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【連載】ファイアーループ足立のライブハウスなんかやめてやる!!/第6回

<毎週日曜日連載>

骨の音

おはようございます。ファイアーループの足立です。

さいきんあんまりPAやってないですが、音にはまあまあ詳しいので今回も音の話をしようと思います!

突然ですが、みなさん何で音楽を聴いていますか?

ああ質問が悪かったですね。すみません。イヤホンで聴いてるよ!とか、アップルミュージックで聴いてるよとか、何を答えたらいいかわからない質問をしてしまいました。

「今何してるの?」って聞いて「息してる」って答えるくらいのレベルでしたね。また「俺の中の小学生」が顔を出してしまいましたが、耳。僕があなたから欲しかった答えは「耳」です。「耳で聴いてるよ」ですね。音楽はふつう耳で聴くものです。

音楽は耳で聴いている。でもね、僕に限らずみなさん音楽は「耳だけで聴いている」ということではないのです。

人間の体の仕組みとして、音を聴く器官は耳、特にその中にある「鼓膜」で音を聴いているという認識が一般的だと思いますが、実はその鼓膜で聴いているのは音のうちのほんの1部分。僕たちはそれ以外でも音を認識しているんです。

僕が大事だと思っているのは「骨」です。僕たちは骨でも音を聴いています。ライブハウスみたいな音の大きいところだとドラムの音で体が揺れたりしますよね。あれ実は骨が大きい音に共振しているんです。音が物を揺らす感覚、わかるでしょうか。大きい音が鳴るとテーブルの上の物がブルブル震えたりしますよね。音は空気の振動エネルギーですから、その振動を物が受け取ってブルブルするということです。

話はいきなり原始時代にさかのぼりますが、大昔の人たちにとって最も恐ろしい物はなんだったと思いますか?いちばん怖いのは今も昔も死ぬことですね。生命の危険がいちばん怖い。で、その「生命をおびやかすもの」ってけっこうデカい音が出るものが多いです。地震とか火山とか隕石とか、低音の爆音ですが、これが不思議とうまくできている。まず低い音を出すのには高い音を出すより桁違いのパワーが必要です。逆に言うと、低い音を感じるとそれはイコール、桁違いのパワー、つまり生命を脅かすものが近くにあるということなのです。もう一つ言うと、この大きなエネルギーは遠いところまで届きます。まるで「さっさと逃げろ」と言われているようです。神の慈悲でしょうか。面白いですね。

低音がガツンと来ると迫力があるのは、実はこういった心理からです。本来、生命の危機を覚える「低音の爆音」、これを安全な場所で意味のあるタイミングと音程で聴こえてくる「怖いけど生命の危険は無い感覚」これを「迫力のある」と表現します。ジェットコースターなんかも同じで、あんな高いところから落ちたらふつう死ぬでしょって怖い体験を「命の安全を保障されている状態で」させてもらえるというのだから、昔から今に至るまで遊園地の目玉として君臨してきたわけですね。僕はちょっと苦手ですが大好きです。

話を少し戻しましょう。骨で聴く音の話。上でも言いましたが、音はエネルギーです。高音も低音も、音というのはエネルギーです。そのエネルギーが空気や物を伝わって僕たちの鼓膜や体を揺らす。揺らされた僕たちはそれを「音」「音楽」として認識しています。感覚全てを駆使して、総合的に音楽を聴いているんですね。試しにライブハウスで耳をふさいでみてください。音は全く聴こえなくなりますか?いや、高音は聴こえにくくなりますが低音はあんまり変わりません。これは鼓膜でなく体、特に骨で聴いている音が多くを占めているからなんです。

「膝で感じる音」「おなかに来る音」「頭蓋骨に響く音」みたいに体の部位で感じる音があるのもこれで説明がつきます。

人間の骨というのは、だいたい1つの骨の大きさが「下に行けば行くほど大きい」のはだいたい想像つくと思いますが、これも面白いですよね。やっぱ重力に従って骨は下にあればあるほどデカいのですが、これが「膝で感じる低音」の正体です。

