【連載】オ客ハ読ムナ。/第36回

<毎週土曜日連載>
The denkibran/今日の1曲
楽器の練習をしよう。
こんにちは。南堀江knaveの倉坂です。
今週はすごく当たり前すぎて、ちょっと恥ずかしいタイトルではありますが(笑)
今日は基本に立ち返ってみようと思います。
極論ですが、ロックバンドというのは楽器が下手くそでも、かっこよければ、曲が良ければ、何も問題はない。
ないのですが、それはあくまで周りに言ってもらうことであったり、周りの評価。
ミュージシャンとしては常に「上手くなろう」と努力しなければいけないと思っています。
下手なのはぜんぜん構わないのですが
「オレは下手でもかっこいから良いんだ!」
と、開き直っている人はあまり好きではありません。
「精神的に向上心のない者はばかだ」
これは、夏目漱石の小説「こころ」の主人公「私」が「K」に向けて言ったセリフですが、まさに。
向上心を常に持ちたいものです。
さてさて。
今日の連載は、楽器弾きのある種の企業秘密な気もするのでやっぱりお客さんは読まないでほしい。
というわけで、今日も「オ客ハ読ムナ。」
▼ギターの練習をしています。
2022年も1ヶ月以上がたちました。
さすがに新年気分を引きずっている人はもういないかとは思います。
各言うも僕も、正月なんてはるか昔のことのようには思っています。
ただ、正月にたてた1年の目標が今年は珍しく1ヶ月以上たった今も続いているのんですよね。
その目標とは
「今年はギターの練習をする」
おお、なんてシンプルな目標でしょうか。
1日に何時間も練習!…というのはさすがにしてないのですが
珍しく家でも毎日ずっとギターを触っています。
スタジオとライブ以外では、家でまったくギターを触らないまま1ヶ月経過…とか平気でやってたもので…。すいません。
さすがに毎日さわってると、微々たるものですが自分でもわかるぐらいに上手くなってきました。
ほんの少しですが。
でも40歳を過ぎても楽器って上手くなるんだなぁ…と、我ながら感心しています。
というわけで最近、自分が楽器をよく触っているのでこんな記事を書いてるだけなんです。
我ながら、わかりやすい人間です。
▼楽器の上手さとは?
自分がギター弾きなので、どうしてもギターの話が中心になってしまうのですが、
ギター、ベース、ドラムというロックバンドの基本編成で使う楽器に関しては参考になりそうかな?という話を書いてみたいと思います。
まず何をもって「楽器が上手い」と言うのか?
これに関しては、実はけっこう人それぞれだったりします。
僕的な「楽器が上手い」の判断基準は
●しっかり楽器を鳴らせてる
●曲のノリをつかんで、リズムを表現できている
主にこの2点です。
だから例えばギターで速弾きソロがまったく弾けない
オープンコードしか弾けない子でも
コードストロークで上の2点を表現できていたら「上手いなぁ~」と思いますし
クリーントーンだときちんと鳴ってないような音でリズムがめちゃくちゃな速弾きをしてる人よりも、
多少ミストーンがあっても、しっかり楽器を鳴らしきってリズムにのった音数の少ないフレーズを弾いている人の方が上手く感じることが多いです。
要は、表現力という話かもしれません。
楽器できちんと「表現できているか?」みたいなことだと思います。
あと、上手いの判断基準を「リズムを表現できているか」と書きましたが、
これもクリックどおりの正確なリズムをキープすることよりも、
楽曲のノリを理解して、リズムの波(…と、この辺りはニュアンスの話なので言葉にするのは難しいですが)を作れているのか?という話なので
あえて「リズムを表現」と書きました。
もちろんテンポ感が正確で、早いパッセージを難なく弾けるにこしたことはないんですけどね。
出来ている方がもちろん良いけど
でも、それが一番大事なことではない
…という持論です。
この辺りの感覚は、本当に人それぞなので異論はもちろん認める。
▼楽器の鳴らし方の話
さてさて。
お恥ずかしながら自分はあまりリズム感の良い人間ではありません。
だから、あまりリズムの話をつきとめて書いてもボロが出てしまうので
「楽器を鳴らせている」
