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【連載】ファイアーループ足立のライブハウスなんかやめてやる!!/第12回

<毎週日曜日連載>

オンマイクとオフマイク

おはようございます。ファイアーループの足立です。

今回はライブは音がイイ!むしろライブの方が音がイイ!というお話をしたいと思います。いったい何より音が良いのかと申しますと、そりゃもうもちろん、レコーディングよりも、ですよ!ウワァ~またなんか広い界隈に見境なく喧嘩売りはじめましたね!レコーディングエンジニアに直で喧嘩を売ってるみたいでちょっと気が引けるのですが、少なくとも僕の知っているエンジニアの皆さまは寛容で視野が広いので大丈夫だと思います、そもそも何かを主張したら何かを否定してしまうのは仕方がないです、という保険をかけたところで始めてみようと思いますが、ここでもう一発、嫌われないために保険を掛けておきましょう。正確に現状を言えば、「ライブの方がレコーディングより音が良くなりえる!でも今はまだまだ負けている!」です。どうでしょうか。

まずは、レコーディングの「良い音の録りかた」から見てみましょう。レコーディングではまず、その後の修正や処理をうまくやるためにマイク1本1本の「カブリ」を無くす方に向かいます。「カブリ」というのは、例えばスネアを録る為にスネアに向けて立てたマイクにシンバルとか他のタイコの音も入っちゃう、という現象のことをいいます。これは多かれ少なかれ起きる現象で、完全に無くすことはできません。そしてこの「カブリ」は基本的に少なければ少ないほど後のエディットの際に嬉しいということです。

なぜカブリが多いと困るかというと、例えばスネアのマイクにハイハットがたくさんカブっていた場合、スネアのハイを強調したら「かぶっているハイハットの音」のハイも一緒に上げてしまうからです。実は今どき、そういうのもなんとかする凄い技術があるみたいなのですが、何かを目的として立てているマイクが目的以外の音を録ってしまうと上手く調整することができなくなるため、基本的にはマイク同士の分離が大事になってきます。ドラムセットだけ見てもスネアのマイクにはハイハットやシンバル、タムやバスドラムの音なども入ってくるから大変です。できるだけカブらないように指向性の高いマイクを使ったり、マイクの向きを工夫したり、タムが鳴っているときだけタムのマイクを自動的にONにするための「ゲート」というものを掛けたりするのが一般的です。

ドラムセットだけでも10本くらいマイクが立っているのに、バンド全体が同じ部屋で一斉に演奏したのをひとつひとつマイクで録ったらそれはもう大変なことになるのは想像がつくでしょうか。ギターアンプに立てているマイクにはドラムの音がいっぱい入ってくるし、ボーカルのマイクにはギターやベースやドラムの音がめちゃめちゃ入る。そうなると、極端な例で言えばボーカルの声「だけ」に例えばリバーブを掛けたい、あとはカラッカラにしたい、なんてことが出来なくなりますよね。ボーカルの音程が良くない部分があったとして修正したくても、ボーカル用のマイクに入った他の音の音程もいじってしまうからとんでもないことになる。つまり、各マイクの分離が悪いと「あとでいろいろいじるときにデキナイ・ヘンな感じになる・出来たとしても超難しい」。だから、リーズナブルなレコーディングではまずドラムだけ録って、それを聴いてベースを録って、ギターを録って、完成したオケ(伴奏)に合わせて歌を録音します。歌を聴かないと良いドラムが叩けない、なんていうときはそれを聴きながらもう一回ドラムを録りなおすなんてこともザラです。こうすればこの問題児「カブり」は最小限に抑えられますよね。

しかしながら、やっぱりバンドって同時に演奏した方が良いプレイになることが多いですから、本当は同時に演奏して録音したい。ドラムはボーカルの息遣いを聴きながら叩いた方が良いプレイになると僕は昔から提唱していますが(もちろん例外もあるでしょうが)、それ以外にもドラマーとベースがお互いの音を聴きながらグルーヴを合わせていく方が好ましいです。ギターもボーカルも同時に演奏した方がリズムや強弱をコントロールして「演奏」を全員で作っていく、それがバンドサウンドだと思います。でも先ほどから言っている「マイク同士のカブリ」の問題が大きい、だから、「レコーディングブース」といって各プレイヤーを一人ひとり防音室に閉じ込めて、お互いの演奏をヘッドホンとかで聴きながら同時に演奏したものを録音する、こちらはたいへんリッチな収録方法ですね。ここまでしないと「良い演奏」を「エディットに適した状態で」録音することができない。これがレコーディングの「ライブよりツライトコロ」だと言える、というわけです。

