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【連載】パーティ日和/第11回

<毎週土曜日連載>

最果てを目指す人たち

僕は突飛な行動が好きだ。

こう書くとただの変人のように思われるかもしれないが、周りに迷惑をかける妙なイキリYouTuberだったりする訳ではないので安心して欲しい。

まだ東京にいたころ、都会の喧騒にも慣れ勝手知った街も多くなってきたあたりで気付いたことがあった。都市の近辺にある秘境の魅力である。田舎で生まれ育ってきた僕だがいわゆる地方都市とは全く違う、なんだか現実離れした地域が都市部に隠れていることを知ったのだ。一般的に利用されている路線の駅なのに一般人は改札をくぐることも出来ない駅があったり、未だに第二次大戦の弾痕が残る昭和の風景そのままの地域があったり。
そんな場所を巡るのが好きだった僕は「東日本最果てを目指す会」というのを立ち上げ、ひそかに活動していた。

さて、僕の好きな漫画の一つに「ヨコハマ買い出し紀行」という作品があるのだが、その中に喫茶店『カフェ・アルファ』という店が登場する。近未来、人口も減少し終焉へ向かう人の歴史のおしまいのあたり、人型ロボットのアルファさんがおそらく帰ることはないオーナーを待ち続ける海辺の喫茶店…というなんとも情感たっぷりな場所なのだが、近辺の特徴的な風景からカフェ・アルファは神奈川県にある、という情報を手に入れた。聖地巡礼、というやつである。グーグルマップで調べると道も書かれていない正に最果て。それでは行って参りましょう、と僕は電車に飛び乗った。
前置きが長くなったが、今日はその時の話をしよう。

「黒崎の鼻」というその最果ては京浜急行電鉄久里浜線の終点、三崎口駅から徒歩で行ける。最果ての最寄駅、言葉のギャップが素晴らしい。それではマップを見てみよう。

道が無い

何もわからなかった。しかしGoogleマップはすごい。航空写真も見られるのだ。詳細な画像がすぐに手元に。さすがインターネットだ。

OK,Google

なんか道らしきものはある、いけるいける。
最寄駅からの全体図はこんな感じだ。

こんなかんじ

電車に揺られ、だんだん風景が寂しくなってくると旅の実感が湧いてくる。これからどんな出会いが待っているのだろうか。どんな景色を見られるのだろうか。果たして無事に帰ってこれるのだろうか。三崎口駅には立ち食い蕎麦屋があり、タタカイの前の腹ごしらえをした。なにせ僕の行く先に飲食店はおろかコンビニも無いのだ、いよいよ盛り上がって参りました。

まっすぐな農道が気持ち良く、道がある間はサクサク進むことができた。やはり旅というのは自分の足でするもんだ。ヨコハマ買い出し紀行の風景を重ねながら歩く農道はとても楽しかったし、地元の方も挨拶に気さくに答えてくれた。いい感じだ。

やがて道は無くなり例の藪の中に僕は突っ込んでいくことになった。言うて誰かが歩いた後はあるので大丈夫、と慎重に腰のあたりまで生い茂る草を掻き分けながら進んでいく。得体の知れない虫やガサガサと謎の音を立てる動物の気配も感じたが気分は特命を受けた探検隊である。今なら魔物の群れが出てきてもオオアリクイくらいなら倒せそうだ。(マムシなどリアルにやばい動物がいるかも知れないのでご注意ください)

身体中を草や土だらけにしながら進んでいくと急に視界が開け、ようやく僕は崖に出た。眼前は大海原、正に最果てである。
壮絶に綺麗な景色。360度、視界の全てが大自然だ。思わず雄叫びをあげそうになってしまった。

ところが誰も居ない、と思っていた最果てにはテントがひとつ張ってあり、男が釣りをしていた。この世には物好きも居るもんだ、と自分を完全に棚に上げ挨拶のひとつもしてみようと近づいたそのときだ、僕は異常に気がついた。

彼の釣竿から垂れている糸は海まで届かず、地面に落ちているのである。

やばい。

よく見ると男は涎や鼻水を垂らしながら小刻みに震える白人であった。目の前にいる僕を見ることもなく果てしなく遠い目をしている。これはアレかもしれない、なんていうか完全にキマっている。

逃げたほうがいい、という判断をした僕は一枚だけ写真を撮ってその場を去った。陸地の最果てはまた人生の最果てでもあったのか、などとよくわからないことを考えながら僕は足早に帰路につくのだった。

慌てて撮ったので構図もへったくれもない

今あらためてインターネットを頼りに近辺のことを調べてみるとドラマやCMのロケ地にも使われたり、手練れのキャンパーにとっては「聖地」などと呼ばれているらしい。僕が訪れたときから10年近く経っているので状況も変わってきているのかもしれないがマナーの悪い客がゴミを捨てて帰ったり禁止されている焚き火をしたりと問題も多いようだ。

道もなく駐車場もトイレも水道もゴミ箱も無い場所だ、超不便だし管理者も居ないので事故が起こっても誰も助けに来ない。

もちろんそういう場所だから魅力的なんだろうけど、管理されていないということは自身が危険も責任も負うということなのだ。

突飛な場所が好きな僕であるが、同時に穏やかな日常も好きだ。最果てもまた誰かの日常、ということを肝に命じて環境への配慮、地元の方々との関係を大切にして欲しいと思う、「東日本最果てを目指す会」であった。

ライブハウス『松山サロンキティ』店長/武花 正太

プロフィール

武花 正太

愛媛県松山市のライブハウス

松山サロンキティ』店長

Twitter:@take87syouta

音楽、アニメ、旅、鉄道、廃墟、階段など、引っ掛かりを覚えた物を節操なく取り込んだボーダーレスなライフスタイルは国内外を問わず広く呆れられている。

自身のバンド「MILDS」では作詞作曲、歌、ギター、ピアノを雰囲気でこなし、さまざまな現場でベースを弾く。

DJとしても活動しており、主な得物はなんとアニソンである。

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