物にはそれぞれ「固有共振周波数」というものがあって、これは簡単に言うと「重たいものは低音でしかブルブルしない」「軽い物は高音でしかブルブルしない」みたいな物理現象です。これは、物の密度と重さによってだいたい決まってくる。だいたいというのは、形にもよるからなのですが、まとめて言えば「物によって固有共振周波数が違う」ということです。これは112ヘルツで共振する。これは252ヘルツで共振する、などさまざまです。想像してみてください。人骨を。スネの骨は長いですね。太ももの骨より長い。腕の骨は太ももの骨より短いし、鎖骨はもっと短い。頭蓋骨はデカいけど丸くて中が空いています。これら一つひとつに固有共振周波数がある。該当の音エネルギーを受け取ったときに膝がゆれたり太ももがゆれたりするのはこういうわけです。

ついでにひとつ、こだわり派にとっては楽しくない話をします。人によって骨の大きさって違いますよね。耳たぶの形も向きも大きさも違うし、太ってたり痩せてたりする。今までの話をまとめると人は一人ひとり全く違う質感の音を聴いている(感じている)ということになりませんか。だから、そこまで音作りに神経質になる必要はないんです。必要が無いといえばちょっと乱暴ですが(それ自体は楽しいことだし)、売れる売れないに躍起になるあまり不毛な戦いに身を投じている例をよく見ます。もうちょっと音作りは気軽に、楽しくいきましょう。

ここまで読んで「なるほどな」と思った人。あなたはいま確実に音を聴くのが上手くなっています。僕たちは耳だけでなく、全身で音を聴いている。鼓膜と、耳たぶと、骨と肉と髪の毛と体毛と内臓と、身に着けている服や靴で音楽を聴いている。それを意識するだけで「音」に対する集中力や理解度が高次元にいきます。楽器をやるにしても、楽器を鳴らすという感覚が研ぎ澄まされるので良い音が出せます。これは100パーセントです。

じゃあ、イヤホンで音楽を聴いてるときはどうなるの?って質問が次に来そうですが、イヤホンで聴く音楽はそういった意味で「疑似的」であると言えます。

例えば、3Dメガネでジェットコースターの映像を見たときウワァーってなるでしょ?風が来たらもっとウワァってなりますし、床が傾いたりするともっとウワァーってなりますよね。でも実際は落ちてない。だから重力も本当は感じていない。でもウワァーってなる。ヒュンヒュン来る、これは「ジェットコースターは体全体で感じるものなのに、目からくる情報だけでもかなり重力を感じる」「風が吹いたらもっと本物に近くなる」「床が傾いたらもっとリアル」とかいう感覚のイタズラと申しますか、経験からくる感覚の反射です。梅干しの写真を見て口の中が酸っぱくなるのと何らかわりません。

疑似的が悪いという話ではなく、イヤホンのような道具で音楽を体験できるなら最高じゃん、っていうところから発展を遂げた音楽文化ももちろん価値がありますし、そこに優劣はありませんが、少なくとも「実際に音を出す人=ミュージシャン」はこれを意識しておいて損はないはずです。次のスタジオでぜひ意識してみてください。バンドで音楽をやるのが実は自分が思っていたよりだんぜん楽しいということに気付けるはずです。

なんだか真面目くさったことを書いてしまいましたね!

最後にひとつ言うと、ぜんぶ僕が勝手に考えたことですからソースはありません。

ではでは。また来週!

ライブハウス『Fireloop』店長/足立 浩志

プロフィール

足立 浩志

大阪府大阪市のライブハウス

寺田町Fireloop』店長

Twitter:@adatinc

大阪にある、寺田町Fireloopという面白ライブハウスのオーナーで店長です。大喜利が大得意ですが、気の利いた答えを出すまでに1日かかります。

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