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【連載】パーティ日和/第5回

<毎週土曜日連載>

本気で遊ぶバンドマン

先日、演劇畑の演出家さんとお話をしたときに盛り上がった話題があるので書いておきたい。

演出、というか企画の話だ。
何年もバンドやってて「ライブハウスをレンタルして自主企画やったこともありますよ!」という方なら解ると思うけど、大体ライブハウスで企画をするときにはフォーマットみたいなものが決まっている。

4〜6バンドが出演して、タイムテーブルは主催が大トリを勤めてあとはキャリア順、18:00オープンで18:30スタート。1バンド30分くらいの出演で転換時間は別で10分くらい、出演順と逆の順番でリハーサルをする。チケットは2000円でドリンク代別……
なんかカッコいいイベントタイトルつけて末尾にvol.1とかつけて定期開催を匂わせ、渾身のアー写並べてフェスっぽいフライヤーを作る。

わかります、わかりますけどこういう地元のイベント告知を見てぼくはあんまり「おもしろそうだな」とは思わない。

ブッキングされたバンドに見たいバンドがいるとか、仲の良い奴が出演するから久しぶりに会いに行くか、とか僕の立場であれば地元で最近立ち上がった若手のバンドが居るからいっちょ見ておくか……とかそういう理由でもない限り行こうとは思わない。

前述したフォーマットは最初から決められていたものではなく、長い年月をかけてライブハウスのブッカー達が店の定期イベントを公平に回していくために作られていったものなんである。だから全てに理由がある。

タイトルが無難にカッコいいのは多様なアーティストイメージにマッチさせるためだし、vol番号つけるのは実績を積み上げていきたいからだ。2,000円のチャージは集客したバンドさんにチャージバックをしてあげるために必要な最低ラインの金額で、18:00オープンなのは人が動きやすい時間帯だと思われるからで18:30スタートなのは予想される動員的に30分あれば入場できてしまうから。若手のバンドさんだと60分とかのステージが保たなかったりするし、集客的にも心許ないのでそういった目線のバンドさんが出演するなら4〜6組で手分けして集客、2〜3時間をみんなで盛り上げる方が良い。逆リハは機材のローテーションがスムーズだからだ。

こういう理由があって出来たフォーマットであるので、当然全てのイベントに当てはまるわけではないのである。

イノシシと戦う僕

なんか説教くさいので、気休めにイノシシと戦う僕をどうぞ

しかもこのフォーマットはただの入れ物であり、その上で何を成すかは出演者次第だしそれが結果に結びつくので、実は雑多なブッキングライブへの出演の方がバンドにとっては難しい。

なんか腹立つバンドが居たり、すげー年上だったり、見た目がコワい人が居て無駄に緊張したり、イベントの流れ的にドツボにはまったり、僕も数多く経験してきた。まあそうやって成長していくのではあるが、たまには自分たちの為のステージを踏んでみたい、自由に楽しいイベントを考え開催してみたい、そうは思わないだろうか。思ったとしたらそう、フォーマットをぶち壊すときが来たのだ。

以前1月に「空飛ぶペンギン」というバンドがなんか面白い企画をやりたい、と言ってきたので自分も企画に加わったことがある。

酒を飲みながら思いつくこと全部言って、実現できそうなことをかたっぱしからやった。ベースのエスエスという奴を神様にでっち上げてポスターとフライヤーに載せ、ダンボールで等身大パネルを作り顔の部分に穴を開けた。インスタ映えするエスエス大明神顔出しパネルの出来上がりである。キーボードの女の子には巫女のコスプレさせて甘酒を振舞わせ、受付で引いてもらう「空飛ぶおみくじ」には変な吉をいっぱい入れてなんかわからんけど良いことありそうな予感を押し付け、ペンギンのお守りを紙粘土で作りおみくじに入れた。開演時にエスエス大明神が降臨し、おっきい筆で書初めをしてからライブがスタートした。なんと書いたかは覚えてないけど変なこと書いてたと思う。掃除が大変だった。会場は妙な賑わいを見せ、来場者はみんな楽しそうに笑い、ツイッターのTLは大騒ぎだった。タイトルは「空飛ぶ新年会」にした。

空飛ぶ新年会

とても忙しかったが楽しかった。

お客さんに遊んでもらうには自分達がまず全力で遊んでなければ難しいし遊び方には人生が出る。自己表現するにはもってこいの方法だと思うのである。

当然こういう企画が肌に合わないバンドさんも居るだろう。そういうバンドさんは自分たちの遊びを体現すれば良いのだ。そういう企画に、人々は引かれ集まるのではないだろうか。

3度のバンドブームを経て、ライブハウスは一般的に認知される場所になった。そこには歴史に作られた「通例」が存在するし、それに従って活動すれば楽は楽だ。しかし楽なものにクリエイティビティが付いてくるとは思えない。

バンドさん達の本気の遊びを見せて欲しい、ライブハウスの店長さんであった。

ライブハウス『松山サロンキティ』店長/武花 正太

プロフィール

武花 正太

愛媛県松山市のライブハウス

松山サロンキティ』店長

Twitter:@take87syouta

音楽、アニメ、旅、鉄道、廃墟、階段など、引っ掛かりを覚えた物を節操なく取り込んだボーダーレスなライフスタイルは国内外を問わず広く呆れられている。

自身のバンド「MILDS」では作詞作曲、歌、ギター、ピアノを雰囲気でこなし、さまざまな現場でベースを弾く。

DJとしても活動しており、主な得物はなんとアニソンである。

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