドラム浮かんかな?って心配だったんですけど。このPVを見てちょっとずつ馴染めてきたかな、と思って嬉しかったです。
――ふふふ(笑)。コトさん、syoさんはいかがでしょう?
コト:そうですね……今回実はこの曲、初めて生ドラムの音を使ってるんです。エンジニアさんも新しい方にお願いしてて、今までで一番バンドらしい音源が作れたかな、と。いいものができたかな、と思いますね。
syo:僕の周りも思ったより反響よかったですね。PV撮影のときも、撮影スタジオが思ったより狭くて、あまり映える雰囲気じゃなくて……。これ大丈夫かな?と思うことも結構多かったんですが(笑)。まあでもなんとかなりましたね、カメラマンさんのおかげもあります(笑)。

――ありがとうございました(笑)。そうしたら最後に、今後のCuriosity.の活動はどのようなご予定ですか?
コト:一旦12月に3本ライブが決まってます。4日(金)に十三のスタジオ246JUSO、12日(土)に246ライブハウスGABU、18日(金)に東大阪Live House Kiruna、ですね。
――久しぶりに結構がっつりライブで動く感じです?
コト:9月末ぶりぐらいですね。コロナ前は月2本とかコンスタントにライブしてたんで。
――そうなると確かに久しぶりですね。今後またライブも増やされるとは思うんですけど、もっと先の話、バンドとしてのこれからの目標とか展望……考えていることはありますか?
syo:そうですね……これは僕自身の話にもなるんですが。今回新曲のPV撮影で結構手ごたえを実感できたので、PV撮って曲をリリースするペースを上げたいですね。ほぼ自分達だけでできる体制が整ったので、バンバンUPしていきたいです。
コト:僕は……ライブの本数をもっと増やしたいのと、もっと曲も書いていきたいですね。2020年はコロナもあって気分的に落ち込んじゃって……全然曲が書けなかったんですよ。
syo:あ、そうなんや。
コト:仕事でもいろいろあって、その中で家出るな、みたいになっちゃって……萎えたね(笑)。
まっしー:タイミングが俺といっしょやな(笑)。

――まっしーさんもそうだったんですか?
まっしー:ぐったりしてましたね。加入した後にもいろいろあったんで。これからでいくと……まあまずは今のバンドに貢献できるようになれればな、と。ぶっちゃけメンバーの中で一番なにもしてないの俺ですからね。
コト:いやいや……。
syo:十分貢献してますよ(笑)。
まっしー:マジでなんもしてないよ(笑)。作曲もしてないし、動画も撮れんし、表現力豊かなベースもおるし。必要か否で言うたら……昔の学校指定のジャージの裾にあったゴム紐みたいな、あれぐらいの立ち位置(笑)。
syo:全然そんなことないですよ。全然貢献してるから、大丈夫です(笑)。
――とのことですよ?(笑)
まっしー:ほんまいいメンバーに恵まれてますね(笑)。だからこそもっと貢献したいなって思いますね。大事にしたい奴らです。ドラムの技術もそうやし……金銭管理とか、単純に金銭面も助け合えたら(笑)。俺が一番年長ですし、そういうとこでもサポートしたいと思って……あっ。
――(この瞬間まっしーの部屋の電気が突然消える、一同爆笑)
syo:ええよええよ(笑)。そういうオチ俺好きよ(笑)。
まっしー:今めっちゃいいこと言うてたのにな……(笑)。まあええか、そんな感じです(笑)。
――いいお話を聞けました、ありがとうございます(笑)。最後におたなさん、いかがですか?
おたな:そうですね、ライブを増やすのもそうなんですけど……。12月のライブから、僕が作った曲もやるようになったんですよ。なのでそれを機に僕の曲もどんどん出せたらな、と思います。コトだけ曲書いてても大変かな、と思うし、バンドの曲の雰囲気も少し暗めとかダークな雰囲気とか、そっちも増やしていきたいな、と。
――おたなさんの関わりでバンドの表現の幅を増やせたら、ということですね。今回のインタビューを通して、皆さん仲が良いというか。お互いへの思いやりがすごく伝わってきました。
まっしー:みんないいヤツなんでね(笑)。
――ふふふ(笑)素敵なお話をありがとうございました!
アーティスト情報
(Photo by Curiosity. / Interview & Text by 曽我美なつめ)