という点について、講釈をたれて今日は終わろうかと思います。
まず、ギタリスト、ベーシスト、ドラマーすべてに改めて認識して欲しい点がひとつ。
「自分が演奏している楽器は、基本的にアコースティック楽器である」
まずはここが一番大事だと思っています。
ドラマーはこの認識で楽器に向き合ってる人が多い印象ですが、
特にギタリスは、この意識が薄いイメージなんです。
エレキギター、エレキベース…と、なまじ頭に、エレキ(電気)という単語がついていて
なおかつ、エフェクターという楽器の音を電気的に加工できるデバイスを使用している
さらに「アコースティックギター」「アコースティックベース」という呼び名も存在しているせいで
竿モノのプレイヤーはこの認識がすっとんだまま、バンドをしている人が意外に多い(気がする)。
基本的にはアンプを使って電気で音を増幅しているだけです。
楽器からアンプまでが、ひとつのセットではもちろんありますが、
一番、最初は「弦をはじく」ことで音が鳴ります。
ピッキングすることで生まれた鉄の弦の最初の振動が
木(他の材の場合もありますが)のボディやネック、ブリッジやペグで振動します。
それを電気で増幅して加工してアンプで鳴らすのが、基本的なエレキギター、エレキベースの仕組みです。
スイッチを押したら音が鳴る楽器ではありません。
アナログに、人間の力で楽器を振動させて音が鳴る。
だから広義の意味でアコースティック楽器だと僕は思っています。
あと、よく「ギターのピックアップを変えたから音が良くなった」みたいな、改造系の話もでます。
もちろん実際に音は変わるし間違ってはないのですが、「ピックアップ」というのは、つまり「弦の振動を拾うマイク」のことです。
例えばボーカリストでもマイクを変えたら、もちろん音は変わります。
でもマイクの前に、まずはしっかり声を出して歌が上手くなるのが先じゃない?
…なんて、ボーカルに例えたらすぐにわかる話なのですが
これ、ギターやベースの話になると、なんだかこの基本をすっとばしてしまう人が多い。
まぁ、ピックアップを乗せ換えたり改造だけで、音が良くなったり、上手く聴こえるのなら練習しなくて良いし楽ですからね。
機材をいじってるとやっぱり楽しいし。
でも、しつこいようですが、まずは自分の手で楽器をどういう風に振動させるのか?
という、この1点からすべてはじまると思うんです。
もっと大げさに書けば
何を表現するためにどう楽器を鳴らすのか?という意識。
これがないと何をしても意味なくない?と。
ああ、説教くさいおじさんになってるな…という自覚はありつつもさらに続けます。
去年のいまごろに何気に書いたこのツイート
実際に音が鳴る原理を考えたらわかるかとは思うのですが
これ意外に見落とされがちな点だと思うのです。
ツイートではエレキギターの話なので、「ノイズ」という書き方をしましたが、
スティックでもピックでも指でもなんでも良いのですが
まず、弦また皮など、楽器の振動して音が出るポイントに当たった時に「倍音」が出て
離れる時に振動して「基音」が出るという考え方。
最初のあて方を意識してる人は多いかもしれませんが、
離し方を意識してる人は少ないような印象。
ギターの場合でいうと、弦からピックが離れた時に弦がきちんと振動して音が鳴るんです。
逆に言えば、離し方を失敗すると振動しかけたものを止めてしまうので、音がきちんと鳴りません。
ミュートしてる状態になってしまいます。
ギターやベースで言えば、ピックや指を弦からどう離すか
ドラムで言えば、スティックを皮の振動を殺さないように打面からどう離すのか
騙されたと思って、このことを意識してみてください。
どうやって効率よく、自分の求めてる状態で振動させて音を鳴らすのか?
これを意識するだけで、本当に出音が嘘のように変わります。
ライブで魅せるような派手さの部分ではありませんが、演奏するうえでの本当に基本的な部分。
若い頃から、これをしっかり意識して練習できていると、
僕みたいにおじさんになってから後悔して、必死に練習をやり直さなくても良いのでおすすめです。
説教くさい内容ではありますが
そんな感じで、みなさま素敵な楽器ライフを!
