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【連載】白航・了の名盤紹介「見た目が良ければ中身もいい」/第6回

<隔週木曜日連載>

白航/今日の1曲

https://youtu.be/adpajQbqsic




SLY & The Family Stone – There’s A Riot Goin’ On (1971)

今回は、SLY & The Family StoneのThere’s A Riot Goin’ On(邦題:暴動)をご紹介。

スライの歴代の作品の中でも、こんな濃密なアルバムを新年一発目から取り上げるのは・・・僕の趣味です笑

SLY & The Family Stoneは1967年にデビュー。バンドの首謀者であるスライ・ストーンと友人のシンシアが結成していたスライ&ザ・ストーナーズと、スライの弟フレディが同時期に結成したフレディ&ザ・ストーン・ソウルズが合体する形で誕生したこのバンドは、デビュー直後の売り上げは芳しくなかったものの、翌年の「Dance to the Music」で全米に名を轟かせる。

さらにはその次の年にリリースされたアルバム「スタンド!」は300万枚を売り上げ、その夏にはウッドストック・フェスティバルに出演するなど、乗りに乗っていた時期もあったが、その頃にはスライ・ストーンは麻薬中毒に侵されていた。

コンサートをすっぽかすなどの奇行を繰り返し、バンドは停滞し始める。「暴動」はその頃に製作された。

スライ・ストーンは一人でスタジオ(もしくは屋根裏)にこもり、演奏の大半を自身で行いながら、オーバーダブを重ねていった。前作や、その後の「Fresh」とは大きく異なり、今作が陰鬱で暗い印象(かつファンキー)を持つのはこのためである。

サウンド面での大きな特徴は、やはり全編にわたって使用されているリズムボックスであろう。これが使用されたヒットアルバムの中では、今作はとても早い部類なのでは?ある種淡々としたビートと、スタジオのベッドで横になりながら録音されたというスライの歌声が合わさって、曲が妙に呪術的に聞こえる笑

ベースにはラリー・グラハムも参加している。ミキサー卓に直結で録音されたと思われる、プレべの生々しい輪郭が非常によく出ていて、ファンキーさを決定づけている。完全な持論だが、このベースがなければ「暴動」は傑作たりえなかったのではないかと思うことがある。

A面の最後に、アルバム表題曲である「There’s A Riot Goin’ On(暴動)」が収録されている表記があるが、実際には何の音もしない。0秒である。
当時のアメリカの黒人にとって問題となっていたスラム化、蔓延するドラッグ、頻発する家庭崩壊、加熱する暴動・・・
のちにスライ自身が「自分はいかなる暴動も起こってほしくない」と語っていた事も含め、実際には存在しないこのトラックがこのアルバムのハイライトだろう。正直すごいセンスだ。

ジャケットには大きな星条旗をあしらっている・・・と思いきや、描かれているのは本来の星ではなく、太陽である。
スライ曰く、これは「すべての人種の人々」を意味しており、「黒は色の欠如、白はすべての色の混合、そして赤はあらゆる人に等しく流れる血の色を表している」とのこと。
正味な話、星条旗で「すべての人々」を表現するのは大胆だなと思わされる。アメリカ国内で起きている様々な問題に目を向けていた証拠なのだろう。
太陽に関しては、「星はたくさんあって、探求を意味するものだ。でも太陽は常にそこにいてこっちを見ててくれるんだ。」との発言。

その真意に関しては正直測りかねるところがあるが、彼が黒人問題だけでなく、麻薬中毒や精神上の問題で弱っていたスライ自身をも冷静に捉え、見つめる存在を欲していた?という筆者によるただの憶測を記して、この記事は終わりにしようと思う。

蛇足ながら、筆者はスライの作品では正直、「Fresh」の方が好みではあった・・・が、改めて「暴動」を通して聞くと、スリルに富んだ傑作であることを気付かされた。

いいアルバムってのは残るのである。

https://youtu.be/HDE8xg7n8ZE

白航/了(Ba.)




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