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【連載】パーティ日和/第13回

<毎週土曜日連載>

沖縄おじさん紀行

この時期になると沖縄が恋しくなる。

何を言ってるのかわからないと思うので説明すると、以前沖縄への旅費が安くなるこの時期に仲間のミュージシャン達と大勢で沖縄へ旅行していたのだ。夏を諦めきれない僕たちはこの旅を「夏を取り戻す旅」と呼び、天候が不安定な雨の多い沖縄へ一縷の望みをかけて飛んでいたのであった。

沖縄は素敵だ。時間の流れも人の交わりも本土とは違う。優しいのかと思えば冷たいしのんびりしてるのかと思えば変なところで生真面目だったりする。僕たちはいつも離島を目指し、なんか自由そうなバンガローやペンションに泊まり集まって酒を飲んでいたのだが、沖縄の方々はなんか人懐っこいので気がつくと必ず僕たちの輪の中にいる。本当にいつの間にか、誰にことわるでもなく自然に宴会に加わっているのだ。そんな沖縄のおじさんの話をしよう。

久高島という離島へ行った年は天候にも恵まれ、自転車を借りて島を一周したり楽しく遊んだ。この久高島は別名「神の島」とも呼ばれ絵に描いたようなレトロな沖縄集落、大自然そのままの道や森、海といった島の風景の中に御嶽(うたき)という神が祀られている施設が沢山ある。その御嶽への道中は杖を突く音が心地よく、みんなの足音と森の騒めきと杖の音でセッションが始まったり全員でトリップしたりしたのだがその話はまた今度にしよう。とにかくとても神秘的な島なのだ。

沖縄では「そば」ではなく「すば」と言う

その夜は本島海辺のペンションに泊まり、そこで大量に買い込んだオリオンビールや泡盛で盛大に宴会をしていたのだが、酒が回り夜が更けてくると大宴会もチルアウトし部屋に戻って眠る奴、どっかで熱く音楽談義始める奴、ギター弾いて歌い出す奴、泣き出す奴、何故か雨乞いをし始める奴とみんな自分勝手にやり始める。僕はそんな宴会のピークタイムを過ぎたあたりの空気や音が好きなのでみんなを眺めながら散歩に出た。

ペンション裏の浜辺を歩いていると地元のおじさんと僕らの仲間が輪になって飲んでいたので混ぜてもらった。そのおじさんはなんの躊躇もなく僕たちの持ち込んだ泡盛を飲んでいたのだけど、やがて無くなると「仕方ないなあ、今回だけだぞ」と言わんばかりの恩着せがましさで酒を買ってくる、と原付に乗り僕らが止めるのも聞かずに何処かへ行ってしまった。
ものの10分くらいで一升瓶片手に帰ってきたときはほっと胸を撫でたが、当の本人はなんだか楽しくなってしまったようで今度はツマミがないから俺が海へ潜って貝を採ってきてやる、と言い出した。10月の沖縄がまだ暖かいとはいえ真夜中の真っ暗な海へ酔っ払いが1人で潜るのは自殺行為だ、と僕らはまたしても止めたがヘラヘラしながら行ってしまった。今度こそやばいと通報先を確認したりしていたらなんとおじさま右手に貝を持って戻ってきた。信じられない光景に放心しているとあっという間に貝を開いて剥がして切って刺身にしてしまい、「おっとこれは可愛い女の子だけだ」などと僕を見て言うのだった。

また別の夜、今度は水納島(みんなじま)というなんだか楽しそうな名の離島へ行ったときのことだ。

民宿の真ん中にある広場でまたしても大宴会をやっていると一台の軽トラックがやってきて、三線をもったおじさんが何の躊躇もなく僕らの輪の中に座り酒を飲み始めた。当然僕らの持ち込んだ酒だ。おいおいそれは僕たちの酒だ、と言っていると民宿の親父までやってきて席に座り僕らのビールを開け、「オリオンビールはわしらにとったら水みたいなもんだ、そしてこいつは三線の先生だ、今夜は特別にタダで三線を聴かせてやる」と言い出した。酔いで大雑把になっていたので一回聴いてやるから弾いてみろと言うと「これを飲んでからな」と当たり前のように僕らの宴会に加わり「こういうゆんたくも良い」などと上機嫌で僕らの宴会に加わってしまった。
僕たちも呆れてしまい、「東京には昔住んでいた」とか「俺より上手い三線弾きはそうそう居ない」とか本当かウソかわからないようなことを延々言うおじさんを囲んで飲んでいるとまだ幼い女の子が怒りながら連れ戻しにやってきて、おじさんはしょんぼりしながら軽トラックに乗って帰ってしまった。また変なおじさんに捕まってしまったと笑う僕らの宴会は更けていき、やがて酒も尽き眠りについた。

酒の写真ばかりですみません

翌朝、宿酔で鈍い頭を揺らしながら本島に戻る船の乗り場へ行くと昨夜の「三線の先生」は乗船口に制服を着て立っていた。その目には一点の曇りも無く、「昨日はどーも」とでも言いたげな笑顔で僕に向かってサムズアップをキメてくるのだった。ナニが三線の先生だ、と思ったが憎めない彼の笑顔と娘さんの苦労に精一杯の苦笑いを返し、僕は中指を立てて船に乗り込んだ。良い旅だった。

とても思い出深い沖縄の旅々、特におじさんにまつわる話は尽きないのだけど胸焼けしてきたのでこの辺にして、また機会があったら聴いてほしい。あえてシーズンを外してする旅も良いものなのでGOTOとか使って行ってみると良いかもしれない。
いつも想定外の驚きと感動をくれる地元の方々に感謝である。

ライブハウス『松山サロンキティ』店長/武花 正太

プロフィール

武花 正太

愛媛県松山市のライブハウス

松山サロンキティ』店長

Twitter:@take87syouta

音楽、アニメ、旅、鉄道、廃墟、階段など、引っ掛かりを覚えた物を節操なく取り込んだボーダーレスなライフスタイルは国内外を問わず広く呆れられている。

自身のバンド「MILDS」では作詞作曲、歌、ギター、ピアノを雰囲気でこなし、さまざまな現場でベースを弾く。

DJとしても活動しており、主な得物はなんとアニソンである。

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