余談① ピックの話
ギターに偏る話なので余談として。
ギターのピックアップを交換…みたいな話を本編でも少し書きましたが
そもそもピックアップを交換する前に、ピックを別のものにかえるだけで驚くほど音って変わります。
お金もかからないし、色々と試してみるのをおすすめ。
厚さも色々と種類がありますが、材質もいろいろと種類があります。
例えばなのですが、消しゴムでギターの弦をはじいたら、あんまり響かずに丸い音が鳴りそうな気がしませんか?
反対に鉄の板でギターの弦をはじいたら、金属っぽいトレブリーな響きになるような気がしませんか?
極端な話ですが、そういうことです。
ピックの材質で音はけっこう変わります。
ピックの当て方で音質を調整できるのが一番なのですが、
その前の段階としてピック選びに戻ってみても楽しいかもです。
ちなみに最近の僕は弾きやすさと音質でこのピックを使ってします。
1枚400円。
ギャー。
今までは、薄目のピックでゆるくカッティングするのが好きだったのですが
リードギターを弾く機会が増えてしまったので、人生初の厚めのピックを使ってます。
JAZZ3タイプのピックなんて一生、使うことないと思ってたので、
「ぬおー!!こんなにソロが弾きやすくなるのか!!」とカルチャーショックを受けています。
余談② アンプの話
年明けからギターの練習をはじめてるわけですが
「練習するぞ!」と意気込んでみても
毎年、三日坊主ですぐに終了してしまう。
それなのに今年は珍しく続いてる原因として、ひとつ思い当たる節がありまして。
それは「アンプを使って弾いているから」だったりします。
若い子にも「アンプを使って練習しよう!」みたいにアドバイスはよくするものの、
実際はなかなか日本の在宅環境だと難しい部分もありますよね。
アンプシミュレーターも楽しいのですが、やっぱり本物のアンプを鳴らしてるのとはどうしてもニュアンスがちょっと変わる。
僕も録音ではアンプシミュレーターも好きで使いまくりますが。
これも最近、決定的なことに気づいてしまいまして。
アコギならまだしも、エレキギターを弦の生音だけで家で弾いていても、まったく楽しくないんですよね。
そもそもアンプで鳴らさないと、細かいニュアンスがぜんぜん聞き取れない。
チャカチャカした弦鳴りだけでフレーズは聞き取れるけど、細かい音のニュアンスは聞こえない。
単純に弾いてても楽しくない。
そりゃ、楽しくないことは続かない。
なるほど。
今までは楽しくないから、続かなかったのか。
と、妙に納得しました。
加えて、いま家で使っているのが中古で1万円ぐらいの安物ですが、一応、VOXの真空管アンプでして。
安物のくせに生意気に真空管の音がちゃんとするんですよね。(そりゃ真空管を使ってるから当たり前か…)
エレキギターの文化というのは、真空管原理主義…みたいなとこがあるのですが(笑)
そもそもロックギターの歴史が真空管アンプとセットではじまっているので
どうしても、その「真空管の音」が基準になってしまうのは仕方ない。
別に家のアンプでギャンギャンに歪ませてるわけではなくて、ほぼクリーントーンで弾いていのですが
クリーントーンでも真空管アンプだと強く弾いた時に少しだけ真空管っぽい歪みが乗って、コンプレッションがかかったような音になる。
アタックの成分がちょっと変わる…というニュアンスでしょうか。
この感じはやっぱり真空管アンプ特有。
例えば、ジャズコーラスの音も別に好きだけど、ジャズコーラスのクリーンとはまたニュアンスが変わってくるんですよね。
書きながら気づいたのですが、右手のピッキングで真空管をいかにドライブさせて音を作るのか!?っていうのが、エレキギター、もといロックギターのかっこよさであり、上手さなのかもしれませんね。
来年の今頃にはしっかり上手くなっているように、引き続き練習にはげみたいと思います。
今週はなんだか楽器練習日記みたいな内容になってしまいました。
すまん。
みなさま、体調にはくれぐれも気をつけて!!
ではまた来週!
The denkibran(Vo./Gt.)&南堀江kanve(ブッカー)/倉坂直樹