【インタビュー】Jessica/2ndシングル『叫び/外に行こう』リリース!数多の制約の中、それでもバンドが次に向かう先とは

愛媛県松山市を拠点として活動を続けるバンド・Jessica(ジェシカ)。昨年3月に初の1stアルバムを発売した彼らが、今回2022年1月23日に2ndシングル『叫び/外に行こう』をリリースした。
僅か10か月という短期間でのリリースとなった本作だが、ここに至るまでにバンドはメンバーの脱退や、何より再び猛威を振るい始めたコロナ禍という大きな足枷を纏う形ともなっている。
大きな制約の中、もちろん足を止めるという選択肢だってあった。けれどその中でも少しずつ、着実に前へ進んだ彼らが掴んだ、バンドの次なる大きな一歩とは。更なる飛躍から目が離せない彼らへ、今回音源リリース&リリースライブ直後のタイミングでインタビューを敢行した。
初アルバムリリース&ツアー敢行、その後バンドを待ち受けた様々な出来事とは

――まずはシングルリリース、そしてリリースイベントの開催おめでとうございます!
りょう(Gt.Vo.):ありがとうございます。
――前回のインタビューからでいくと11ヶ月……ほぼ丸1年になりますね。まずはそこからのバンドの動きについて話を聞ければ。アルバムリリースツアー、どうでしたか?率直に。
かつ(Ba.):まとまった期間のツアーは初めてで、大変でしたけど楽しかったのがやっぱり一番ですかね。学んだものは大きかったです。課題点を直視しなきゃいけない時が多かったというか。
――例えばそれはどんなところ?
かつ:一番僕が思ったのは、リズム隊の呼吸ですかね。県外の方の声で「メンバー間の信頼が薄そう」って言われた事が結構グサッと来たというか。それをじゃあ次のライブやツアーが終わったらどうやって克服しようか、って考えたり……。そういう言葉をもらった経験が印象に残ってますね。

――りょうくんはどうでしたか?
りょう:僕は結構、その土地土地で聞く声が違うっていうのが印象的で。それぞれの場所で自分たちがどうパフォーマンスすればどんな反応が返ってくるか、とか、そういうのを勉強できたなって感じです。ボーカルである自分が一番示さないと、客席からの反応は返って来ないですし。
――それはでも、すごく難しいことじゃない?全部の意見を聞くわけにもいかないよね。
りょう:そうですね(笑)もちろんそこに耳も傾けつつ、とはいえ自分のやりたいことも最優先に、というか。そういう折り合いをつけなきゃいけないってことを学んだかな。
――うん、その通りですね。おのちゃんはいかがですか?県外で印象的だったこととか。
おのちゃん(Dr.):さっきも話にあったんですが、ベースドラムの息の合わせ方はやっぱり課題が浮き彫りになったなと感じましたね。県外のバンドを見たり、自分たちも県外のバンドやライブハウスの人から見られる機会だったから余計に、というか。
――同業者からって、特にリズム隊は厳しい目で見られるよね。普通のリスナーなら、やっぱり目が行くのはボーカルやギターだけど。
おのちゃん:すごく見抜かれますね。嘘がつけないしごまかしも利かないし。
かつ:リズム隊のノリで、お客さんのノリやボーカルのパフォーマンスのテンションもかなり左右するなって。いい循環と悪い循環がモロに出るっていうのもひしひしと感じましたね。

