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【連載】ファイアーループ足立のライブハウスなんかやめてやる!!/第15回

<毎週日曜日連載>

ライブはもっと音がいいはず理論・共鳴編

おはようございます。ファイアーループの足立です。

今回もグルーヴについてお話しようと思います。PAが考えたグルーヴのお話です。

先週、「グルーヴには2つの不確定要素がある」って書きました。ええ覚えてますよ、正確にはおぼろげに覚えてました。で、今「なんの話をしようと思ってたんだっけ」ってなってる。まずいですね。現在43歳、まだまだ痴呆は遠いと信じたい!そうそう、不確定要素。スタジオでみっちり練習して、あーでもないこうでもないと練りに練って作ったグルーヴがライブハウスで通用しない。これには「ライブハウスにありがちな不確定要素があるから」という1つ目が「会場や気候、お客さんの入りなどによって各帯域の立ち上がり・立ち下がりの早さが変わるから」というものでした。

この対策が、毎度おなじみ「諦めよう」だったのは申し訳ないのですが、諦めるばっかりじゃもちろんダメです。その日、その時の自分の音にしっかり向き合い、メンバーの音や演奏に耳を傾け、その日の「いちばんいい演奏」をその場で探し当てるということで対応していきましょう。あれ、前回こんなこと言ったっけ?まぁまぁ、ニュアンス的には同じこと言ってたんじゃないかな。なんせ同じ人間が書いてますからね、たぶん大丈夫です。

今回お話しすることも最後は「諦めよう」だったり「ちゃんと音を聴きましょう」ということに着地すると思いますが、そこは諦めずに読んでいただきたい。「共鳴」のお話です。

例えば僕らがベースを弾いた時、この音はすごくドラムセットに共鳴しています。ギターを弾いてもその音はドラムに共鳴していますし、もっと言えばベースの音はギターのボディにも共鳴しています。逆もまた然り。全ての音は、全ての楽器に共鳴しています。ライブハウスではアンプやドラムセットにマイクを立てて、スピーカーで大きな音にして客席に届けますよね。あの「スピーカーから出る音」これももちろん全ての楽器に共鳴しています。

この共鳴は、会場の音響特性以上に予測不能です。とくにドラムセットなんかはチューニングやヘッド(皮)のコンディションなんかでも共鳴具合が変わりますから大変です。ドラムセットのチューニングに正解なんてないし、叩いているうちにどんどん変わっていきますから「完璧にいつもと同じ」なんて不可能なんです。また「諦めよう」という話に近づいていますね!いや違います。今回は「諦めよう」ではなく「受け入れよう」と言わせてください。それがイヤだから俺はエレドラでやるぜ!って?OK、あなたは相関関係がよくわかってるみたいだから全く問題ないです!

この件は前回のお話とかなり似ている部分があって、特にベースとドラムの共鳴が顕著です。例えばベースが低いEの音を出している時はフロアタムがホワーっと共鳴しているだけだったのに、隣のFを弾いた瞬間にフロアタムが「よっしゃキタ!!!」ってなもんでボゥウワー!!!って暴れだすみたいなケース。Gを弾いたらまたフロアタムが大人しくなる。なんて状況、超あるあるです。ベーシストにはFを弾いた時の「ボゥウワー!!!」は生でめちゃめちゃ聴こえていて、これマジでうっとうしいです。しかもベースの音なのかフロアの共鳴なのかよくわかんない音が出る。ドラマーに手でフロアタムをミュートしてもらってやっとベースの音がタイトになる。生音だからPAがゲートで切っても改善しません。

いろんなバンドが使いまわすドラムセットで、しかも曲によってキーも違うんだから「この曲はなんだかタイト」「この曲はなぜかルーズ」みたいなこともしょっちゅうです。僕はバスドラムばっかりじゃなくてフロアタムにも布団を入れたらいいんじゃないのと思ったりするのですが、どうもフロアタムにイタズラをするのは世間的にご法度みたいで、せめてもの抵抗に3センチくらいの穴を空けています。バスドラムにはどんなにデカい穴を空けても死ぬほど毛布を突っ込んでいても受け入れられるのに、どうも「フロアタムに毛布とか穴」は許されないのは腑に落ちないのですが、まーフロアタムは「ここぞ」って時の爆弾みたいな使われ方をされることが多いので、叩いた時に「ダムッ」って言われると面白くないのかもしれませんね。でもこいつがけっこうベースと相性が悪い、というか最悪です。ベースの音の「立ち上がり」「立ち下がり」にものすごく影響を与えるからです。しかもベースの音程によって違う。

OK、仕方ないのでこちらも諦めましょう!!!

ちなみに、ベースアンプとフロアタムの場所を離す意図でベースアンプをカミテに移動してもほぼ改善しません。めちゃめちゃ離れないと共鳴は無くなりません。音の問題ってちょっとくらい離れても向きを変えてもあんまり改善しない。

ここまで言っといてじゃあなんなんだ、と思われるかもしれませんが、諦めて受け入れるならいっそのこと「共鳴」を楽しんでいこうではないか、というのがライブでグルーヴィに演奏するコツです。最初に書こうと思っていてやめたのですが、共鳴は本来とても気持ちいいものです。楽器屋さんで試奏したときにものすごい良い音に聴こえるのは、壁にぶら下げている楽器(木)がふくよかで複雑な共鳴を起こしているからです。僕のライブハウスも出来立ての頃はなんだか冷たくて単純な響きの空間でしたが、バーカウンターや机、サイドステージなど色んな物を木で作ることでいわゆる「気分の良い音」になっていきました。木の響きはコントロールがとても難しいので「ぜんぶ木造」の会場はそれはそれで別の悩みが出てくるのですが、この「共鳴」こそが僕たちが音楽で良いと感じる大きな要素なのは間違いなさそうです。あんまり科学的な話でなくて申し訳ないですが、僕らは石や鉄がぶつかったり響く音よりも木の音が好きみたいですね。有機物だからでしょうか?

なんだか謎で、すごく扱いづらくて、それゆえ音楽にとって愛すべきこの「響き」「共鳴」を受け入れつつ、楽しみつつ、こいつに身を任せて演奏するというスタンスはどうでしょうか。この気概が無いと、どうしても「いつもと違う」「練習したのと違う」ということがストレスになって良い音楽にならないのです。面白がって受け入れること、これが「その日の良い音」「その日の良いグルーヴ」の秘訣であり奥義である、これが僕の一番言いたいことです。その日のいちばん良い状態で「あの曲」を演奏することができる。それをリアルタイムでお客さんと共有することができる。これが「レコーディングよりライブの方が良い音でやれる」の理屈の全部です。

数回に渡って「ライブはレコーディングより良い音なんじゃーい!」みたいな話をしてきました。レコーディング技術・エディット技術の進歩によって音楽はすごく変わりました。これからもライブとレコーディングが良きライバルであれば今後もっと僕たちが聴く音楽は良くなると考えています。コロナと共に「生収録」「生配信」の音も第三のメディアとして食い込んできて、それもとても掘りがいのある場所です。レコーディングのノウハウから生配信を考えるのも、ライブのノウハウから生配信を考えるのも面白いですね!音楽のこれからの進化を楽しみにしていてください。

ではまた来週!

ライブハウス『Fireloop』店長/足立 浩志

プロフィール

足立 浩志

大阪府大阪市のライブハウス

寺田町Fireloop』店長

Twitter:@adatinc

大阪にある、寺田町Fireloopという面白ライブハウスのオーナーで店長です。大喜利が大得意ですが、気の利いた答えを出すまでに1日かかります。

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