ライブハウスの音響はハッキリ言ってそんなものはお構いなしです。そもそも「あとで修正する」なんてことができないわけですからそこはスッパリ諦めます。それが結果的に「音が良い」という状況を生みます。詳しいことは次回に回すとして、さわりの部分だけお話して終わりにしておきましょう。

今回はタイトルにある通り、「オンマイク」と「オフマイク」のお話をしたいと思います。

オンマイクとは、「音源がマイクに近いこと」

オフマイクとは「音源がマイクに遠いこと」

を指します。何センチから何センチまでがオンマイクで、何センチからがオフマイクという明確な決まりはありませんが、僕の中での基準は「音源から耳までの、常識的な距離」を「オフマイク」と考えています。

音源とはスネアとかバスドラムとかギターアンプとか、つまり「実際に音が発生している源」ですね。これに例えば5センチの距離に耳を近づけて聴こうと思うでしょうか。いや、よほどの爆音ジャンキーでもなければそんなことはしないと思います。でもマイクは音源から5センチくらいの距離で録るのがザラ。つまり普通の人なら耳が壊れそうで近づかない距離、これを「オンマイク」と言ってよいと思います。この「オンマイク」という収録方法はレコーディングでもライブPAでも当たり前のように採用されます。なぜかというと、そちらの方が目的の音源の音をデカくキャッチして、相対的に他の音つまり「カブリ」を減らすことができるからですね。スネアにだけリバーブを掛けたい!他にはそんなに掛けたくない!なんてざらにあることなので、これは定番になってもしかたないと思います。

しかしですよ、この「オンマイクの音」、これはリアルな音なんでしょうか?人間の耳で聴いた音に近いでしょうか?そんなはずないですよね。だってそんな近くでスネアの音を聴くなんてPA歴19年の僕でも1回か2回あるくらいですよ。あるんかい。

そこでオフマイク、つまり人間が「常識的に」音源から離れるであろう距離に置いたマイクです。こちらの音の方が人間の実際に聴いた音に近いです。「良い音」の定義なんて無いですし、さらに「リアルであれば良い音」というつもりはさらさらありませんが、逆にこう考えてみましょう。「実際のプレイヤーが聴いている音」これが最も「良い音」である、という考えには説得力がありませんか?プレイヤーが「こうだ」とリアルタイムに感じながら演奏している音、その音を出すために努力して練習して研究してきたその音こそが「良い音」ないし「聴衆に伝えるべき音」だと僕は考えるわけです。その音には「オンマイク」よりも「オフマイク」の音の方がはるかに近いです。

近代の名盤の音の多くは「オンマイク」の音です。CDから思いっきりオフマイクの音が聴こえたことなんかめったにありません。オンマイクの方がクリアに収録できるし、エディットもやりやすいため「心地よい音」を作るのに適していて、それが「レコーディング界での良い音」であると音楽ファンが刷り込まれているだけではないか、そんな風に考えるのです。

さて、オフマイクのお話にちょっと戻ります。これ以上くどくど言っても長くなるばっかりなので今回はこれで終わりにしますね。

上で言ったようにレコーディング界では排除されていく「カブり」。これ実は他の音源にとっての「オフマイク」なんです。例えばスネアに向けて5センチくらいの場所に置いているマイクはそこから50センチとか1mとか離れているシンバルや、他のタイコにとっての「オフマイク」なんです。人間の耳が聴いているような距離に置かれたこれらの「カブり」、エディットに邪魔だからと言って嫌ってばかりでは勿体ないと思いませんか?

同じように、ドラムセットにたくさん立てられたマイクはギターアンプやベースアンプの音に対しての「オフマイク」つまりリアルな音なのです。もちろん近接効果とか位相の問題はありますし、メーカーの工夫で「オンマイクなのにオフマイクっぽい音が録れる」マイクや処理があったりしますが、やはり「遠いマイクは人間が聴く音を浴びている」という点は真実であり、これが非常に重要です。

ライブではこれら「カブり」を排除しない、ないし排除できないという環境であるゆえ、共存し、その利点を逆手にとって、存分に生かして「CDよりも音が良かった」と評される音を狙うことができるわけです。

もっとお話したいことがあるので、この話は次回も続けようかなと思っています。僕が言いたいのは、「ライブは音が悪い」なんて当のプレイヤーが思ってたらダメだよ、本当に音がイイのはライブなんだから諦めないでほしいということ、、、でしたね!書いてて気づきました。レコーディングエンジニアに恨みを持ってるみたいな話にならなくてよかったです。

では、また来週!

ライブハウス『Fireloop』店長/足立 浩志

プロフィール

足立 浩志

大阪府大阪市のライブハウス

寺田町Fireloop』店長

Twitter:@adatinc

大阪にある、寺田町Fireloopという面白ライブハウスのオーナーで店長です。大喜利が大得意ですが、気の利いた答えを出すまでに1日かかります。

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