――ふふふ、ツアーでいい経験をしてきたことが総じて伝わってきました。ありがとうございます。そこからの活動で行くと?
かつ:メンバーの就職もあって、春頃は少しだけ活動ペースは落ちましたね。
りょう:まあなんだかんだライブはしてましたけどね(笑)県内も県外も。
――ギターのえいとくんの脱退の話が出たのはいつ頃?
かつ:去年の8月頃です。コロナの影響もあって一旦活動休止という形はとったんですけど、メンバーで話し合った結果、という感じです。
――じゃあ今回のシングルも、当初から3人で作る予定だったのかな。
おのちゃん:そうですね。
かつ:ひとまずは3人で足を止めず動いていこう、て。
――なるほど。えいとくんの分も、ということですね。
2ndシングル『叫び/外に行こう』はバンドの二面性を表した両A面仕様に
――じゃあその流れから今回のシングルについてですが。制作の話が上がったのは?
かつ:去年の10月頃ですね。同時期に出演した「Wake UP!!」(注:地元バンドとゲストバンドを交え開催された対バン企画イベント。有観客&配信を駆使し全6回開催)がきっかけとしては大きいかもしれないです。
――松山サロンキティで開催してたイベントですね。
かつ:僕たちはその第一回で、今回四星球さんと一緒にやらせてもらったんですよ。
りょう:先輩の胸を借りた形ではあったんですが結構反響も大きかったよね、僕らのバンド単体で切り取っても。
かつ:SNSでも、今まで全く知らない人たちからたくさん反応を貰えたりもして。
りょう:一番嬉しかったね、それがね。
――なるほど。そしたらその勢いをそのまま維持するイメージで、今回リリースに踏み切ったってことか。
かつ:目的としてはそれが一番大きいですね。活発に動いているバンドとしてのアピールが大事だな、って。

――そこから可能な範囲での最短タイミングで、ということですね。そうなった時私個人はやっぱりどうしてこの曲を持ってきたか、という点がツッコミ所かなとは思っていて。
りょう:はい。
――Jessicaの『叫び』で言えば、そもそもは一番最初のdemoで配布してた曲だよね。1stシングルのカップリングにも収録してるし。それをこの2ndシングルで両A面に掲げたのはどういった心境から?
りょう:この曲でいくと元々表には出したものの、自分の中でもずっと納得のいってない曲ではあったんです。その中でいろんな曲を作ったり知識や経験が増えていって、だんだん物足りなさを感じてきたというか。
――ふんふん。
りょう:ただ、曲の原案自体はすごく気に入ってて思い入れがあるので。これを元として、もっとパンチのあるものにしたいなって再構築する中で、納得のいく形になったので。もう一回出さないか、っていう事で今回シングル曲に配置しました。

――アップデートして再度世の中にお披露目したって感じかな。
りょう:うーん、どちらかと言えばもう別物、ぐらいの感じではありますね。どちらもいいものではあるな、と思っているので。同じタイトルで原案も同じですけど、まったくの別曲ぐらいの気持ちで考えてもらえたら。
――なるほど、ありがとうございます。一方で『外に行こう』は『叫び』とは全然違うテイストの楽曲だよね。こちらは前のアルバムのテイストを踏襲したポップな雰囲気というか。
かつ:そうですね、完全に新曲で収録してます。
――この2曲を両A面として出した経緯はどんな形だったんです?
かつ:元々は1枚ずつシングル2枚で出そうとしてたんですけど、スケジュールとか諸々も関係で両A面として同時リリースしよう、って話になりましたね。
りょう:最初は2曲で全然雰囲気が違う曲だから大丈夫かな、っていう懸念もあったんですけど、今となっては全然これでいい味出してるな、って。むしろこの1枚になったことで、よりJessicaの二面性を伝えられるんじゃないかなと思ってます。
過酷な状況の中で団結力を見せたリリースイベント『Gradation Color』

かつ:今回のリリースイベントのタイトルも、実はそのコンセプトから取った形になるんですよ。二つの側面が入り混じるような、というか。
――なるほど!『Gradation Color』ということで。リリースライブをやろう、となったのはどういう経緯で?
かつ:音源制作に着手した辺りから、リリースのタイミングで何かやろうというのはありましたね。
りょう:それと今回のシングルは配信がメインで、盤は会場限定で100枚のみリリースという形を取ったんですよね。それもあって盤の販売場所を作る意味合いも込めて、という感じです。
――ただ今回、イベントとして県内バンドを一組も入れてなかったのも印象的というか。Jessica以外は全員県外のゲストだったよね?
かつ:今回の音源とイベントが、さっきも話に出てきた二面性を重視したものだったので。自分たち以外のバンドもそれぞれの側面の系譜の音を意識してブッキングした、というのはありますね。

