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【連載】ファイアーループ足立のライブハウスなんかやめてやる!!/第14回

<毎週日曜日連載>

ライブはもっと音がいいはず理論・グルーヴ編

おはようございます。ファイアーループの足立です。

毎回毎回、〆切ぎりぎりで書いてしまう「アトマワシマン」のクセを取りたくて書き始めた、みたいな思惑もあるのに全く改善されません。頑張って「うぉりゃ」ってなって、やっとこさ前日、木曜日に書き始めました。僕の中ではよく頑張った方です。本当にすみません!

さて、「ライブはもっと音がいいはずだ」というお話を数回に渡って書いてまいりましたが、どうもこういったテーマになると書き過ぎてしまう。いちいち長文になってしまうのは反省すべきところです。毎回2000字を目標で書いているのですが、前回はなんと4000字超えでつまり原稿用紙10枚分ですね。こんな長々としたコラムを読んでもらうのもだんだん申し訳なくなってきました。今回は手短にいきたいです。

ライブの音がもっといいはず、この根拠として「演奏者がリスナーと同じ(ないし近い)環境で音楽をリアルタイムで演奏し、微調整できるから」というお話をしてきました。人が多いからこもって聴こえるとか、大きい音だからキンキンして聴こえる、なんていうのを演奏とかタッチとか、ちょっとした機械の調整で整えることができるのは「一方通行の」レコーディングとは全く異なる、つまり優位であるということなんですが、これ以外の面ではどうでしょうか?

まず、「グルーヴ」が挙げられます。グルーヴという言葉をよく聞くようになってもう20年くらいになりますが、なんともよくわからない、ぼやっとした、「ノリとかリズムのこと?」みたいな、いまいち正体のつかめない、でもなんかイイモノ、これがグルーヴですよね。みなさんは「グルーヴ」という言葉を聞いてどんなイメージをお持ちでしょうか。

聴くだけで体が動いてしまう例のあの感じ、うーんあれは間違いなくグルーヴィです。あれは科学的にいくと何が起きているから「あんな感じになる」のでしょうか?諸説ありますが、長年PAをやってきた者から今回は、自分的にすごく腑に落ちた解釈をお届けしようと思います。

グルーヴとは「ノリ」です。タテノリとかヨコノリとかは僕にはあんまりわかりません。「あの時はすごく上手くいったのに、今回はなんかうまくいかない」「めちゃめちゃ練習したのに今日はグルーヴィにならなかった」こういった悩みをよく聞きます。グルーヴには2つの、大事な「不確定要素」があるから迷ってしまうんです。

ひとつ目は、音の早さです。速さではありません。早さ。

「グルーヴィな音」があるというわけではありません。各音の、立ち上がりの早さと立ち下がりの早さ、ここが重要です。

立ち上がりという言葉は聞いたことあると思います。弾いた瞬間から最大音量になるまでの時間が短ければ短いほど「立ち上がりが早い」ということになります。では「立ち下がり」は?

なんかヘンな言葉ですね。僕もこの言葉には違和感があるのですが、この言葉が正しいかどうかは別として「立ち上がりの逆」と考えてください。弾くのをやめた後に音が消えるまでのスピード、ですね。

この立ち上がり、立ち下がりというやつがなかなかに厄介です。

例えば「べおーん!」というベースの1音があったとします。この音、1音と見せかけて実は「立ち上がりの早い高音(べ、の部分)」と「立ち上がりの遅い低音(お、の部分)」などなどのミックスである可能性が非常に高いんです。

はいまたスゴイ図が出ました。「べッ」という音と「おーん」という音の組み合わせ。音というのは1つの音と見せかけて実は多くの音の集合体なんですね。この図では超簡略化しておりますが、こういった立ち上がり特性の全く違う音で構成されているのが一般的な楽器の音です。

※シンセなんかでは1つの音で構成することも可能

「立ち下がり」に関しても同じです。弦を手で押さえてミュートした瞬間に止まる成分と、なかなか止まらない成分が混ざっています。これは部屋の響き方にも大きく影響を受けます。低音のサスティンが長い、なんて表現します。

多くの場合、高音は「立ち上がりが早く、立ち下がりも遅い」

対して低音は「立ち上がりが遅く、立ち下がりも遅い」のですが、これもまた楽器の性能や部屋の響きで大きくかわります。厄介なのは、例えば低ーいミの音は早いのに、隣のファになるだけでめちゃめちゃ遅くなる、でもソの音ならまた早い、なんてことがザラにあるという点です。

もっと厄介なことに、これは会場の特性のみならず、お客さんの入り方やその日のお天気なんかでも変わります。

もっともっと厄介なことに、これらは人間の手や電気の加工ではなかなか解決できません。自然現象だからです。神の領域です。

もう分かりましたか?あの言葉を思い出しましたか?いきますね。

「諦めよう!!」

なんです。ええーーー!またかよ!!はい、これが現実です!ざんねん!!

