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【連載】パーティ日和/第12回

<毎週土曜日連載>

アニメ偏差値

先日、BAR営業中のサロンキティに1人で来店した久しぶりの友人がこう仰った。「鬼滅、見た?」
誰に物を言ってるのか。悔い改めて欲しいものである。僕を誰だと思っているのか。見てるわけないだろ。

そして返す刃でこうである。

「まだ観てないん?やばいよ、観た方がいいよ〜」

なんだと。お前は酔っているのか。それはなんだ、酒の呼吸か。すると鬼か僕は。はやくお酒注文してください。

なんかしらアニメが流行るとこういう輩が出てくる。いや、アニメの話は楽しいから好きなんだけどお前それしか観てないだろ。どうせ自粛期間にやることなくてアマゾンプライムとかでTV版観てハマった流れだろう。鬼滅の刃論を振り回すのならジビエートくらい視聴してからにして欲しいものである。
まあ久しぶりにアニメ見て面白かったから、アニメ好きな僕に話しに来てくれるのは普通に嬉しいから許す。

彼の鬼滅論をにこやかに聞いていると本当に面白かったことが伝わってくる。そうだろうなあ、TV版面白かったもんな。でもね君、アニメ界には同じくらい面白い作品が沢山あるのだよ。それを彼の耳に入れても届かないのだろうけれど。
「いやー鬼滅見てアニメにハマっちゃってさ、もっと見たいんだけどなんか面白いアニメない?」と聞いてくるのでどういう風の吹き回しかと大まかに見たい作品の感じを尋ねると「鬼滅みたいなやつ」ときた。

ひとつ教えておいてやろう。鬼滅の刃と同じく面白い似たような作風の隠れた別のアニメ作品など存在しない。
ただでさえ面白い原作が出版社や読者によって大事に大事に温められ、さらに大層な予算をかけて制作されたアニメ版鬼滅の刃。その面白さはすごいものであろうが今インスタントに生み出された物では無いのだ。作品が生まれた背景に敬意を払いたまえ。
ちょっとアニメ見たら面白かった、というくらいの思考停止した脳みそで見終わってしまったキメツの代替品を求めても虚しいことなのである。僕はそういう人を「難民」と呼んでいる。

僕がアニメを人に勧めるときは相手の懐にどのくらい作品に対する理解力があるか、どのくらいマジョリティの時流から外れた作品を前向きに鑑賞できるか、ということを基準に考えるようにしている。これを僕は「アニメ偏差値」と呼んでいる。

この「アニメ偏差値」がどのくらい大事であるか。少し昔の話をしよう。僕は以前「18if」というアニメの愛媛県公式DJをやったことがある。作品はあまり売れなかったが主題歌を手掛けたのがTeddyLoidと米良美一という異色のコンビだったりエンディングテーマのクレジットを見てみると アイナ・ジ・エンド、じん、でちゅーんといった面白いメンツが並んでいるなど、音楽方面が意欲的で面白いことから主題歌集だけでも広めたいと地下に潜り各地のアニソンクラブイベントで販促を打つというこれまた前衛的なプロモーションをおこなった作品である。

そのプロモーションがどうだったかは今回は触れまい。作品の話だ。「18if」という作品がどうだったかというと、はっきり言って超面白かった。が、この作品を誰かに勧めたい、とは思わなかったのである。偏差値が高すぎるのだ。

この作品は各話監督制で制作されており、毎回違う監督により自分のチームで制作されている。しかも相当フリーに作れるように仕掛けてあるらしく、キャラクターデザインも各キャラの性格も口調も毎回ガラッと変わるのである。7話に至っては絵本のようなデザインにキャラクターごと変わり、もはや別の作品になっていた。

これをどう面白いと感じるか、というとこれはもう各監督の全く違った個性や作風を楽しむ以外にないのであるが、一見勝手気ままに放り投げられた各監督の作品がシリーズの中で実は重要な位置付けになっていて最後に全部合わさって「18if」という物語を形作っている。と言っても理解するにはハードルが高すぎて、考察ブログなんかも当時書かれていて読んでみたが僕の目を持ってしてもサッパリわからんかった。

この作品の最も重要なトピックは「魔女」と呼ばれる各話ヒロインの「夢の中」がテーマであること、つまり壮大な「夢オチ」というところだと僕は思っている。バカにしてんのかと言いたくもなるけど。

いかがでしょうか。つまりこれを読んで「観てみたい」と思った方はかなり偏差値が高い、と言えるのではないだろうか。
一応調べてみたところdアニメストアおよびdアニメストア for amazon primeで配信しているのでよければどうぞ。
まあつまるところ偏差値が低すぎる冒頭の彼に僕から勧められるアニメなどほとんど存在しないのである。ブリーチとかおもしろいので見とけ。

毎クール50本以上、年間200本を超えるアニメの海を泳ぎきるのは時間も体力もお金もかかるかなりハードルが高い趣味であるのでオススメはしないがそれはそれ、サムネイルとタイトルだけ見て飛び込んでみる所謂「ジャケ買い」もいいと思うのでアニメが気になるならもう少しその世界に飛び込んでみてはどうか。昔と違い地方でも大体の作品をお安くネット配信してくれているのだし、今はユーザーが自分のアンテナで好きなものを探す時代だ。2〜3話見て面白くなくてもせいぜい4〜60分なのだから寝っ転がってツイッター眺めてるよりはよほど有意義な時間ではないか。

まもなく秋アニメも出揃い忙しい毎日が始まる。今期も豊作なので鬼滅キメツと騒いでいる方々は是非ともさまざまな作品に触れてみて欲しいと思う、アニメが好きなおじさんであった。

ライブハウス『松山サロンキティ』店長/武花 正太

プロフィール

武花 正太

愛媛県松山市のライブハウス

松山サロンキティ』店長

Twitter:@take87syouta

音楽、アニメ、旅、鉄道、廃墟、階段など、引っ掛かりを覚えた物を節操なく取り込んだボーダーレスなライフスタイルは国内外を問わず広く呆れられている。

自身のバンド「MILDS」では作詞作曲、歌、ギター、ピアノを雰囲気でこなし、さまざまな現場でベースを弾く。

DJとしても活動しており、主な得物はなんとアニソンである。

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