――なるほど、そうなるとなかなか県内のバンドをピックアップする形にはなり辛いですね。似た系譜のバンドはこの地域には少ないだろうし。
りょう:なので必然的に県外勢に、というのはありますね。
――どうでした?ライブの方は。
かつ:時期的にコロナの影響がとにかくシビアで……正直かなり厳しかったです(笑)
りょう:来てくれる予定だったお客さんのキャンセルも相次ぐし、出演バンドのキャンセルもあって。
かつ:イベント自体のキャンセルも検討したんですが、あまりにも直前でさすがに厳しくて。感染対策も当然しっかり取って開催しましたが、それでも状況的に仕方ないとしか言いようがなかったですね。
――かなりコロナがぶり返してきた頃でしたもんねえ。
おのちゃん:ただその中でも、来てくれるお客さんも来てくれるバンドもいたので。いる人たちで出来る範囲で楽しめたのはよかったですね。
かつ:こんな時期だから余計に、ですね。
――少人数になってしまったからこそ、バンドも客席も問わず一致団結できる部分はありますよね。自分たちの為に来てくれる人がいる以上はやりきらないといけないですし。
かつ:そうですね。なのでこれもひとつの経験として受け止めたいと思います。
SANUKIROCK COLOSSEUM出演決定!豪華ゲストとのツーマン自主企画も

――そして今後の話で行くと、かなり大きなイベントも予定しているということで。
かつ:まずひとつは3月のSANUKIROCK COLOSSEUMへの出演ですね。今回四国各県のライブハウス推薦枠という形で、一応僕たちの出演が決まってます。
――Jessicaの今までのステージの中では一番大きなものですね。おめでとうございます!
おのちゃん:ありがとうございます。
――お話を貰った時はどんな気持ちでしたか?
かつ:僕単体だと正直、できるかっていう不安がありましたね。出演がゴールじゃないですし、出る以上は次へ繋げるパフォーマンスがちゃんとできるかっていうのがあって。ただでも一人でそれを考えてても仕方がないので、メンバーにも相談したんですけど。
りょう:僕は全然そこまで懸念してなくて。いつ出てもそんなに変わらないというか、出てみないとわからないですし。
おのちゃん:僕も出れるなら出よう、って感じでしたね。やってみないとわからないなって。
――そのチャンスが次またいつ転がり込んでくるかもわかんないですしね。
かつ:そういう二人の言葉に背中を押されたのはありますね。
――新たにひとつ経験として面白いことができそうですね。新しい人にもたくさん見てもらえるきっかけにもなりそうですし。
りょう:またここで新しいファンを掴んでこれたらいいな、という感じです。

――そしてもうひとつ、今年の春から秋にかけてのツーマン企画を行うということで。
かつ:5月から毎回奇数月に松山サロンキティで自主企画として計画してますね。
りょう:リリースもしてサヌキロックにも出て、このままバンドの勢いを失速させたくないな、っていうのがあって。
――アグレッシブに2022年は攻めていこう、と。
かつ:はい。一応ツーマンで、僕たち以外のバンドは県外ゲストを予定してます。まだブッキングが計画段階な部分もあるんですが、面白いイベントになるようなバンドを招致したいな、と思ってますね。コロナの影響がまだ不透明な部分もありますが……。
――情勢を見つつではありますが、Jessicaの攻めの姿勢は十分に伝わるかと思います。これを機に、さらに多くの人にバンドを見つけてもらえるといいですね。
りょう:そうですね。
――今後も応援しています。今日はお時間頂きありがとうございました!
(Photo by Jessica / Interview & Text by 曽我美なつめ)