じゃあ遅い低音をイコライザーで削ったらいいんじゃないかと思いますか?それはね、「遅い低音を削った音」なんです。それが良い音かどうかは別問題ですよね。もちろん、どうしようも制御できなかったら削って「制御できる範囲内」の音を選ぶしかないと思いますが、音を帯域だけで認識するのがいかに危険か、これだけでも分かると思います。「この音が好きだから、ぜったいグライコはこの設定!!」なんて言ってたらダメですよ!

さて、機材とセッティングが同じなら全く同じはずの音が毎日ぜんぜん違う、しかも音程によっても「立ち下がりと立ち下がりが違う」こんなのでどうやって演奏しろというのでしょうか?

今までのお話を認識していれば、答えは簡単です。

他のメンバーの演奏に合わせて弾くのです!!!

めちゃめちゃ基礎的なところに戻ってまいりました。そう、どんなに練習しても「今日はグルーヴィにならなかった」という謎の答えは、かなり多くここにあるのです。お互いに目を見て演奏しても実は解決しません。それは単なる「光速での同期」です。音を聴きましょう。そして、他メンバーの出している音を聴いて、自分より立ち上がりが早いと感じたらどうするか。そう、自分は「早めに弾く」のです!!ウワアーすごい原始的ですね!!「オマエ、ハシってんぞ」なんて喧嘩腰で言う前に、彼のギターの音の、立ち上がりの速さに注目して、自分のベース(立ち上がりが遅い)がビタビタハマっているかに注意して聴いて、そのうえで演奏してみましょう。

先ほどの「べおーん」というベースの音と、例えば「ギーン!」というギターの音があったとして、ベーシストはギターの「ギ」のタイミングに「べおーん」の「べ」を合わせるか、「お」を合わせるかちゃんと選ぶ、というイメージで弾いてみてください。それはもちろん自由です。間違っても、「1000分の1秒レベルの誤差で同時にピッキングする」なんてことは目指してはいけません。上でさんざん言ったように、全く同じタイミングでピッキングしたギターとベースは同時に音が立ち上がるのではなく、音響的な理由によって「ズレるのが当たり前」なのです。

つまり、全員が「耳をふさいでクリック通りに叩いているドラム」にピッタリ合わせる、同時にピッキングするということに力を注げば注ぐほど、グルーヴという宝は遠くなっていくということです。全員がギターに合わせたり、ボーカルに合わせたりしたほうがまだマシ、というイメージ。おわかりでしょうか。バスドラムってけっこう、オイシイところは遅いんですよ!「アタック強めにモニターください」これはわかります。が「おれはそのアタックにピッタリのタイミングで弾くぜ!ぜったいズラさねえ!!」に終始していてはグルーヴにも、音圧にも届かないことを知ってほしい。

また長くなりそうなので次回ももうちょっと書きますね。

ライブの強味は、お客さんと自分たちの音を共有できる部分であると書きましたが、グルーヴ面でのライブの強味、あるいは強味になりえる部分がお分かりいただけたでしょうか。そう、その日の環境に合わせた最適なプレイや音質を選ぶことができるっていう部分が至高なんです。

イライラしないでのんびり20年やってるバンドはそこらへん肌で分かっておられるようで「ひとり一人はバカテクじゃないけど、すんごい気持ちいい音が出ててカッコイイ」っていうケースをよく見ます。それが分かるともっと音楽が楽しくなるから何十年も同じメンバーで、飽きずにやれてるではないか、と思えるほどです。

もっと詳しく書きたくなってきましたが、今週はここまでにしておきます。

3400字か。すみません。2000字は無理です。次は3000字を目標に書きます。どんな目標や。

グルーヴには2つの、大事な「不確定要素」があるって書きました。つまりもうひとつあるっていうことですよね。

OK。ではまた来週!

ライブハウス『Fireloop』店長/足立 浩志

プロフィール

足立 浩志

大阪府大阪市のライブハウス

寺田町Fireloop』店長

Twitter:@adatinc

大阪にある、寺田町Fireloopという面白ライブハウスのオーナーで店長です。大喜利が大得意ですが、気の利いた答えを出すまでに1日かかります。

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