【連載】伏見◎御伽噺/第16回

<毎週木曜日連載>
伏見◎Project/今日の1曲
宇多田ヒカルさん愛してます
お久しぶりです。
今回は宇多田ヒカルのTravelingが好きになってしまったのでそれをボーカル目線で分析したいと思います。
Travelingといえば2001年に宇多田ヒカルが11月28日に9枚目のシングルとしてリリースした曲です。
① 語幹
ボーカル的視点から見ると語幹はとても意識しているのだろうなと感じます。
それは本人もおっしゃっていた事で音楽を言語的視点から捉えている物だと言っていてとても共感しました。
それを18歳で実感しているのだというと恐ろしい存在だと思います。
「どちらまで行かれます?」
ちょっとそこまで
「不景気で困ります」
(閉めます)
「ドアに注意」風にまたぎ月へ登り
引用元:https://www.uta-net.com/song/14905/
僕の席は君の隣
不意に我に返りクラリ
春の夜の夢のごとし
歌詞の抜粋ですが、ここのセクションがとても好きです。韻の踏み方は勿論、フローやライムをとても意識されていて、歌詞だけ見れば、ラッパーが歌っているのだろうか?とも読み取ることができます。宇多田ヒカルの歌詞を見ても日本語の意味を重視しているよりは語呂の良さや語幹をより注視していることが分かりました。
それこそ宇多田ヒカルのルーツであるDr.DrakeやCardi B等、HIP HOPの要素は他の楽曲にも多く取り上げられていると思います。
② 呼吸音、グルーヴ
かなり呼吸音が聞こえます。
この呼吸音がtravelingのグルーヴの半分以上を占めているといっても過言ではありません。
例えば間奏のッタタラ ッタタラ ッタタラの部分は語尾の部分の息、ッタタラのッの前に息づかいがなされています。
これらは16分のリズムがキチンと刻まれていて、語尾の息使いにも16分のリズムを意識していることが分かり、丁寧にエッチに歌われています。
Aメロなどは分かりやすいと思いますが、一音目が発生する前に、しっかりとブレスを入れています。
勢いよくブレスをしているのが分かり、一音目の言葉もとても分かりやすく、聞き心地が良いです。
これは宇多田ヒカルさんのtravelingのコンセプトである「元気が出る曲」というのにもかなり関係性があると思います。
ブレスの方法によって曲の雰囲気はかなり変わります。
そのなかでも宇多田ヒカルはブレスコントロールがとても上手だと感じます。
また、宇多田ヒカル独特の母音の落とし方も特徴的です。
歌詞の一行目。
仕事にも精が出る
引用元:https://www.uta-net.com/song/14905/
であれば
しぃーごとぉーにも せぇいがでぇるぅ(強調されている部分のみ抽出)
という風に私は分解し、母音を出すタイミングを遅くしたり早くしたり丁度にしたりすることで、グルーヴを構築しています。
ちなみに「しぃ」「とぉ」「せぇ」「でぇ」はメトロノームが刻むリズムより、遅くなっていて「るぅ」は割と丁度、、に聴こえますが、語尾の息でグルーヴを作っているように聴こえます。
これらを感覚的に操れる宇多田ヒカルは凄さを痛感します。
ここからは私の個人的に好きなところです。
③ 無機的なリズムに有機的なリズムが混在している点。
これまじでかっこいいなって思います。
ビートはDISCOの四打ちビートで沢山のリフ(ギターや沢山のコーラス)が繰り返しリピートされています。
それは私には無機的な物(機械的)なもので捉えていて、無機質なメロディーを歌っていると思います。
ですが、歌のリズム自体は自分の感覚によって組み立てられていて、それは有機的な、生き物のようなうねりを楽曲に与えます。
これらをガチッとハめれる所に良さを感じています。
④ Bメロが気持ちよすぎる
これはボーカル目線で曲を聴くからであると思いますが、
風に またぎ 月へ 登り
引用元:https://www.uta-net.com/song/14905/
僕の 席は 君の 隣
Bメロのこのセクションはほとんどメロディーが同じですが、ワンフレーズごとに声のニュアンスが変わっており、とてつもなく繊細でエロいのです。
リズム、ブレス、アクセント。
どれを取っても一流のテクニックだと思います。
このBメロで宇多田ヒカルの虜になってしまいました。
いかがでしたでしょうか?
これを踏まえてtravelingを聴いていただければなと思います
○Coverでは大橋トリオさんや槇原敬之さんなどがcoverしているので、違いを聴いてみるのも音楽の楽しい部分かなぁと思います。
以上、たかやでした!
伏見◎Project/Takaya(Vo./Sax.)